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樋口幸弘の「マイ・フェイヴァリッツ!!」

オラフ王を称えて -
グスターヴ・ホルスト: ミリタリー・バンドのための全作品集

The Praise of King Olaf - Holst's Complete Music for Military Band

指揮:レイフ・アルネ・タンゲン・ペデルセン
Leif Arne Tangen Pedersen
演奏:ノルウェー王国海軍バンド
Royal Norwegian Navy Band

vol.1


 このディスクは、イギリスの作曲家グスターヴ・ホルスト(1874-1934)がミリタリー・バンドのために作・編曲した現存するすべての楽曲を録音した世界初のアルバムとなった。企画段階から少なからず関与させていただいたことから、個人的な思い入れもあるが、実際に手にしたアルバムは、演奏、録音、構成のすべてにおいて、お世辞抜きのファースト・クラス。アカデミックさのみならず、ウィンド・クラシックとしても最高水準のパフォーマンスを満喫できる。その完成度の高さに、迷うことなく「マイ・フェイヴァリッツ」に選定!!

ホルストの2つのオリジナル組曲

 スペシャリスト・レコーディングのプロデューサー、マイク・プアートンから“ホルスト作品集”の構想を打ち明けられたのは、かれこれ3年以上も前の2004年のことだった。当時、彼は、Naxosレーベルで発売した一連のスーザ作品集の世界的ヒットにつづき、エルガー、ブリス、アーノルド、ジャーマン、サリヴァン、ウォルトンという、すべて名前の前に“サー”がつくイギリスの作曲家たちのクラシック・アレンジを、各地のライブラリーやバンド、楽譜出版社の倉庫などから出版・未出版の別なく掘り起こし、現代の感覚で再吟味して、そのベストをイギリスのミリタリー・バンドで作曲家別に録音するという、誰も手がけたことのない野心的なシリーズの最初の6タイトルを自身のSpecialistレーベルで発表したばかりで、この後、彼がこのシリーズをどのように展開するかは、広く世界の関心事となっていた。

 マイクは、企画中の“ホルスト作品集”に関してひじょうに慎重だった。先に発売した作曲家たちとは違い、近代ウィンド・バンド・オリジナルのルーツとして位置づけられる、ミリタリー・バンドのために書かれた一連のオリジナル作品が存在したからだ。

 この内、最も有名な『組曲第1番、変ホ長調』(1909)については、旧知の間柄から、既存の3つのバージョン(1.作曲者手稿、2.最もポピュラーなBoosey & Hawkes版、3.指揮者フレデリック・フェネルがオリジナルに基づいて校訂した同改訂版)のどれを選択すべきかについて幾度となく意見を求められた。ホルストのオリジナルは、前記フェネルの名著『ベーシック・バンド・レパートリー』(日本版:佼成出版社)でも明らかにされているとおり、作曲当時のイギリス陸軍のミリタリー・バンドの基本編成の一種である“エンゲージメント 25(Engagement 25)”と呼ばれる編成に音楽表現上必要な最少限の楽器を加えた編成で書かれていた。そして、それは、出版社の商業的判断でアメリカの大きなバンド・サイズに拡大されて出版されたBoosey & Hawkes版の楽器編成よりかなりコンパクトで、熟達したプレイヤーさえ揃えば、およそ30名強で演奏できるオーケストレーションが施された楽曲だった。この事実は重大だった。結果、我々の関心は自然と作曲者のオリジナルに向かうことになり、録音はホルストが書いた最初の手書きスコアに最大の敬意を払いながら行われることとなった。この最終判断は、もちろんプロデューサーであるマイクが下した。

 その後、ふたりの意見交換はこれまた有名な『組曲第2番、へ長調』(1911)に移った。この作品のオリジナルも、『第1番』とは使用楽器に差異が認められるものの、よく似た規模の楽器編成でオーケストレーションされており、まったく同じ理由から同様の判断が下された。

 演奏バンドには、まさにこの企画にぴったりの楽器編成をもち、小編成ながらも粒ぞろいのプレイヤーで構成されるノルウェー海軍のバンドが選ばれた。指揮者のペデルセンは、1988年以降、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団のソロ・クラリネット奏者をつとめ、2003年秋にこのバンドの首席指揮者に就任したノルウェーの誇る音楽家のひとりで、マイクとも、同バンドのCD「ノルウェー・バンドスタンド(A Norwegian Bandstand)」(Specialist, SRC122)のセッションを通じ、すばらしい信頼関係を築き上げていた。

 ペデルセンは、この“ホルスト作品集”でも、録音会場となった教会のナチュラルで美しい響きをも味方につけながら、一片の不純物さえ認められない澄み切ったサウンドと精緻なアンサンブルで、スコアのディティールの隅々までもクッキリと浮かび上がらせることに成功した。ウィンド・アンサンブル演奏の理想の姿がここにある。(つづく)

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オラフ王を称えて -
グスターヴ・ホルスト: ミリタリー・バンドのための全作品集
The Praise of King Olaf - Holst's Complete Music for Military Band

指揮:レイフ・アルネ・タンゲン・ペデルセン Leif Arne Tangen Pedersen
演奏:ノルウェー王国海軍バンド Royal Norwegian Navy Band

【曲目】

3つの民謡
Three Folk Tunes

ミリタリー・バンドのための組曲第1番 変ホ長調 作品28-1
First Suite in E flat for Military Band, Op.28 No.1

「ハマースミス」 - プレリュードとスケルツォ 作品52
Hammersmith - Prelude & Scherzo Op.52

ミリタリー・バンドのための組曲第2番 へ長調 作品28-2
Second Suite in F for Military Band, Op.28 No.2

ジーグ風フーガ(ヨハン・セバスティアン・バッハ/ホルスト編)
Fugue A La Gigue (Johan Sebastian Bach, arr. Holst)

ムーアサイド組曲(作曲者自身によるミリタリー・バンド用バージョン - 未完)
A Moorside Suite - Unfinished transcription for Military Band

オラフ王を称えて
The Praise of King Olaf - For Choir and Military Band

マーチング・ソング(「2つの無言歌」から)
Marching Song

ムーアサイド組曲(ゴードン・ジェイコブ編)
A Moorside Suite (arr. Gordon Jacob)

祖国よ、我は汝に誓う(レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ編)
I Vow To Thee My Country (arr. Ralph Vaughan Williams)

組曲『惑星』より"火星" (G・スミス編)
Mars from ‘The Planets’(arr. G. Smith)

組曲『惑星』より"木星" (G・スミス編)
Jupiter from ‘The Planets’(arr. G. Smith)

録音:2006年2月13日-17日
会場:テンスベルィ審判教会(ノルウェー)
プロデューサー:マイク・プアートン
エンジニア:マーティン・アトキンスン
CD番号:英Specialist, SRC110

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http://www.bandpower.net/news/2007/04/06_specialist/01.htm

(C)2007、Yukihiro Higuchi/樋口幸弘
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