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BPセミナー/トランペット
text:関根志郎(Trp奏者)
VOL.1 金管アンサンブル編

 

●アンサンブルを始める前に・・・

すぐにでも曲を吹きたいところですが、よりよいアンサンブルをするために以下のことに気をつけてトライしてみましょう。きっと今まで以上の演奏ができ、音楽が楽しくなることでしょう!

(1)セッティング(配置)
編成によって並び方はさまざまです。
ただ、どんな編成でも重要なのは「演奏時にメンバー全員を見渡せるか」ということです。

人がかぶってしまったり、譜面台が邪魔をしていたりしては合図を送ることが難しかったり、気配が感じ取りにくくなり音楽に乱れがでてきます。

指揮者がいないアンサンブルでは、演奏者達だけで音楽を作り上げるため周囲の空気をよく感じて演奏することが大切です。KYにならないように注意です。
よって演奏時には周りを見渡せるように余裕をもったセッティングにしましょう。

(2)チューニング
さて、実際に楽器を吹くことになりますが、まずはチューニングです。
1stの人のB♭の音に順々に合わせていきます。なかなか音が合わないときは歌ってみることも有効です。このとき大切なのは地声ではなく裏声で歌うということです。

チューニングが終わったら低音楽器から順にB♭を重ねていきます。
音程を合わせることはもちろん、響きやスピード感を合わせることも忘れないようにしましょう!

(3)アンサンブルトレーニング
よりまとまりのあるアンサンブルは聴き手に説得力を与えます。そのためには訓練が必要です。以下のトレーニングにチャレンジしてみましょう!

【1】スケール練習
どの調の音階でもかまいません。いつも皆さんが行っているような音階練習をゆっくりのテンポ(二分音符が望ましい)で演奏します。
このときに、音の出だし、処理、音量、音程、音色がそろっているか、よく聴きながら練習します。

次に3つのグループに分かれます(仮にA,B,Cグループとします)
Aグループは通常通り演奏しますがBグループはAグループが2個目の音を吹き終え、3つ目の音を吹き始めるときからスタートします。

Cグループは同様にBグループが2個目の音を吹き終えてからスタートです。いわゆる「かえるのうた」のような輪唱です。開始をずらすことでハーモニー練習にもなります。先に終わるA、BグループはCグループが終わるまで最後の音をロングトーンしましょう。

【2】リレー練習
次にアンサンブルメンバーのテンポ感の共有や音符の吹き方の統一のためにとても有効な練習を紹介します。

ここでも音階練習を使います。(今回は四分音符)
順番に一人一拍ずつ音階の音を1音ずつ吹きます。ドドド・・という風に最後の人までいったらはじめの人に戻りレレレ・・と音階を演奏します。

このときに吹き方はスタートした人の音量・音色・音質・音程・音の長さにそろえるようにしましょう。

テンポはゆっくりから始め、少しずつ上げていきます。

テンポをある程度上げられるようになってきたら、もう一度ゆっくりからに戻して、3人だったら3連符(1人目は3連符の1個目、2人目は3連符の2個目、3人目は3連符の3個目)、4人だったら16分音符でチャレンジしてみましょう!
5人だと5連符で難しいですね。

さて、あなたのアンサンブルチームは、どのテンポまで挑戦できるでしょうか!?

 
(4)効率的に進めるために・・・
上記のトレーニングや曲を練習するにあたって基本的にスタートや終わりの合図は1stが行います。ベルを少し動かしたりすることで合わせやすくなると思います。

楽曲の分析(アナリーゼ)も重要です。作曲者の生い立ちや時代背景、楽曲の形式を調べて演奏することはとても大切なことです。
また番号のない曲には小節番号や練習番号を書いておくと便利です。

お薦めアンサンブル曲

【金管五重奏】

●戦いの組曲Battle Suite (1621)
 ザムエル・シャイトSamuel Scheidt (1587-1654)
 〔Philip Jones版〕

シャイトはドイツ初期バロックの代表的な作曲家の一人で、オルガン曲集や器楽曲、声楽曲を多く作曲しています。この「戦いの組曲」は1621年に出版された4−5声部による器楽のための舞曲集の中の一つで金管アンサンブルのレパートリーとして欠かせない曲となっています。

