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富樫哲佳の「音楽コラム【ぐるしん】吹奏楽版」
「200年間」を「4分弱」で描くマーチ!

 6月14日のシエナ・ウインド・オーケストラ 第19回定期演奏会(横浜みなとみらいホール)では、本年度のコンクール課題曲が、2曲演奏される。

 しかも、指揮はいうまでもなく、マエストロ佐渡裕である。世界的な指揮者によって演奏される課題曲が、どんな響きを生み出すか、いまからワクワクしているのは、私だけではないはずだ。

 ところで、当日演奏される2曲のうち、『パクス・ロマーナ』(松尾善雄・作曲)は、いわゆる、一般的にイメージされる「マーチ」とは、少々趣きが違っている(もう1曲は、南俊明作曲『マーチ春風』)

 そもそもタイトルの「パクス・ロマーナ」とは、何か? これ、直訳すると「ローマによる平和」のことなのです。

 ローマに、共和制が成立したのは、紀元前6世紀頃と言われている。あまりに古い話でイメージがわきにくいが、日本でいうと、そろそろ弥生時代が近い頃。あの「女王・卑弥呼」で知られる邪馬台国なんて、まだまだ先の話。

 その後、帝政期になって、いわゆる「ローマ帝国」が始まったのが、紀元前27年。あの、キリストが誕生する直前だ。この時、初代皇帝の地位に就いたのが、カエサル(シーザー)の養子ガイウス・オクタウィヌス。

 この人、養父カエサルを暗殺した連中への復讐を果たし、初代皇帝「アウグストゥス」(尊厳者の意味)と称されるようになる。ご本人は、才能に乏しく身体も弱かったらしいが、協力者の使い方がうまかった。帝国の周辺に軍隊を配備し、簡単に攻め込まれないようにした。また、これ以上の領土拡大政策をとることもやめた。

 そのため、このアウグストゥスの時代から約200年間、ローマは史上空前の繁栄と、明るい平和の時代がつづいた。日本でいう「鎖国時代」みたいなもの。この時期を「パクス・ロマーナ」(ローマによる平和)と称すのである。特に、そのあとにつづいた5人の皇帝が、なかなかうまい政治を行ったので、「五賢帝時代」なんて呼ばれ方もする。

 で、今回演奏される『パクス・ロマーナ』なるマーチは、この時代の、ローマ軍の行進の様子をイメージした曲なのだ。

 だから、決して戦争に出かけて行くわけではないし、凱旋のマーチでもない。あくまで、「平和」を享受する様子を、華やかに描いた曲である。

 まあ、何万人もの観衆が詰め掛けた巨大なコロシアム(闘技場)を、ローマ軍兵士が堂々とデモンストレーションの行進をしている場面だと思えば当たらずとも遠からず。もちろん、ロイヤルボックスには、皇帝とその家族たちがデーンと座っている。

 ・・・なんて説明すると、もしかしたら、古い方だったら『ベン・ハー』(1959)を、若い方々だったら『グラディエーター』(2000)なる映画を想像されるかもしれない。

 実は、あの名作映画『ベン・ハー』が、まさに、この「パクス・ロマーナ」の始まりの頃が舞台なのだ。あの映画の中で、壮大なローマ軍の行進の場面があって、今回の曲も、たいへん似たイメージである。それも当然のことで、作曲者は、どうやら、『ベン・ハー』など、ローマ帝国を描いた映画のファンのようで、今回は「吹奏楽による映画的な古代ローマ」を目指したようなのである。

 ちなみに、もう1本の映画『グラディエーター』は、「パクス・ロマーナ」時代の終焉期が舞台となっている。

 あの映画の中で、主演ラッセル・クロウ演ずるマキシマスのライバルで、コモデゥスなる男が登場するが、これが、前期「五賢帝」のあとに皇帝になる男だ。このあたりから、帝国内には分裂・混乱が生じ、外敵も侵入してきて、長かった「パクス・ロマーナ」時代は終わるのである。

 そんな200年に及ぶ時代を、4分弱のマーチで描いてしまうなんて、スゴワザのような、もったいないような不思議な気分だが、それを可能にしてしまうのが、音楽の魅力でもある。皇帝アウグストゥス・・・いや、マエストロ佐渡のお手並みに、期待しようではないか!

Text:富樫哲佳

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