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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第95回 岩井サウンドの原点「シティ・スリッカーズ」を観よう!

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 ブレーンから、CD『岩井直溥コレクション』Vol.1がリリースされた。毎年春に開催され秋田吹奏楽団の定期演奏会から、岩井直溥さんの指揮によるポップス・ステージの名演奏ライヴを集めたスペシャル・ディスクだ。
 いわゆる吹奏楽版の「岩井ポップス」は、EMIレーベルから年に1回リリースされる『ニュー・サウンズ・イン・ブラス』シリーズが有名だが、岩井さんは、それ以外にも、膨大な数のポップス譜(アレンジ、オリジナルともに)を発表している。が、それらは、いままで、まとまった音源となって発売されたことは、ほとんどなかった。
 それだけに、たいへん貴重なディスクといえよう。
 特に、約10分におよぶ《ボレロ》(ラヴェル原曲)は聴きものだ。
 名門・駒澤大学が、全国大会で二度目の五出五金を達成し、招待演奏となった1982年のステージのために、岩井が書き下ろした、超スペシャル・アレンジである。いままでに、駒澤大学による当日のライブ録音があっただけで、本格的な音源が商品化されたことはなかった。よって、噂だけが飛び交い、キチンと聴いたことのあるひとが少ない、半ば「幻のアレンジ・スコア」と化していたのである。
 それが今年4月、TV番組「題名のない音楽会」で、一部抜粋ながら、東京佼成ウインドオーケストラによって演奏され、大反響を呼んだ。そのスコアが、ノーカット全曲演奏で収録されているのである。岩井アレンジの真骨頂ともいえる《ボレロ》を、ぜひ、この機会に多くの方々に楽しんでいただきたい。

 ところで、その岩井サウンドの原点は、「フランキー堺とシティ・スリッカーズ」なるジャズバンドにあった。
 詳細は、BPに連載した「岩井直溥自伝」第14回第15回あたりをお読みいただきたい。岩井さんはここの専属アレンジャーとして大活躍し、後年大スターとなる「ハナ肇とクレージー・キャッツ」の原型を作るのである。先述のCDにおさめられた数々の楽しい岩井アレンジも、このバンドからすべては始まったといっても過言ではない。
 ところが、クレージー・キャッツは、TV時代の波に乗って大スターとなったが、シティ・スリッカーズのころは、まだTVが一般家庭に十分普及していなかったので、「視覚」で記憶するひとは、たいへん少ない。
 そんな「フランキー堺とシティ・スリッカーズ」を「観る」ことができる、たいへん珍しい映画が上映される。

■映画『初恋カナリヤ娘』(1955/日活/白黒/吉村廉監督/57分)
http://www.laputa-jp.com/laputa/program/nikkatsu-rare/sakuhin1.html#08 
出演:フランキー堺とシティ・スリッカーズ、岡田真澄、小林桂樹、丹下キヨ子、神楽坂浮子ほか
東京・阿佐ヶ谷の「ラピュタ阿佐ヶ谷」にて 03-3336-5440
http://www.laputa-jp.com/
10月2日(水)〜5日(土)17:00
10月6日(日)〜8日(火)13:10
一般1,200円、シニア・学生1,000円

 はっきりいって、中身は他愛のない、音楽コメディである。よって「ストーリーを楽しむ」とか「感動を求める」とか、その種のことは期待しないでいただきたい。
 それよりも、この映画は「超絶お宝映像」のオン・パレードなのである。
 岡田真澄は、これがデビュー!
 丹下キヨ子がビキニで歌う!
 《十九の春》《三味線ブギ》の神楽坂浮子も、これでデビュー!
 松竹歌劇団の大スターにして、日本初の女性映画プロデューサー、水の江滝子(ターキー)の、プロデュース第一作!
 浜口庫之助とアフロキューバノも登場!
……なんて列挙しても、若い方々には「なにそれ?」で終わりだろうが、主役の一人が、現実同様、名ドラマー役を演じるフランキー堺であり、ダンスホールのシーンで、彼が率いるバンド「シティ・スリッカーズ」が登場し、演奏のみならず、かなりのドタバタを演じるのである。この当時、同バンドには、谷啓、桜井センリ、植木等がいた(彼らもちゃんと映る。特に植木等は、マラカスを振っているところを、かなりのアップで映す。もちろん、まだ当時、植木等なんて、誰も知らない)。
 そして、クレジットこそされていないが、ここでシティ・スリッカーズが演奏するスコアは、おそらく、岩井直溥さんによるものと思われる(映画全体の音楽は、先述の《十九の春》や《勘太郎月夜唄》などの作曲で知られる、清水保雄の担当となっている)。
 TV時代以前、もはや映画フィルムの中でしか出会えない、岩井サウンドの原点「フランキー堺とシティ・スリッカーズ」を観られる貴重な機会である。ソフト化もされていないので、ここで観るしかない。ぜひ、多くの方々にご覧いただきたい。


【注1】映画の中に、岩井直溥さんご本人は登場しません(…と思います。私、過去2回観ていますが、気づきませんでした。もしも「あそこに映っていた」との発見があったら、ご教示下さい)。

【注2】「ラピュタ阿佐ヶ谷」は、定員48名のミニシアターです。完全入れ替え制で、毎朝10時15分から、その日の整理番号付き入場券が発売されるシステムです。満席・入場制限になることはあまりないので(休日に、時折あり)、上映の少し前に行けば大丈夫だと思いますが、それでも念のため、なるべく余裕をもって行かれることをお薦めします。

【注3】見慣れている方はご承知でしょうが、この時代の日本映画のプリントは、かなり傷んでいます。私が以前に観た際の記憶では、鑑賞に困難を来たすほどではありませんでしたが、それでも、決して美麗プリントとはいえません。必ず、その点を承知の上、鑑賞して下さい。

(2013.09.27)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権・公衆送信権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
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