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樋口幸弘の「ウィンド楽書(ラクガキ)ノ−トファイル」
 今年2月4日、久しぶりにわが家に帰ると、酒井 格さんからお手紙(1月16日付)が届いていた。それは、随分と前から構想とそのユニ−クな曲名を聞かされていた奈良県吹奏楽連盟創立40周年記念委嘱作「大仏と鹿」が完成し、その世界初演が大阪市音楽団をゲストに招いた同吹奏楽連盟主催のコンサ−トで行なわれるという知らせだった。早速、電話を入れる。

樋口(以下、H): お久しぶり。お手紙受け取りました。新曲できましたね。

酒井(以下、S) ハイ。ちょうど明日(2月5日)、市音で練習を聴かせてもらうことになっていましてね。それと、コンサ−トのチラシには載ってないんですけど、当日はそのコンサ−トのオ−プニング用に書いた "若草山のファンファ−レ" も中学生の合同バンドで演奏されるんです。

: フ−ン。ところで、曲名は結局「大仏と鹿」になったんだね。

"奈良" といえば、これしかない。(筆者には "しか" の部分がシャレに聞こえた)。しかし、このタイトルは、実は生駒市立鹿ノ台中学校の坂東佳子先生のアイデアだったんです。

: しかし、出版になるんなら英語のタイトルをどうするかでまた大変なことになるんじゃない?「たなばた」(作曲時の原題:Seventh Night of July)や「おおみそか」(同:New Year's Eve)のときは、知らないうちにボクがタイトルを勝手に変えた犯人になっていたことがあったし。(あるとき、オランダの出版社de haskeのMr.Garmt van der Veen と食事をしたときに "日本ではこの日のことをどういうんだい?" と尋ねられて何げなく返答したら、答えた本人もオリジナルの曲名を決めた作曲者も知らない間にそれがタイトルとして使われるようになっていた。)今度は、日本語タイトルから英語タイトルを決める逆のパタ−ンになるけど。

ご心配なく。今では曲を書いたボク自身がいつの間にか「たなばた」や「おおみそか」と平気で呼んでいるくらいですから。それに、今度は英語タイトルは「グレ−ト・ブッダ・アンド・ディア−(Great Buddha and Deer) 」って決めていて、de haskeにも「これしかない。」って言ってありますから。(やっぱりシャレに聞こえる。しかし、作曲者の言から初演前からこの作品の出版の話が進んでいたことが判る!!)

: それって、もろに直訳じゃないの(笑い)。ところで録音とかされるの?

吹奏楽連盟の方でCDにして加盟団体に配るという話になっています。

: 連盟も気合い入ってるね。市音を雇ってライヴCDまで作ってしまうとは。けどね、CDになるんだったらちょうどいい。今NHK−FMの<ブラスのひびき>で紹介できればいいなって思ったとこなんだけど、その録音、事前に借用できると有り難いんだけれどね。それに、もうすぐ4月分の番組内容の提案を出すタイミングなんだけど、この新曲はいつも4週目に放送している<バンド・ミュ−ジック・ナウ>のテ−マにピッタリだと思うんだ。ニュ−ス性も高いしね。でも、提案までに演奏時間も秒単位で正確に計っておいたり、演奏者やCDを作る会社など、著作権に絡む確認が必要になってきたり、いろいろと情報を整理する必要があるんでね。

番組はいつも聴いていますよ。Gで始まるあのテ−マ曲がいいですよね。あれが流れてくると、目が醒めてゆくというか。

: あれは、イギリスのエリック・コ−ツという人が書いた「ロンドン・アゲイン組曲」の中の「オックスフォ−ド・ストリ−ト」という題名の曲なんだけど、あのテ−マ、実は市音の演奏って知っていた?

知りませんでした。

: 話をすると少し長くなるんだけど、だいぶ前に市音の練習場で東芝EMIの<マスタ−ピ−ス・シリ−ズ>の録音のための試奏があったとき、その場で録音予定曲を急に変更する必要が起こってね。指揮をされていた木村吉宏団長(当時)がボクに「なんかエエ曲ないか?」と尋ねるんで、たまたま持ち合わせていた何曲かの中から「これなんかどうでしょうか。」って渡したのがあの曲だったんだ。そうしたら、その場ですぐに楽譜がプレイヤ−に配られて "音出し(初見演奏)"が始まって、それを聴いた東芝EMIのプロデュ−サ−(佐藤方紀さん。現在は独立。)にも「なかなかいい曲じゃないですか。明るいのがいい。これは喜ばれますよ。」とOKをいただいて録音即決定。あとはオ−ケストラの原調に戻したり、1930年代の手書きのオ−ケストラ・スコア(作曲年月日も書き込まれていた)をイギリスから取り寄せたりのドタバタが続いたけれど、今では、関係者の間ではまるで<ブラスのひびき>のオ−プニングのために録音された曲であるかのような言い方をされるようになって。NHKがテ−マ曲を決めたときも、チ−フ・プロデュ−サ−や番組担当のディレクタ−たちに曲名や演奏者名をまったく知らせないで候補曲をいくつか聴いてもらったら、なんと全員一致であの曲に決まったということなんだ。それほど番組のイメ−ジにピッタリだったらしい。

おもしろい話があるんですね。「大仏と鹿」の録音の件は、早速、連盟にお話ししてみます。

 いつものことながら、とても礼儀正しく答える酒井さん。今度の新作の初演成功を心より祈りながら受話器を置いた。

...つづく
(c)1999,Yukihiro Higuchi
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