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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第85回 打楽器三昧の日々

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(不定期で更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

※しばらく休載して申し訳ありませんでした。今後、原則として第一・第三月曜日の前後に更新します。


 昨年暮れ以降、たまたま、打楽器関係のステージに多く接したので、まとめて、簡単に印象を記しておく。

●吉原すみれ パーカッション・リサイタル2012
2012年11月22日(木) 東京文化会館小ホール
<曲目>福士則夫《グラウンド》、山根明季子《ポッピキューポッパキー》、北爪道夫《クロス・トーク第1番》【委嘱初演】、ペア・ノアゴー《易経》、一柳慧《2つの次元》【委嘱初演】

 吉原すみれさんは、毎年暮れにリサイタルを開催しているが、毎回大半が委嘱新作(しかもソロ作品がほとんど)という、驚異的なプログラムである。今年も、一柳作品で山口恭範氏の賛助出演があったのみで、あとはすべて一人で、全身全霊を駆使する凄演ともいうべき熱演の連続であった。

 ここ数年、委嘱作曲家は、ベテラン陣に交じって女性の新進作曲家が起用されており、今年は京都市立芸大・大学院出身の山根明季子が登場した。すでに日本音楽コンクール1位、芥川作曲賞などを受賞している若手である。その新作《ポッピキューポッパキー》とは、赤ちゃん用のプラスチック製の玩具を駆使する曲。吉原さんは昨年も、お座敷遊びの玩具を使用した曲に挑んでおり、「打楽器」の概念をどこまで広げることができるかに挑んでいるようでもあった。両手、両足に口までをも使い、それぞれがまったくちがうリズムを同時に刻む様子は、「プラスチック製玩具」が楽器のせいか、演奏者までもがレプリカントに見えてくるような、不思議な光景ともいえた。

●第23回パーカッションフェスタ 2012冬
2012年12月26日(水) 和光市市民文化センター・サンアゼリア大ホール

 寡聞にしてこのような催しがあることを初めて知ったので、途中の一部のみであったが、行ってみた。

 これは、打楽器奏者の藤井むつ子さんが主催する、いってみれば「審査なしの打楽器アンコン」である。特に厳密な参加規定はないようで、午後2時から夕方まで、全部で28団体が、自由に打楽器曲を演奏する。中学や高校の吹奏楽部もあれば、一般団体もある。地方からの参加団体もあり、札幌大谷大学、同志社女子大学や神戸女学院大学など関西の大学生による合同グループもあった。

 また、音楽大学からの参加も多い(武蔵野音楽大学グループには、プロ和太鼓奏者のヒダノ修一氏がゲスト参加していた)。さすがに音楽大学の打楽器アンサンブルともなると、それなりの高度な音楽が披露され、なかなか聴きごたえがあった。

 打楽器アンサンブルは、管楽器に比べると、人前で演奏する機会が少ない。そのせいか、打楽器奏者たちにとっては、格好の発表の場といえる。ロビーでは打楽器業者のブースが出展されており、マレットやスティック類の販売のほか、普段、通販でなければ手に入らないような楽譜類が展示販売されていた。

 残念なのは、なにぶん、平日昼間の開催なため、聴衆が少ないこと。会場の空き具合など、様々な理由があるのだろうが(会場の交通の便が悪いせいもありそうだ)、これは打楽器関係者にとっては、まことに貴重なイベントである。もっと告知し、東京周辺のバンドで打楽器に携わっている方々に知ってほしい催しだと思った。時期的にアンコンの前哨戦、リハとして利用したってかまわないと思う。なお、大型打楽器は主催者のほうで用意してくれている様子であった。

●菅原淳 打楽器リサイタル 〜パーカションギャラリーの仲間たちと〜
2012年12月29日 (土) ヤマハホール
<曲目>ジョン・ベック《ティンパニと打楽器アンサンブルのための協奏曲》、一柳慧《森の肖像》、池辺晋一郎《ティンパニは語り、そして呼びかける》【委嘱初演】、ビゼー(菅原淳編曲)歌劇《カルメン》より
<共演>パーカッションギャラリー(岩見玲奈、大場章裕、窪田健志、柴原誠、西久保友広、野本洋介、山口大輔)

 元読売日本交響楽団ティンパニ奏者の菅原淳さんは、オケ引退後も精力的に活動を続けている。前述の吉原すみれさんと対照的に、たくさんの後輩奏者を加えて、とても賑やかなアンサンブルで楽しませてくれる。もちろんソロ曲もあって、今回は池辺晋一郎さんによる委嘱新作。ティンパニ・ソロ曲で、確かに題名通り、奏者がティンパニ群に何かを語らせようとするような曲であった。

 年末の多忙な時期にもかかわらず完全満席となった聴衆の期待は、やはり後半の《カルメン》。オペラの中の名場面・名旋律の数々を打楽器アンサンブルで再現するメドレーだが、毎回おなじみ「菅原アレンジ」はアイディア満載、ユーモアたっぷりで、打楽器が予想もしない使われ方をする。実に楽しい演奏。今回は旧作のリ・アレンジだったようだが、この路線は、次項《ローマの祭り》で大爆発することになる。

●パーカッション・ミュージアム vol.16 〜ローマの祭〜
2013年1月13日(日)浜離宮朝日ホール
<曲目>山澤洋之《大空に翔る蒼き翼を持つ者》、メイ《テーブル・ミュージック》、ライヒ《マレット・クァルテット》、北爪道夫《Double》【委嘱初演】、レスピーギ(菅原淳編曲)交響詩《ローマの祭り》全曲
<出演>パーカッション・ミュージアム(加藤恭子、木村達志、西久保友広、堀尾愛、堀尾尚男、松下真也、村居勲、横田大司、和田光世)、ゲストプレーヤー:ジョナサン・デイビッド・スカーリー(元ミラノ・スカラ座管弦楽団首席ティンパニ奏者)

