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樋口幸弘の「ウィンド楽書(ラクガキ)ノ−トファイル」
ファイル・ナンバー02
マーティン・エレビー:新世界の踊り
NEW WORLD DANCES (Martin Ellerby)
File No.02-06 :< エッ!? >

「ニュー・ウィンド・レパートリー2000」
最終リスト 日本語曲名は仮邦題

12月2日(1999年)、大阪市音楽団(市音)の田中 弘さん(File No.02-02参照) から市音自主企画CD "ニュ−・ウィンド・レパ−トリ−
2000"(大阪市教育振興公社、OMSB-2806)の選曲が完了した、との電話が入った。話をうかがうと、「今回は、市音として正式な "原稿依頼" ですので、近々チ−フ・マネ−ジャ−がそちらへうかがいまして直接お願いすると申しておりますので、具体的な話はそのときに…」ということだったので、こちらもそれ以上つっこんだ話は切りださなかった(この時点では、まだオフィシャルにノ−ト執筆を引き受けていたわけでもなかったので)。

 7日、帰宅すると、市音チ−フ・マネ−ジャ−の辻野宏一さん(長らく市音のオ−ボエ奏者として活躍された)から "自主制作CD「ニュ−・ウィンド・レパ−トリ−2000」の件と92年に収録した「大栗 裕」作品集の中の「大阪俗謡による幻想曲」を東芝EMIから音源使用許可をもらって大阪市歌とともにCD化することについて相談とご了解をいただきたい事がありまして" という内容のアポイントを求めるFAXが入っていた。
 "一体どんなレパ−トリ−に決まったのかな"と思うのと同時に、"はて?「俗謡」の話とは何だろう?"と思いながらも、翌日、電話連絡の上、わざわざこちらまで足を運ばれた辻野さんとお会いして話をうかがうと…"オヤ!? "
 「先日は "プログラム" のほうでいろいろとありがとうございました。これ、お渡しするようにと預かってきました」と、まずは "収録予定曲" の参考音源が入ったカセットを手渡される。つづいて用件に…「実は今、2008年のオリンピック招致運動の関係で、制作費用を個人的に出すので、大阪のことを知ってもらうために市長が各国を訪問する際の関係者に配布するCDを音楽団の演奏で作ったらどうか、という話がありまして」
 "アレッ!? どうなっているの? "と思いながらも話のつづきをうかがうと
 「予算の関係もあって全部新しく録音するというわけにはいきませんので、大阪市歌のいろいろなバ−ジョンを新録音して、それに"なみはや国体のCD(非売品)" から何曲かと "大栗さんのCD(大栗 裕作品集、東芝EMI,TOCZ-9195)" から "俗謡(大阪俗謡による幻想曲)"の音源を東芝EMIから借りて、あとはマ−チ"を何曲か入れて1枚のCDにすることになりました」
 "フ−ン、そんなプランがあるのか "と思っていると…
 「そこで、樋口さんが書かれた "俗謡"の解説の部分を日本語と英語の両方でこのCDのブックレットにも使わせていただきたいと思いまして。大阪のいろいろなことや曲のことを詳しく調べて書かれていて資料性も高いと思いますし。ただ、スペ−スの関係で、英文の方は全訳を使って、日本語の方は短くして使いたいと思うのですが…」
 "エッ!? "と思って、慌てて口をはさませてもらった。
 「すいません。まず最初にお断りしておかないといけないと思うのですが、まず、あのノ−トは、英文になることをまったく想定して書いていませんので、あのままでは英文に訳せないと思います。あれを書いた当時は、3ヵ月くらいかけて現地を実際に歩いて取材してから書きましたので、音楽用語以外にも、地名や和楽器名のほか、大阪ロ−カルの固有名詞も多く、どなたが翻訳されるのか知りませんが、英語だけでなくいろんな専門知識がないと翻訳できないんではないかと。例えば、"天神祭り"や "獅子舞い" "地車囃子(だんじりばやし)"、"当り鉦(あたりがね)"など、読む人が日本人だと、詳しくは知らなくてもおおよその想像はできますけど、外国の人には何のことかわからない。少しは説明を加えてやらないと…。また、翻訳しにくいからといって "落とされる"のも困るし。
 それに、今、日本語の方は短くしてと言われましたけど、書いた本人としては、あれを勝手にパッチワ−クされたのではかなわない。それに、あのブックレットでは、冒頭の方で作曲者のことをまとめて書きましたので、"俗謡"の解説部分には "作曲者のプロフィ−ル"がまったくなく、逆にそれを加えるぐらいでないと不親切なノ−トになってしまうと思いますし…」


ここまで言ったとき、辻野さんの顔はすでに苦渋に満ちた顔になっていた。しかし、安易な妥協はできない。
 「それにですね、今年のはじめの方で、日本のある大手レコ−ド会社によって、書いた本人に何の連絡も行なわれないまま、以前その会社のCD用に書いたノ−トをいつの間にか "新しく発売された別のCD"のブックレットに転用されてしまうという信じられない"事件"がありまして…。
 私は、著作物というものは、もし再度印刷されるチャンスを与えられるなら、不幸にして誤植された部分の訂正や絶えず明らかになる新しい事実を加筆したりするために、つねに見直されてバ−ジョン・アップされるべきだと思うんですよ。そうしないと、新たにCDを買う人に失礼でしょう。ですから、私はずっとそうしてきました。始めのノ−トを書いたときから随分と時間もたっていますからね。
 それと、自分の名前で出るものをまったく知らない人に "切ったり""貼ったり"されるのもちょっと…。もし、どうしてもノ−トを短くしなければならないというのでしたら、著者名のある著作物はすべて書いた本人の責任下にあるわけですから、作業は自分の手でやりたいんですけど…。今は実家の仕事や看病に加えて "今度やらないといけなくなったこと(ニュ−・ウィンド・レパ−トリ−のノ−トのつもりでしゃべっている) "で、これ以上、時間はとれませんし…。もしお急ぎでしたら、どなたかまったく別の人に新しくノ−トを書いていただく方がいいのではないでしょうか。最初から執筆者に英文になることをお話しした上で…」
 と、興奮気味に一気にしゃべって、この話自体は丁重にお断りすることにした。辻野さんは「帰って団長と相談してみます」と話されて帰られたが、しばらくして冷静に立ち戻ってみると、何か "おかしな"ことに気が付いた。


"ニュ−・ウィンド・レパ−トリ−は、一体どこへいってしまったのだろうか?"


 渡されたカセットには、ほとんど何のデ−タもない。慌てて "プログラム編成委員" の方々に連絡をとってみると、そちらの方も、まさかの"エッ!?!?.… "
 市音内部でちょっとした"伝達上の混線"があったようだ。そこで、急いでレコ−ディング予定曲目リストをFAXしていただくと…。あったあった。酒井 格(さかいいたる)の「大仏と鹿」、マ−ティン・エレビ−の「NEW WORLD DANCES」、ピ−ト・スウェルツの「SHIRIM」…。クラシック音楽から1曲、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲が入っているが、それをのぞいた残りの "オリジナル・ピ−ス" はとてもバラエティにとんでいて、バランスもいい。
 予感が走る。"これは、いいCDになりそうだ!! "

......つづく

(c)2000,Yukihiro Higuchi
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