【演奏ポイント】

1.「戦いのガリヤード Galliard Battaglia」
トランペット2本がまるで戦いをしているかのように旋律を交代に奏でます。1人でも演奏できるような譜面を2本の楽器で演奏することでステレオ効果を生み出します。演奏会の冒頭でも使われる作品です。

【冒頭〜】 旋律を担当するトランペットの音量はもちろん、音の発音や処理の仕方、スピード感が対等に聴こえることが大切です。譜面上

では交互に演奏しますが、練習では同時に演奏して形が同じになるように練習してみましょう。伴奏を吹くパートも音符の長さと、音の形が

同じになるようにそろえ、ハーモニーを感じながら演奏しましょう。

【31小節目】で全体が集合しますが、ffがうるさくならないように豊かな響きで演奏しましょう。

【35小節目】からはpになります。貧弱にならないようにしましょう。ダイナミクスの違いを遠近感でイメージすると良いと思います。fは遠くに

伸びのある音で、pは近くでささやくようにイメージしてはいかがでしょうか。

【43小節目〜】やや音符が細かくなってきます。16分音符は一つ一つの音符がクリアーに聴こえる事が重要です。張り切ってしまうと舌に力

が入ってきます。体はリラックスして吹きましょう。また8分音符はとても転びやすいのでメトロノームを使用しましょう。

2.「悲しみのクーラント Courant Dolorosa」
4声編成の楽章で、1st、2ndトランペットの両方の譜面に同じ旋律が記されていますが、「同時に演奏するのではなく1本ずつ演奏し、リピート後にもう1本が演奏する」と楽譜に書かれています。タイトルの「クーラント Courant」とは「舞曲」を指し、1楽章とは対照的にやや落ち着いた曲想になっています。

初めのアウフタクトはトランペットが合図をだします。とてもフレーズが長いこの楽章では、まず問題になるのがブレスの位置です。演奏者の都合で勝手にブレスをとってしまうと音楽の流れが無くなり不自然になってしまいます。スラーの中では可能な限り吸わないようにフレーズの切れ目ですばやくしましょう。

3.「ベルガマスクのカンツォーン Canzon Bergamask」
フーガ形式となっており、同じ旋律が複数の声部に順次現れます。また、1楽章のステレオ効果がこの楽章でも現れ、各声部のやり取りが
、この曲のおもしろさの1つとなっています。中間部で現れる優雅なコラールや再度主題を経て曲を閉じます。

【冒頭〜】1楽章同様、同じモチーフは全パートが同じ吹き方ができるように統一しましょう。

【35小節目〜】拍子感がとりづらい部分も登場しますが、まずは各自のパートの役割を考えメトロノームを使って全員で練習しましょう。スコ

アを見るとわかりやすいですが8分音符4個くくりの動きが各パートに散りばめられています。8分音符だけつながるか抜き取って練習してみましょう。

【78小節目〜】付点8分音符は跳ねすぎず、かつ張りすぎないようにちょうど良い音形を探して演奏してみてください。

【92小節目〜】4分の6拍子はコラール風の場面になります。音色やイメージを変えて演奏しましょう。テューバはしっかりとビート感を出しましょう。全体の響きが明るく輝くように高らかに歌いましょう。2分音符は張りすぎず音の終わりに「ん」がつくように吹きましょう。

【131小節目】4分の6拍子からTempo primoの4拍子に戻った瞬間はトランペット1stが拍子感を作りましょう。2拍目のDの音がカギです。

最後のフェルマータは響きが下に落ちないように上にぬけていくように響かせるといいでしょう。

技巧的に難しい部分もありますが、各楽器はもちろん、金管アンサンブルとしても華やかな作品です。


【金管十重奏】

●「舞曲集」The Danserye(1551)
 作曲:ティールマン・スザートTielman Susato (1500年頃 - 1561/4)
 編曲:ジョン・アイヴソン John Iveson
 〔Philip Jones版〕

金管アンサンブルの演奏形態を定着させ、発展させたのはイギリスのフィリップ・ジョーンズ・アンサンブル(以下、PJBE)と言っても過言ではありません。

そのPJBEが世に広め、金管アンサンブルの定番とも言うべき曲がこのスザートの「舞曲集」です。「スザート組曲」とも呼ばれます。日本ではアンサンブルコンテストでよく演奏され、その為八重奏編成の譜面が多く出版されています。
このスザート編纂の舞曲集は全57曲からなり、PJBEの一員のジョン・アイヴソンが以下の6曲を抜粋し金管アンサンブルに編曲しました。

