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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第78回 普門館雑感(1)

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(不定期で更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

 今年もコンクール全国大会が終わった。

 今年は、いくつかの部門で、「予想を裏切る結果」となって、いまでも、ファンの間では、あれこれと「詮索」が続いているようだ。そのあたりは専門家の方々にお任せするとして、今年も普門館に行って、いくつか感じたことがあるので、とりとめないまま、綴ります(まったくの雑感ですので)。

 私が初めて普門館に足を踏み入れたのは、大学生だった1977年11月16日、カラヤン&ベルリン・フィル来日公演だった。13日から6日間ぶっ続けでベートーヴェンの交響曲全曲演奏会が開催されており(ワイセンベルクと共演するピアノ協奏曲も何曲か入っていた)その中の1日であった。私が行った日の曲目は、《運命》と《田園》だった。

 いまとなっては初印象の記憶もおぼろげなのだが、とにかく広いので驚いた。席は1階後方で、舞台上のカラヤンは遥か彼方に見えていた。音も、東京文化会館あたりで聴いていたのとはまったくちがい、何だか、遠くで勝手に演奏しているのを、こっちも勝手に聴いているような、そんな印象があった。つまり、音が自分のいるところまで飛んでこないのだ。だから、いま思い返してみても、「とにかく広くて、カラヤンも遠くにいて、何だかよくわからなかった」……が、正直な感想だった。

 普門館の落成は1970年である。私は、たまたま自宅が、自転車で行ける距離にあったので、このあたり、つまり、立正佼成会の大聖堂のあたりは、子供の頃からなじみがあった。だから、普門館が出来上がっていく様子は、当時小学生だったが、如実に覚えている。向かいにあった不思議な形状の大聖堂に対し、ずいぶんシンプルな形の建物だなあ、と思った。いまでは色褪せてしまったが、立正佼成会のイメージ・カラーである「ピンク」色が、とても鮮やかだった。

 普門館が、吹奏楽コンクール全国大会の会場に使われたのは、1972年が最初だった(全部門)。ただ、詳しい事情は知らないのだが、どうもこの年だけが特別だったようで、翌年からは、それ以前と同様、地方会場での持ち回り開催となる。普門館で恒常的に開催されるようになるのは、1977年からである(最初は全部門が開催されていたが、1980年からは、中学・高校の部のみの会場となる)。

 いま記録をひっくり返してみると、普門館における1977年の全国大会は、11月4日(金)〜6日(日)となっている(全部門)。そして、カラヤン&ベルリン・フィルが13日〜18日。つまり、1977年11月の普門館は、吹奏楽コンクール全国大会が開催され、ほとんど間をおかず、カラヤン&ベルリン・フィルによる、ベートーヴェン交響曲全曲連続演奏会が開催されていたのである。「日本一」と「世界一」が立て続けに普門館のステージで展開したわけだ。

 当時私は、もちろん吹奏楽部に所属してブンチャカドンチャカやっていたが、これもまた記憶がおぼろげで、この年の普門館の全国大会には行っていないようだ。直後のカラヤン公演で「初めて普門館に入った」と認識しているのだから。

 しかしとにかく、このカラヤン以後、普門館には、コンクール全国大会や都大会などで、数え切れないほど通って、よくいわれる「響きがよくない」を何度となく実感してきた。1階の真ん中前方あたりに座ると、スネアドラムの「響き線」の残響だけが背後から一瞬遅れて聴こえてくるようなこともあった。まあ、普門館は、もともと音楽ホールではないのだから、そういうことを期待するほうがいけないのだが。

 そのため、かつては、普門館での全国大会を目指すような団体は、とにかく「大きな音」を求めたものである。「そんなことじゃ、普門館の隅まで聴こえないぞ!」をスローガンにしていた指導者もいた。

 その後、「爆音」ばかりの吹奏楽はいかがなものかとのムードになってきて、今では、大きな音ばかりが売り物の演奏は減っている。しかしそうなると、やはり「響きのよくない」会場なので、かつて私がカラヤン公演で感じたような、少々もどかしい思いをしながら聴くことになる。

 ところが今年、初めて2階の最後方席に座り、意外とキチンと音が聴こえてきたので驚いた。2階最後方席は、ほとんど天井に手が届きそうな、文字通り「天井桟敷」なので、音がすぐ頭上で跳ね返って、降ってくるような感じで、かえってよく聴こえるのだ。

 私は、若い頃、ニューヨークのカーネギー・ホールに何回か行ったことがあるのだが、その中の一つ、小澤征爾&ボストン響の演奏会を思い出した。同ホールは音響の素晴らしさで知られるが、そのときはまともなチケットが残っておらず、最上階席だった。まるで、ステージを真下に見下ろすような席で、高所恐怖症だったら、耐えられなかっただろう。

 曲はメンデルスゾーン《夏の夜の夢》全曲で、某シェイクスピア俳優による、朗読つきだった。なんと、その俳優の、囁くような小声が、キチンと最上階にまで響いてきたのだ(PAなしだった)。それどころか、静寂の箇所で、ティンパニ奏者がバチをそっと台に置いた、その音までもが、かすかに聴こえたのである。それこそ、すぐ頭上の天井で音が跳ね返って、上から降ってくるような感じだった。

 そんなことを思い出しながら、今年の全国大会(高校の部)は、2階のいちばん後ろ、天井桟敷で聴いていた。「普門館は、天井桟敷にかぎるなあ」なんて考えながら。
(つづく)

(2011.11.09)


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