ビムス・エディションズ・バンド・コレクション(キスカ・マーチ収録)
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富樫哲佳の「音楽コラム【ぐるしん】吹奏楽版」
すぐに店頭へ急げ!
あまりにユニークな「マーチ・ベスト・コレクション」全10枚!

※下記文中、「アマゾンでは購入できない」とありますが、
現在は、アマゾンでも扱っています。

 キングレコードから、「The Best Collection of March」と題されたCDが、全10枚のシリーズで出ている。

 これが、スーザやら≪軍艦行進曲≫やら、有名レパートリーのみを集めた、よくありがちな企画かと思いきや、まったく違っており(もちろん、それらも入っているが)、旧録音に新録音を加えて再構成された、たいへん意義ある内容なので、ぜひ、ご紹介したい。

 ただし、この商品は、なぜか、「店頭購入」でしか入手できない。つまり、アマゾンでは売っていないようで、そればかりか、発売元のウェブサイトでも、一切紹介されていない(私の捜し方が下手だっただけかも知れないが、少なくとも、簡単には見つからなかった)。ましてや、いまご覧のBPのショップでも扱っていない。だから、店へ行くしかない。しかも、先日、いくつかの店頭で確認したところ、すでに大半が売り切れていた。

 かくして、容易に入手できない商品である可能性があるので、まず、その点をご承知おきいただきたい。

 1枚あたり、20曲前後が収録されているが、そのすべての内容を紹介することは無理なので、まず、各巻のタイトルと品番のみを挙げておく。曲目詳細に関しては、この企画に選曲協力で参加された、作曲家・中橋愛生氏のウェブサイトを通じて確認できるので、そちらでご確認いただきたい。 
→ http://www003.upp.so-net.ne.jp/napp/napp_cd.html

 演奏は、陸上・航空・海上自衛隊の、中央や東京などの音楽隊である。音源は、ほとんどが旧録音だが、各巻に必ず数曲ずつ、新録音が加えられている。

●The Best Collection of March(各税込2000円)
日本のマーチ(戦前編)KICW3011
日本のマーチ(戦後編)KICW3012
スポーツ・マーチ KICW3013
コンサート・マーチ KICW3014
スクリーン・マーチ KICW3015
クラシック・マーチ KICW3016
アメリカ・マーチ KICW3017
ドイツ・マーチ KICW3018
イギリス・マーチ KICW3019
世界のマーチ KICW3020

 このうち、私が入手できた数点の中から、注目すべき収録曲について、いくつか簡単に紹介しておく。

 「日本のマーチ(戦後編)」には、≪栄誉礼「冠譜」及び「祖国」≫(黛敏郎)、≪巡閲の譜≫(須摩洋朔)が収録されている。これは、国賓や政府高官を迎えての式典で演奏される儀礼曲で、ニュースを見ていると、よく、バックで流れている。今回のために改めて陸上自衛隊中央音楽隊が新録音した音源である。いわば日本における吹奏楽の基本曲であり、吹奏楽に関わっている以上、ぜひ、知っておきたい曲である。

 ほかにも、たいへん珍しい、あるいは、ひさびさにCDで聴くマーチがいくつかある。例えば、≪出航≫(岩下章二)は、元・海上自衛隊佐世保音楽隊長による作曲で、号笛(出航合図の笛)や、信号ラッパが使用された、実に生き生きしたマーチである。海や港町が近くにあるバンドだったら、この曲のカッコよさは、すぐに体感できるはずだ。

 ≪キスカ・マーチ≫(團伊玖磨)は、同名映画の音楽。近年、陸上自衛隊中央音楽隊の福田滋氏によって楽譜が校訂され、たいへん上品なマーチとして復活した名曲だ。

 ≪栄光をめざして≫(芥川也寸志)は、ひさびさのCD登場ではないか。ほぼワンフレーズを繰り返し、次第に盛り上げて行く手腕は見事としか言いようがなく、聴いているだけで背筋が震えてくる。さすが、戦後を代表する作曲家によるものといえよう。

 この種の企画に必ず収録される名曲≪秋空に≫(上岡洋一)は、もちろん収録されているが、同じ作曲家による≪北海岸線≫は、実用マーチのスタイルを逸脱した、驚くほどモダンな曲である。タイトルの意味について、何の解説もないが、どこか、ドイツ・ロマン派の香り漂い、かつ日本海〜北洋沿岸の”緊張海域”を思わせる曲で、コンクールで使用されてもおかしくない内容だ。

