吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー
スペシャル >>インデックス
樋口幸弘の「ウィンド楽書(ラクガキ)ノ−トファイル」
▲「大仏と鹿」録音中 指揮:堤 俊作

2月4日(2000年)、大阪市音楽団(市音)のトランペット奏者、田中 弘さんから、しばらくおいてクラリネット奏者の延原弘明さんから電話が入った。両氏は、ともに市音プログラム編成委員。電話は、兵庫県尼崎市のアルカイックホ−ルで前日から行なわれている市音自主企画CD「ニュ−・ウィンド・レパ−トリ−2000」のレコ−ディング・セッション終了後の "打ち上げ" へのお誘いだった。

 仕事の関係で途中参加(普通、この "宴" は会場を変えながら翌日の未明まで続くのでかなり遅くから加わっても問題ないが、油断すると、つぎの日は多くの人が "安息日" を迎えることになる。巷には "反省は○○でもできる" という説があるらしいが・・・・・・)となったが、会場に入ると、龍城弘人団長をはじめ、レコ−ディングでディレクタ−をつとめられた佐藤方紀さん(File No.01-02 参照/現在、東京の(株)ハ−モニ−のプロデュ−サ−)、CD制作を技術面でサポ−トする広島のブレ−ン(株)の加藤雄一さんなど、一足早く盛り上がっている面々(久しぶりに顔を合わせる人ばかり!!)の少々手荒い歓迎が待ち受けていた。そして、「大仏と鹿」の作曲者、酒井さんもその場にいた。彼も、この "宴" に誘われていたのだ。

 宴席を一巡したあと、作曲者の隣りに腰を落ち着ける。そして、今度のレコ−ディングについてふたりでひとしきり盛り上がった後、肝腎のテ−マを切りだしてみた。

樋口(以下、H):
ところで、デ・ハスケ版のスコア見た?
酒井(以下、S):
見た瞬間、もう「エッ?」ていう感じですよ。(と、彼も吉本新喜劇ばりにズルッと前方にすべる!?関西人はこれが自然体でできる。)

H: ボクもまったく同じ。なにしろ、タイトルがロ−マ字なんだもんね。
S: そうなんですよ。誰があんなこと(デ・ハスケに)教えたんでしょうか。
H: それ、ひょっとすると、またボクかも知れないんだ。今度もハルムト(Mr.Garmt van der Veen) に、タイトルの意味や読み方をしつこく尋ねられたことがあったからね。ただし、あなたが "Great Buddha and Deer"しかない" と先方に申し入れてあるって話されていたし、ボクも "作曲者がタイトルを決めていて、吹奏楽連盟の委嘱作でもあるし、変更は馴染まない" とクギをさしておいたんだけど・・・・・。まさか、ロ−マ字タイトルになっているとは・・・・・。(つ、ついに言ってしまった!!)

S: (再び、ズルッと大げさにすべりながら)本当に、こんな感じだったんですよ。
H: ただね。ロ−マ字タイトルになったことで、結果的にひとつだけいいこともあると思うよ。つまり、世界中の人があの作品を「ダイブツ・ト・シカ」って呼ぶようになった、ということなんだ。
S: アッ!!そう考えればいいんですよね。(と、急に笑顔に変わる)
H: 英語圏では「ダイブツ・トゥ−・シカ」ってなるかも知れないけど。(両者大笑い)
S: ところで、ボク、9才のときに "市音" を指揮したことがあるんですよ。まだ、天王寺に "市音" があった頃の話なんですが。
H: エッ!?そりゃ初耳!?パンダの家に変わる前の音楽堂で?(中国からジャイアント・パンダが贈られることが決まったとき、市音の旧練習場と天王寺音楽堂がとり壊されて跡地にパンダ専用の住まいが作られた。パンダの人気の前では "市音" も形無し。)それって "たそがれコンサ−ト" で?
S: そうなんです。母親が素人指揮者コ−ナ−に応募して当たってしまったんですよ。けれど、渡されたスコアの調が原曲とは違っていたので、ナマイキにも「なんで?」って思ってましたけど。
H: ( "9才でそんなこと考えていたなんて" と思いながら)記憶が定かではないけど、その "たそがれコンサ−ト" 聴いてたかも知れない。当時からよく "市音" におじゃましてたしね。しかし、今度「大仏と鹿」がレコ−ディングされたわけだし、その頃から "市音" とあなたの間には不思議な縁があったということになる。
S: そうなんです。
H: あの木の床が "ギシギシ" と音をたてる2階の合奏場でリハ−サルしたわけだ。
S: やりました。合奏の方は、もちろん、当時指揮をされていた永野慶作さんが下準備をしておいて下さったんですけど。
H: 当時のもの、ちゃんととってある?写真とか、録音とか。
S: 確か、市音からもらった指揮棒と、永野さんとボクの書き込みのあるスコアは残っていると思います(後日、現存を確認)。「教育大阪」って雑誌に写真入りで紹介されたし、NHKのラジオでも放送されたんですよ。母親が録音してくれたカセットはちゃんとは録れてなかったんですけれど・・・・・・・・。
H: 世紀の大スク−プ。それね、あなたのホ−ムペ−ジで、ぜひ紹介すべきです。みんな「エ−ッ!?」ってビックリするよ。プロフィ−ルにも「9才のときに、大阪市音楽団を指揮し、好評を博す」って書いたりしてね。(両者、大笑い)

 この前日、大阪市音楽団首席指揮者、堤 俊作のタクトでレコ−ディングされた「大仏と鹿」は、作曲者も驚いたというほどのとても個性的な演奏だったんだそうだ。筆者の人生の大きな転機に出会ったとても素敵な作品「大仏と鹿」。その前途に幸多くあれ。

▲「大仏と鹿」録音中 於:アルカイックホール

 

 
 
(c)2000,Yukihiro Higuchi
>>インデックスページに戻る
>> スペシャルトップページに戻る
jasrac番号 吹奏楽マガジン バンドパワー