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第11回 岸田佳津子氏
☆“打楽器奏者”はつらいよ!?☆
2000年 月

 皆さん、初めまして。パーカッションの岸田佳津子と申します。
ここに紹介して下さった、ヒコちゃんこと、波田野直彦さんや、前にこのコーナーに登場したお友達の真島俊夫さん、先輩の小長谷宗一さん、そのほかの作・編曲家の方たちのように筋道立てた理論を組み立てるのが大の苦手で、どうなることかとも思いますが、この頃思っていることを、徒然なるままに…。

 両親が音楽家で(職業音楽家ではありませんが、父はサラリーマンといわゆる2足のわらじでした)伯母も従兄弟もみんな、打楽器やマリンバ奏者という環境に育ち、何の疑いもなく、音楽の道に進みました。2才からマリンバ、6才から電子オルガン、7歳からピアノと、まあ、よくやっていたと思います。
 "何の疑いもなく"と書きましたが、少しは疑って、抵抗もして、実は、中学校時代はスポーツに明け暮れ、テニス部の部長に、陸上、バレーボールetc. 母いわく「明るい内に家に帰って来たことはないわねえ・・」
高校時代は、やはりスポーツをやろうと入部したのですが、あまりの厳しさに、根性のない私は3日で逃げ出し、じゃあ音楽の部活かな、ということで、マリンバをやっていたので、吹奏楽部に入りました。
 と、そうしているうちに、運良く芸大に入学できたのは、良いのですが、今までの、ナガラ勉強がたたったのか、カルチャーショックでした。回りにはもう凄い人がいっぱいいて!!
1番ショックだったのは、楽器によって暗黙の序列みたいなものがあるということ。今でこそ、Percは認められた楽器ですが、当時はそう簡単にはいかなかったのです。伴奏を頼もうと、ピアノ科の同級生を紹介してもらったのですが、「打楽器科なんてあるの? 専門なの? 副科じゃなくて? 何やって入ってきたの?」
 私「・・・(絶句)・・・」
 この後、やっと見つけたピアノの相棒は、よく分かってくれて(今は京都芸大の助教授ですが)、卒業してもずっと伴奏してくれました。その後も、この苦労は続くことになるのですが、

<例えば>その1
 とある地方の公演で、Percアンサンブルで呼んでいただき、終了後の主催者との懇親会で、皆さん素晴らしいですね!とずっと褒めていただいて、ではお開きの段になったら、「ところで普段はどんなお仕事をなさっているのですか?」
私「・・・??・・・」
ちゃんと出演料も戴いているのに、打楽器(太鼓叩き)を職業にしているとは、全く思われていなかったようです。ピアノやヴァイオリンだと、そんなことはないのに!

<例えば>その2
 金管アンサンブル&マリンバという編成の演奏会で、いつもは司会は別の方なのですが、風邪をひかれて声が出なくなり、私が司会もしました。そうしたら、また終了後に主催者の方が、「岸田さんって、司会も上手だけど、木琴もうまかったんですねえ」
確かにマリンバは木琴だけど・・
だから、私は司会者じゃなくて、木琴ひくのが専門なの!

<例えば>その3
 とある県の教員採用試験では、いまだに、むかーし買った4オクターブもないような、しかも、とても楽器とは呼べないようなマリンバで受験させているらしい。そこで、自分の楽器を運搬して受験したいと言ったら、車で来るのは禁止だから、という理由で断られたとのこと。学校の音楽の先生を決める試験で、これでは情けないですね…。

 というわけで、これだけ吹奏楽が盛んになって、演奏家も指導者も増えてきたのに、今度は文部省のお達しで、音楽の授業も少なくなり、もしかしたらなくなってしまうかも、という話しまであります。本当は、世の中不景気だし、痛ましい事件も多いし、こういう時だからこそ、音楽の力が必要だと思うのです。
 "音楽は国境のない言葉"と言いますが、人々の心を静め、勇気づけ、希望を与え、ということができると思うのですけれど、違いますか? そうなって欲しいと思っている音楽家は、いっぱいいると思います。

 さて、色々な修羅場をくぐり抜け、Percアンサンブル、マリンバのソロ、オーケストラの打楽器奏者、指導、とありとあらゆることをやってきた私ですが、「マジカル・サウンズ」という新しいグループを2年前に結成しました。編成は、Fl.Cl.Sax.Trp.Horn.Trb.Tub.Perc.の8人が基本形で、時にPfとDrumが入ります。
 デビューというには、オジさん達で(ごめんなさい、私もオバさんですが)、オーケストラ首席奏者の甲藤さんや岡崎さん、吹奏楽コンクールの審査員でお馴染みの中村均一さん、並木博美さん、早川潔さん、東吹のメンバーの野本さん、屋根の上のヴァイオリン弾きで役者をやっているClの品川さんという個性的な顔ぶれのメンバーです。
 そう私も含めて、ずっとオケや吹奏楽や同族アンサンブルでやってきた人達が、では1人ずつだと・・・どうなるの・・・?とやってみたところ、自分の楽器のことしか分からないし、響きは合わないし、でも、時々、凄く魅力のある不思議なサウンドがして、面白い!
 それに、少子化も進んで、バンドの人数を確保するのも難しくなってきているようですし、少しでも、お手本になればとも思います。

 音楽は聴いてくれる人がいて、楽しんでもらって初めて成り立ちます。自分だけが楽しくても、本物の音楽ではないと最近になってやっと解かってきました(今さら遅いかなあ?)
皆さんも、自分の音楽を見つけて、周りの人、聴いてくれる人が幸せになれるような音楽にめぐり逢えることを、祈っています。



■ PROFILE ■

 

東京芸術大学、大学院終了。東京都響、東フィル、新星日響、N響団友オケや、アンサンブル・リベルテ、神大、埼玉大、市立柏高、札幌白石高などの吹奏楽団とも多数共演。スーパーワールドオーケストラ2000、読響、札響などのオーケストラ打楽器奏者、「東京パーカッション・プレイヤーズ」「F・キューブ」のメンバー。
 尚美学園大、高崎芸術短大、東京ミュージック&メディアアーツ尚美、八王子高、松伏高音楽科、警視庁・千葉・埼玉・長野県警音楽隊、講師

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