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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第89回 JWECCのスーザ

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

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 JWECC(日本管楽合奏指揮者者会議)のカンファレンス(コンサート)が、さる3月31日(日)、東京・府中の森芸術劇場で開催された。上質なコンサート・プログラムの開拓のため、新旧さまざまな吹奏楽曲を紹介してくれる催しだ。マスランカの新作や、マッキー《翡翠》が生まれた催しとして知る人も多いだろう。いままで、地方での開催が多かったせいもあり、私も、ライヴCDでは聴いてきたのだが、ナマで接したのは初めてだった。これが、なかなか面白かった。

 午前10時から午後7時すぎまで、一コマ60〜90分くらいのコンサートが、全部で7セクション、開催される。そのほとんどが解説付きで、レクチャー・コンサートとしても楽しかった。いわば「題名のない音楽会」が、もう少しお堅くなったような感じと思えば、当たらずとも遠からずか。

 私は時間の都合で、朝から昼すぎくらいまでしかいられなかったのだが、「徹底解明 マーチ王スーザ その秘密」と題するレクチャー・コンサートが圧倒的に面白かった。演奏は、近藤久敦指揮=横浜ブラスオルケスター、解説は東京国際スーザ研究所の高橋誠一郎氏。

 高橋氏の解説によれば、スーザは、自作マーチを指揮する際、楽譜の指定とはちがう、いわば「スーザ秘伝演奏法」があったそうで、当日は、それを再現しての演奏であった。それが何なのかは、あまり詳しく書くと「秘伝」ではなくなってしまうのだが(笑)、要するに譜面上「f」や「ff」指定部分の一部を、「mp」で演奏するのである。それによって曲全体の抑揚が際立ち、全体が美しい流れになる。

 また、最終クライマックス部に入る前の「rit.」はしない(マーチは「歩く」ための音楽なので)、コーダから「D.C.」もしない(アメリカは前進あるのみ、前に戻ることはない)、なぜクラッシュ・シンバル(というか、1枚シンバルをB.D.のバチで「ベチャ!」と叩く)を使用するかなど、レクチャーも興味深かった。

 そのほか、使用スコア、楽器配置などもスーザ・オリジナルに近いスタイルが採用され、普段見たり聴いたりしているのとは、かなりちがう響きのスーザ・マーチが聴かれた。特に耳タコの《星条旗よ永遠なれ》が、ああいう響きだとは思わなかった。楽器配置は、管弦楽団とブラスバンドの中間のような形であった。

 実は私自身、この「オリジナル・スーザ」の響きにナマで接したのは、これが初めてではない。もう10年ほど前のことになるか、キース・ブライオン指揮=ニュー・スーザ・バンド来日公演を追っかけて、ずいぶん聴いたものだ。だが、あの頃は、珍しい演目や、スーザ独特のコンサート・スタイル(1曲終えるごとにアンコール・ピースを演奏する「快速アンコール」スタイル)にばかり気をとられて、演奏法などにまで気がまわらなかった。

 今回演奏されたのは《ワシントン・ポスト》や《エル・カピタン》といった名曲の他、《ギャラント・セブンス》や《セビリアの花》といった、CDでしか聴いたことのなかったマーチも含まれていた。特に、スペイン政府の委嘱ながら、スーザが父親の生誕地セビリアに思いを馳せて作曲したという後者のマーチなど、たいへん美しかった。まさにスーザは稀代のメロディ・メーカーだと感じた。

 高橋氏も「ぜひ、曲の背景などを知った上で演奏してほしい」と力説していたが、確かに、これほど曲ごとに楽しいエピソードがある作曲家も、そういないだろう(ヨハン・シュトラウスのオーケストラ・ピースも、似た感じ)。新曲を追いかけるのもいいが、こういった古典名曲をきちんと演奏し、その由来や背景を知ることも重要だと感じた。超絶技巧もいいが、マーチがちゃんと演奏できてこそ吹奏楽ではないだろうか。

 JWECCのカンファレンス(コンサート)は、特に会員でなくとも参加できるようだ。今年は4月7日に岡崎でも開催されるらしいので(ただし、東京と完全に同じ内容ではない)、興味のある方は、ぜひ行かれてはどうだろうか。

◎日本管楽合奏指揮者会議(JAECC) http://www.jwecc.net/

◎JWECC関連CD
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/c/0000001750/

◎スーザ作品関連
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/c/0000000810/

※次回は4月15日(月)前後に更新予定です。


【お知らせ】
 テレビ朝日「題名のない音楽会」(テレビ朝日系列/日曜日朝9時〜9時30分)で、岩井直溥さんの特集が放映されます。私(富樫)も、少しばかりお手伝いさせていただきました。ぜひ、ご覧ください。
●4月21日(日)「岩井直溥特集(1)」(正式題未定/岩井吹奏楽ポップスの魅力について)
●4月28日(日)「岩井直溥特集(2)」(正式題未定/ファン投票による岩井スコアのベスト10)
*放送内容が変更になる可能性があります。
*BS朝日で翌(土)(日)に再放映があります。
*詳細は、番組HPでご確認ください。http://www.tv-asahi.co.jp/daimei/index.html

(2013.04.01)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権・公衆送信権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
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