【演奏ポイント】

1. ムーア人の踊り
冒頭にふさわしい楽章で2拍子感を感じて演奏しましょう。またブレス前の音符が短くならないように気をつけましょう。
【10小節目】からは「軽さ」が求められます。短い音符ですが一個一個のハーモニーを大事に吹きましょう。装飾音符を入れても面白いかもしれません。

2. 4つのブランル
この楽章は4声用として書かれています。
スコアではテューバ以外で書かれています。組み合わせも変えることが出来るので各アンサンブルの個性が出る場所ですね。

また、基本的にcresc.など強弱記号はありませんが、のっぺらぼうに吹いていいというわけではありません。音楽が盛り上がったりおさまったりする表現をつけてみましょう。例えば、9小節目と10小節目は同じことを繰り返しています。9小節目は前からの流れのまま吹き、10小節目は少し抑え気味にコントラストをつけるということもできます。

譜面には注意書きで装飾音符は繰り返し後だけと書かれております。装飾音符はあくまで飾りなので、もともとの音を大切にして装飾音符はさらりと吹けるといいでしょう。

3.ロンド
この曲も2拍子ですが特に1拍目にウェイトをおくように吹いてみましょう。
また15小節目の2拍目の裏のタイミングがそろうように、4分音符を8分音符に分割して練習してみてもいいでしょう。

高音セクションと低音セクションが交互にテーマを受け持ちます。
特にフレーズの終わりの部分が次のセクションにつながるようにしてみましょう。
【61小節目〜】全体が集合しますが、美しい余裕のあるfで響かせましょう。
65小節目のcresc.も8分音符に分割して練習することが効果的です。

4. バスダンス・羊飼い
4分の6拍子ですが、やはりこの曲も2拍子を感じながら演奏します。
8分音符が重たくならないように流れに乗って吹きましょう。
3、6拍目の4分音符はスタッカートですが、ここでは軽くといった解釈でいいと思います。
【Coda】からのcresc.はテンポ感を感じて行いましょう。cresc.の次の小節のアインザッツが決まるようにします。

5. ロンド
中音域の4重奏です。
フレーズの切れ目の音の処理の仕方に気をつけましょう。

各声部の8分、16分音符の動きが浮き立つようにすると立体感がでてくるでしょう。

6. 戦い
最終楽章は堂々とした重厚な金管サウンドからスタートします。
4小節目に動きのあるパートは音一個一個に重みを感じましょう。
【11小節目】は8ビートを頭の中で鳴らしてタイの終わるタイミングをそろえます。
【17小節目】からは2重奏の掛け合いですが、イントネーションや音の形をそろえ、8分音符が短くなりすぎないようにします。バトンタッチする箇所も音価分吹きましょう。

【26小節目】の8分音符は転びやすいので、注意です。
【32小節目】の全音符は打楽器を聴きながらcresc.します。33小節目の頭がそろうように合図をだして合わせます。また、ここから最後まではスタミナ的に苦しい箇所ですが、二分音符は抜かないように伸びのある音で遠くに飛ばすようにイメージします。最後の音は打楽器を聴きつつ周囲を感じて合わせましょう。この最後の音がオルガンのようなサウンドが鳴り響くように曲中はスタミナのペース配分を考え、余裕と冷静さを持って演奏しましょう。

打楽器が入り賑やかな楽章や、古風でどこか素朴な雰囲気、そしてブリリアントで壮大なブラスサウンドが味わえる作品です。
個々の技術的にはさほど難しくはありませんが、アンサンブルのバランスや音のクオリティ、そして何よりも『舞曲』という曲の『味』が表現できるかが決めてかと思います。

金管奏者は必ず一度は演奏していただきたい1曲です。


【関連CD】 
下に紹介したCDは吹奏楽ですが、いずれも素敵な演奏なので、ぜひ聴いてみてくださいね。

オマージュ/ノース・テキサス・ウインド・シンフォニー
「ルネサンス舞曲集」より12のダンス/ティールマン・スザート(arr.マイケル・ウォルターズ)を収録http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1440/

シンプリー・モア・スパーク〜フィリップ・スパーク作品集
「舞曲集」よりパヴァーヌ「戦い」/ティールマン・スザート(arr.フィリップ・スパーク)を収録。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0945/

(2009.01.07)


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