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樋口幸弘の「ウィンド楽書(ラクガキ)ノ−トファイル」
ファイル・ナンバ−04
ベルト・アッペルモント:ノアの箱舟
NOAH'S ARK (Bert Appermont)
File No.04-07 :< 出版楽譜の注意点 >

アッペルモントの「ノアの箱舟」は、1998年に作曲されたオリジナルのウィンド・バンド版(Version I )につづいて、演奏者のリクエストに応えて1999年にファンファ−レ・オルケスト版(Version II )も作られた。両者は基本編成が違う(File No.04-01 参照)ので、両版のオ−ケストレ−ションも自ずから違う。使われている楽器名がたとえ同じであっても基本的にパ−ト譜は別物と考えた方がいい。また、それ以上に、各国で使われている楽器編成が違っているという世界的なバンド事情に対応するために出版された楽譜には様々な種類のパ−ト譜がセットされている。両版の違いも含めて、興味深いいくつかのポイントを列挙してみた。


・トランペット−コルネット


<Version I >ウィンド・バンド版
いずれの楽器を使うかについて、作曲者の明確な指示はない。国によって多少事情は異なるが、ヨ−ロッパでは、トランペット奏者と同じ数のコルネット奏者を揃えているバンドが主流なので、できれば、キャラクタ−の異なる両方の楽器を揃えてダブル・キャストで演奏したい。使用楽器について指揮者は明確な指示を出す必要がある。
<Version II >ファンファ−レ・オルケスト版
ウィンド・バンド版と事情はほぼ同じ。

・ホルン


<Version I >ウィンド・バンド版
"F French Horn" と "E♭ Horn"の2種類のパ−ト譜がセットされているが、これは国によって使われている楽器が違うことに対応するためで、たいていのバンドにフレンチ・ホルンが揃っている日本の場合、それ以外にE♭ホルンを準備する必要はない。
<Version II >ファンファ−レ・オルケスト版
"F Horn"と "E♭ Horn"の2種類のパ−ト譜が用意されている。事情はウィンド・バンド版と同じ。

・トロンボ−ン


<Version I >ウィンド・バンド版
低音部記号(ヘ音記号)の "C Trombone I 、II " 、および "C Bass Trombone" の他に、高音部記号(ト音記号)の "B♭ Trombone I 、II 、III " のパ−ト譜がセットされているが、これもホルンと同じ事情なので、調の異なる楽器を2種類用意する必要はない。
<Version II >ファンファ−レ・オルケスト版
低音部記号の "C Trombone I 、II 、III " の3パ−トだけがセットされている。

・ユ−フォニアム


<Version I >ウィンド・バンド版
低音部記号の "C Baritones" 、低音部記号の "B♭ Baritone/Euphonium"、高音部記号の "B♭ Baritone/Euphonium"の3種類のパ−ト譜がセットされているが、これもホルンやトロンボ−ンと同じ事情による。たいていの日本のバンドの場合、低音部記号の "C Baritones" のパ−ト譜だけでこと足りる。楽器名の表記がいかにも紛らわしいが、この楽曲の低音部記号の "C Baritones"のパ−ト譜の場合は "伝統的" にアメリカの出版社の多くが "Euphonium"パ−トを "Baritone" と表記してきた慣例に従っている。
<Version II >ファンファ−レ・オルケスト版
ウィンド・バンド版と異なり、楽譜に表記されている "Baritone" は "Euphonium"のことではなく、ヨ−ロッパ・スタンダ−ドでは別々の楽器であるバリトンとユ−フォニアムはそれぞれ独立した別のパ−トとなっている。この版のために新たに作られた高音部記号の "Baritone I −II " 、低音部記号の "Euphonium I −II " 、高音部記号の "Euphonium I −II " の3種類のパ−ト譜がセットされており、バリトンはそのまま、ユ−フォニアムは国によって高音部・低音部のいずれかのパ−ト譜を使うことになる。 "Tenor Tuba" の使用も考慮されている。

・テュ−バ(バス)


<Version I >ウィンド・バンド版
低音部記号の "C Basses"、低音部記号の "E♭ Basses"、高音部記号の "E♭Basses" 、低音部記号の "B♭ Basses"、高音部記号の "B♭ Basses"の5種類のパ−ト譜がセットされているが、これも事情は同じ。たいていの日本のバンドでは、低音部記号の "C Basses"だけでこと足りるが、2種類のバスが使われている "ブラス・バンド" の楽器編成の利点が理解されるようになってきた昨今、奏者が3人以上いる場合、主にオ−ケストラで使われるロ−タリ−・システムのテュ−バだけでなく、B♭やE♭のピストン・システムのバスを加えて(たとえ同じ音を吹いている場合でも)低音部のサウンドをさらに豊かにする試みが各地で行なわれるようになっているので、その場合これらはすぐにパ−ト譜として活用できる。
<Version II >ファンファ−レ・オルケスト版
ウィンド・バンド版と異なり、E♭とB♭が独立したパ−トとなっている。ファンファ−レ・オルケスト版のために新しく書かれた低音部記号の "E♭ Basses"、高音部記号の "E♭ Basses"、低音部記号の "B♭ Basses"、高音部記号の "B♭ Basses"の4種類のパ−ト譜(このうち2種類を使用)のほかに、ウィンド・バンド版の "CBasses" のパ−ト譜も編成の違う国での演奏に備えてセットされている。

・ハ−プ


<Version I >ウィンド・バンド版
出版されているセットには、パ−ト譜がセットされているが、スコアには、パ−ト名 すら印刷されていない。
<Version II >ファンファ−レ・オルケスト版
この版からは完全に省かれている。これは、ベルギ−やオランダで村のバンドとして発展し、ウィンド・バンド以上にポピュラ−になっているファンファ−レ・オルケス トの多くがハ−プを備えていないことによる。

・シンセサイザ− or ウィンド・マシ−ン


<Version I >ウィンド・バンド版
第3曲「嵐」の最初の部分(72小節)から 172小節まで効果音として使われるが、オプション扱い。このいずれも使用できない場合は、クラリネットと金管楽器に、 "全員で手でカップを作って(ベルにかざして)息や口笛を楽器に吹き込むようにして、風の音を真似るように" との指示がある。しかしながら、手空きの箇所をのぞき、実際に音符が出てくると指示どおりにすることは不可能なので、指揮者はどの部分までこの "暴風の効果音" を使うかはっきりと指示を出す必要がある。
<Version II >ファンファ−レ・オルケスト版
この版からは完全に省かれている。その代わり、 "すべての金管楽器奏者は、手でカップを作って(ベルにかざし)息や口笛を楽器に吹き込むようにして、風の音を真似るように" との指示がある。指揮者の留意点はウィンド・バンド版と同じ。

 
 
(c)2001,Yukihiro Higuchi/樋口幸弘
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