 「スポーツ・マーチ」には、ひさしぶりに、NHKと全民放キー局(日本TV、TBS、フジTV、旧NET/TV朝日)のスポーツ・ニュース・テーマ曲がすべて揃って収録された。東京・札幌オリンピックにまつわるファンファーレや入場行進曲も収録されている。

 ほかには、甲子園でおなじみの≪コンバット・マーチ≫や≪ダッシュKEIO≫、そして、プロコフィエフの≪体育祭行進曲≫、中国で有名だという≪運動員(スポーツマン)行進曲≫など、なかなかユニークな選曲だが、ラストに≪World Football Anthem≫(ランバート/中橋愛生編曲)が入っている。FIFA公認の、サッカー国際試合で選手入場の際に流れる「賛歌」である(日韓ワールドカップのテーマ曲ではない)。おそらく、この曲をやりたいと思っていた中学・高校バンドは多いのではないか。

 「コンサート・マーチ」には、≪大仏と鹿≫でおなじみ酒井格の≪行進曲「海辺の道」≫が新録音で収録されている。都立白鴎高校OBバンドのために書かれた曲だという。ここでも、ポップ感覚が同居したカッコイイ”酒井サウンド”が聴かれる。

 ほかにも、和風マーチともいうべき≪行進曲「信濃路」≫(小山清茂)、現代感覚あふれる≪コンセルト・マーチ「シンタックス・エラー」≫など、多くの人が初めて聴くと思われる曲が、新録音で収録されている。

 「スクリーン・マーチ」には、映画で流れたマーチが22曲収録されているが、そのほとんどが、オリジナル(サントラ)の響きを十二分に再現した編曲・演奏で、この巻は、一般の映画音楽ファンにも十分受け入れられるはずだ。

 その多くは、岩井直溥による編曲で、≪「空軍大戦略」のマーチ≫(グッドウィン)・・・正確な曲名は≪エース・ハイ・マーチ≫、≪「コンバット」のマーチ≫(ローゼンマン)など、胸躍る演奏である。

 新録音、≪「大脱走」のマーチ≫(バーンスタイン/松木敏晃編曲)は、驚くほどサントラの響きを忠実に、しかも、重厚に再現しており、この映画のファンにとっては、まさに「痒いところに手が届く」編曲になっている。

 これも新録音、≪フラッグ・パレード〜「スター・ウォーズ・江ピソード1」より≫(ウィリアムズ/福田滋編曲)は、映画でカットされた部分も加えた完全版だそうで、実に見事な編曲・演奏である。内外で数多く出ている同曲の決定版アレンジではなかろうか。

 さてさて、こうやって、いくつかを紹介したが、冒頭で書いたように、このような企画が、ひっそりと店頭に置かれているだけで、果たしていいのだろうか。もちろん、宣伝予算には限りがあるだろうし、そう驚くほど売れる企画でないことも分る。しかし、これほどマーチや吹奏楽の何たるかを知り尽くして選曲・新録音されたマーチCDの企画を、私は、久々に知った。そこには、単に「聴いて楽しむ」ことのほかに、明らかに「啓蒙」的な考えだってあるはずだ。名マーチを、多くの人に知って欲しい、そして、知られざる曲を伝えたい・・・そういう意識だってあるはずだ。

 それにしては、発売元のウェブサイトにも載っていないし、アマゾンでもBPショップでも買えない・・・もしや、この企画自体、全日本吹奏楽連盟の推薦をもらっているようで、ということは、連盟が、関係団体やバンドに告知して購入を薦め、それで終りだったのだろうか。 

 それでは、あまりに寂しい。「だから、吹奏楽の世界って、一部の連中のためのものなんだよなあ」という声が、いまにも、聴こえてきそうだ。

 また、今回のCD全10枚には、曲の演奏時間表示が一切ない(プレーヤーに入れれば分るのだが)。楽譜の出版の有無、入手方法も一切出ていない。この全10枚の中には、アマチュア・バンドが十分レパートリーにしうる曲が、山ほど詰まっているというのに。

 あまりにもったいない、しかし、記念碑的な企画である。。興味のある方は、すぐに店頭へ急がれたい。店頭にない場合は、上記「アルバム名」と「品番」、発売元(キングレコード)を店に告げて、取り寄せてもらうべきである。(2005-04/05))

Text:富樫哲佳


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