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樋口幸弘の「マイ・フェイヴァリッツ!!」

オラフ王を称えて -
グスターヴ・ホルスト: ミリタリー・バンドのための全作品集

The Praise of King Olaf - Holst's Complete Music for Military Band

指揮:レイフ・アルネ・タンゲン・ペデルセン
Leif Arne Tangen Pedersen
演奏:ノルウェー王国海軍バンド
Royal Norwegian Navy Band

vol.2



大発掘!! ホルストのもうひとつのオリジナル -『オラフ王を称えて』

 このアルバムの演奏者に、イギリスではなく、ノルウェーのバンドが選ばれることになった背景には、もうひとつ大きな理由があった。それは『オラフ王を称えて(The Praise of King Olaf)』という、ミリタリー・バンドのために書かれたオリジナル作品の手書き譜を、プロデューサーのマイク・プアートンが探し出したことだった。
 
 『オラフ王を称えて』は、英国王ジョージ5世の戴冠式のあった1911年、5月から10月にかけて開催された「Festival of Imperial Exhibition(帝国博覧フェスティヴァル)」の一環としてロンドンのクリスタル・パレスを会場として行われた「ページェント・オブ・ロンドン(もしくは、ページェント・オブ・エンパイア)」という、大仕掛けの屋外音楽イベントの一部を担うために作曲された。(作曲年は、1910-11年)

 「ページェント・オブ・ロンドン」は、イギリスの史実をテーマとした4部32場からなる音楽イベントで、上演には4昼夜を必要とし、のべ15000人の出演者がこれに関わった。4ヵ月の上演期間中、400万人の観衆がこれを観たとの記録がある。ホルストのロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージック(RCM)時代の友人W.H.ベルがこれを委嘱され、当時の若手作曲家がほとんど総出で各部の音楽を分担して書いた。その中には、エドワード・ジャーマン、ポール・コーダー、パーシー・フレッチャー、ヘンリー・ウッド、フランク・ブリッジ、ヒューバート・バス、フレデリック・オースティンらの名がある。

 ホルストの音楽は、その第1部第4場のために書かれた。このシーンは、1014年、イングランドの大部分を支配下に置いていたデーン人が占拠するロンドン橋を、のちのエドマンド豪胆王率いるイングランド軍と呼応して、ノルウェーの守護聖人となったオラフ(2世)王率いるノルウェー軍が船上から攻撃して橋を落して勝利する、という大スペクタクル・シーン。今日のようなPAシステムがない時代の野外上演用付随音楽のために、ホルストは、ミリタリー・バンドと大合唱(500人)を使い、4つのファンファーレと2つの戦闘シーンの音楽などを配した計6曲のたいへんドラマチックな音楽を書いた。そして、このシーンのために、クリスタル・パレスの大きな池には橋が築かれただけでなく、舳先に竜の頭を戴くオラフ王の船が浮かび、その周囲に敵味方の兵士たちが配置されていた。この音楽は、そんな途方もないスケールで演じられた音楽イベントのための作品だった。(ブックレットには写真が印刷されている!!)

 この作品。実は、ホルスト自身の作品リストには載っていない。ただ、娘イモージェンの著作に大英博物館所蔵の手書きコンデンスの引用があることから、存在自体は知られていた。しかし、当時のこと故、録音もなく、出版もされず、何人もの作曲家が手分けして書いたイベント用音楽の一部だったことから1911年以降に演奏されることもなく、いつしか忘れ去られた存在になろうとしていた。それを現代に甦らせたのがこのレコーディングというわけだ。

 21世紀の室内録音に際しては、当時のような大編成は必要としない。幸い、ホルストのオーケストレーションは、『組曲第1番』などと同じく、至ってシンプル。プロデューサーのマイクは、誇り高きオラフ王の水軍の末裔である“ノルウェー王国海軍”のバンドに、この発掘されたもうひとつのオリジナルと、他のホルスト作品すべての録音をゆだねることにした。 (つづく)

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オラフ王を称えて -
グスターヴ・ホルスト: ミリタリー・バンドのための全作品集
The Praise of King Olaf - Holst's Complete Music for Military Band

指揮:レイフ・アルネ・タンゲン・ペデルセン Leif Arne Tangen Pedersen
演奏:ノルウェー王国海軍バンド Royal Norwegian Navy Band

【曲目】

3つの民謡
Three Folk Tunes

ミリタリー・バンドのための組曲第1番 変ホ長調 作品28-1
First Suite in E flat for Military Band, Op.28 No.1

「ハマースミス」 - プレリュードとスケルツォ 作品52
Hammersmith - Prelude & Scherzo Op.52

ミリタリー・バンドのための組曲第2番 へ長調 作品28-2
Second Suite in F for Military Band, Op.28 No.2

ジーグ風フーガ(ヨハン・セバスティアン・バッハ/ホルスト編)
Fugue A La Gigue (Johan Sebastian Bach, arr. Holst)

ムーアサイド組曲(作曲者自身によるミリタリー・バンド用バージョン - 未完)
A Moorside Suite - Unfinished transcription for Military Band

オラフ王を称えて
The Praise of King Olaf - For Choir and Military Band

マーチング・ソング(「2つの無言歌」から)
Marching Song

ムーアサイド組曲(ゴードン・ジェイコブ編)
A Moorside Suite (arr. Gordon Jacob)

祖国よ、我は汝に誓う(レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ編)
I Vow To Thee My Country (arr. Ralph Vaughan Williams)

組曲『惑星』より"火星" (G・スミス編)
Mars from ‘The Planets’(arr. G. Smith)

組曲『惑星』より"木星" (G・スミス編)
Jupiter from ‘The Planets’(arr. G. Smith)

録音:2006年2月13日-17日
会場:テンスベルィ審判教会(ノルウェー)
プロデューサー:マイク・プアートン
エンジニア:マーティン・アトキンスン
CD番号:英Specialist, SRC110

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(C)2007、Yukihiro Higuchi/樋口幸弘
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