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樋口幸弘の「ウィンド楽書(ラクガキ)ノ−トファイル」
ファイル・ナンバ−03
ロバ−ト・W・スミス:イ−グルの翼にのって 〜アワー・シチズン・エアメン〜
ON EAGLE'S WINGS(Our Citizen Airmen) (Robert W.Smith)
File No.03-05 :< 2つのプロジェクト >

ロバ−ト・W・スミスの「イ−グルの翼にのって」は、威厳に満ちたファンファ−レに始まる祝賀ム−ド溢れる導入部につづいて、リズミカルなテンポにのった主部が展開し、ゆったりとした導入部の音楽が再現される短い中間部のあと、主部を再現し、コ−ダに至るという簡潔なスタイルで書かれた演奏時間が3分50秒から4分30秒くらいのサイズの作品。委嘱されたときの意図どおり、セレモニ−やコンサ−トのオ−プニングにピッタリの華やかな作品だ。スコアには指揮者への留意点をまとめた作曲者のノ−トがあるが、テンポに関しては厳密な指定はなく、ある程度指揮者任せなので、短い曲にもかかわらず演奏時間の幅を大きくとれる。したがって、演奏される機会の用途に応じ変化のある対応が可能で、 "どんなテンポや音楽的演出を使うか" が指揮者のちょっとした腕の見せどころとなってくる。また、他の多くのスミスの作品と同じく、フィ−ルドいっぱいに展開するマ−チング・バンドにとってもさまざまな演奏効果が期待できる作品といえるだろう。

土気シビックウインド
オーケストラVol.4

スコアを見ながらそんなことを考えていたとき、バンドパワ−編集部のコタロ−氏から電話が入った。「スミスの "イ−グル" って、今度出た "土気シビック" のCD(CAFUA、CACG-0010 )にも入ってるね。これって聴いた?」
  "ア−、加養さんところの土気シビックウインドオ−ケストラもCD出したのか" と思いながら、「ヘェ−、そうなの。コタロ−さんも知ってのとおり、最近何ヵ月もCDショップへ行ってないし、というより実家を中心に半径 500メ−トルより遠いところへは物理的に移動不可能なんで、正直、今どんなCDが出ているかも知らないし、そのCDのことも全然知らなかった。」と答える。音楽から完全に足を洗って休憩なしの16時間労働と母親の介護だけの毎日を送り、ごくたまに思いだしたようにバンドパワ−に "ラクガキ" を書き込む程度の筆者にとって、新しく聴くCDは内外の友人が送ってくれるものだけとなっていて、コタロ−氏から知らされたこの情報はとても新鮮に耳に響いた。
 しかし、同時にちょっと気になったこともあったので、こちらからも "質問" をくりだした。「ところで、そのCDの日本語タイトルはどうなっている?」
 すると、コタロ−氏が「エ−ッと、ちょっと待ってね。今、見るから......。エ−と、"鷲の翼に" になってます。」との回答。
 このタイトルは、市音のプログラム編成委員がCDの企画時に考えていたのとまったく同じだ。「結局、2種類の日本語タイトルのCDが市場に出まわることになってしまったね。まったく違ったところでほとんど同時に2つのレコ−ディング企画が進んでいたわけで、これはしょうがないか。」と、筆者はコタロ−氏に答えていた。
 市音のCDに、今では市音の "お気に入り" となっている「イ−グルの翼にのって」という日本語タイトルを提供した張本人としては、ちょっと困惑する立場に立たされることになったが、 "土気シビック" の皆さんが自主的にお作りになったCDの内容に別段異義を唱えるつもりなどない。そして、この作品の日本語タイトルに関する筆者の考え方は、File No.03-03のラクガキを読んでいただればそれで十分と思う。しかし、一度印刷されて世に出たものは後々まで大きな影響力を行使する。出てしまった以上、多少の混乱は避けられないが、これもまた将来にまで語りつがれる "話題" のひとつになるんだろうな。(余談ながら、市音の「ニュ−・ウィンド・レパ−トリ−1996」(大阪市教育振興公社、OMSB-2802)に提供した同じスミスの「ブラック・ホ−クが舞うところ(Where The Black Hawk Soars)」という日本語タイトルを訳出したときも、<BLACK><HAWK>という2つの英語の単語がともに日常的に使われる簡単な日本語に "訳せてしまう" ことから、<黒鷹>あるいは<黒い鷹>と訳してしまうか、原題にある<ブラック・ホ−ク>という "音(オン)" をそのまま残すかを秤りにかけた思い出がある。このときは、委嘱者である米ヴァ−ジニア州のハイ・スク−ルの新しい校舎に描かれた<ブラック・ホ−ク>の図柄のもとになった "同じ鳥" が日本の自然界に生息していないという生物学的な事実から、それをシンボライズして固有名詞として扱うことですべてが解決した。)

 しかしながら、スミスのこの作品は、それぞれが直線距離 500キロをこえる地域で活動し、接点などまったくない関西のプロフェッショナルと関東の市民バンドが、結果的に、ほぼ同時にCD用レコ−ディング・アイテムとして選曲していたということであり、その事実ひとつをとっても、この作品がいかに "魅力ある作品" であるかの証明となっているように思えた。

 
 
(c)2001,Yukihiro Higuchi/樋口幸弘
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