 前項・菅原淳さんが1996年に結成した打楽器アンサンブル。ステージやCDが多くの賞を受賞していることでもわかるように、音楽面でも教育面でも、たいへん高く評価されているグループである。

 前半ではアンコン人気曲や、見た目にも楽しめる《テーブル・ミュージック》(3人の奏者が、卓上をこすったり叩いたりするアンサンブルを繰り広げる)、北爪道夫さんの新作などバラエティに富んだ内容で、後半では、計10人による《ローマの祭り》全曲。

 これはもう、菅原アレンジ大爆発で、最初から最後まで、目も耳も、一瞬たりと弛緩する暇もない、実に面白いひとときであった。最終コーダ部分では、歌舞伎でおなじみ「つけ打ち」までもが登場する。荒事や立ち回りのシーンで、上手端の黒子が、板で床をバシバシ打つ、あれである。いったい打楽器アンサンブルで、奏者が床に膝をついてしゃがみこみ、床を板で叩くなんて光景がいままであっただろうか! つまり前項の《カルメン》もそうだったが、菅原アレンジとは、原曲の音符をそのままどれかの楽器に移行するといった考え方ではないのである。いってみれば、一度すべてをバラバラにして、まったく新しい視点で組みなおす、「窯変」をやっているのである(陶芸で、釉薬を塗って窯で焼くと、思いもかけない色彩となって変化すること)。今回のアイディアのいくつかを、吹奏楽編曲に取り入れたら面白いんじゃないか、と思わされた部分もあった。

●アンサンブル・コンテスト東京予選〜東京都大会
<高校予選>2012年1月5日(土)〜6日(日)
<都大会>2012年2月3日(日) 共に府中の森芸術劇場にて

 今年のアンコン東京・高校の部は「293」チームが出場した(プログラム上の数字。実際には辞退が数チームあった模様。以下同)。府中の森芸術劇場内の3ホールを同時使用し、まる2日間にわたって開催される。会場ごとに編成別開催となっており、今年は、木管「149」チーム、金管「106」チーム、打楽器「38」チームが出場した(混成は、もっとも多い楽器の部門に組み込まれる)。ここから部門ごと、1日2〜3チームが推薦金賞となり、計「15」団体が都大会に進む。部門ごとの審査なので、木管・金管・打楽器の各部門からまんべんなく推薦団体が出る(特に全部門から推薦団体を出さなければならないとの規定があるわけではないらしいが)。

 私は、たまたま時間の関係で、予選の打楽器部門、都大会の高校、大学、職場・一般の一部を聴いただけなのだが、なんとなく、打楽器部門の充実がいっそう進んでいるように感じた。高校予選での打楽器部門の編成を見ると、三重奏「5」、四重奏「11」、五重奏「11」、六重奏「5」、七重奏「4」、八重奏「1」となっていた(そのうち打楽器部門も、1日1会場では間に合わなくなるかもしれない)。マリンバが数台並ぶなんてのは当たり前で、私の中学高校時代に比べると楽器の充実度は目をみはるものがある。もちろん技術面もたいへんな進歩である。木管・金管が昔ながらの編成なのに比べると、打楽器部門は格段の変化を遂げているようだ。いまや木管・金管部門と打楽器部門は、あまりにちがう音楽をやっているような気さえした。

 都大会に進んだ15チームの内訳は、打楽器「2」、木管「6」、金管「4」、木金「1」、木打「1」、金打「1」となっていた。それだけに感じることなのだが(すでに何度か述べているが)、これだけジャンルのちがう音楽を同一審査して上位2団体を全国大会に推薦するというのは、ますます無理があるように感じた。たとえばギリングハムの打8《打楽器アンサンブルのための協奏曲》と、デュファイエのクラ4《オーディションのための6つの小品》がつづけて演奏され、(比較審査するわけではないが)それぞれ審査して、どっちの点が高いとか低いとかが決まるのは、どうも妙な気がするのだ。予選段階ならまだしも、都大会ともなれば、力量も拮抗しており、私のような素人には、いったいこの2つを一緒に審査することに何の意味があるのかとさえ感じられるのだ。もちろん審査するのはプロで、ちゃんとした視点で点をつけるのだろうから、ジャンルなど関係ないのだろうが、支部大会や全国大会でも、部門別審査、もしくはそれに近いシステムが導入されてもいいのではないか、そんな気がした。

 それと、他地区ではどうかしらないが、東京・高校の場合、「1団体から2チームまで出場可能」となっており、予選→都大会の推薦も、1団体2チームとも推薦可能となっている。そのため、今回の都大会「15」チーム中、「1団体2チーム」が「3」あった。いうまでもなく、どれもおなじみ強豪校である。もしこれが「1団体1チーム」だったら、ほかに3団体(高校)にチャンスがめぐったことになる。私など、なるべくたくさんの学校に出てほしいと思っているので、このシステムも果たして最善といえるのかどうか、少々モヤモヤしながら見ていた次第である。

※次回は2月18日(月)前後に更新予定です。

【お知らせ】
3〜4月にかけて、テレビ朝日「題名のない音楽会」で、吹奏楽特集が数回、放映されます。私(富樫)も、少しばかりお手伝いさせていただきました。放映日近くになりましたら、本欄で告知しますので、楽しみにお待ちください。

(2013.0204)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権・公衆送信権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
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