吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー
【コラム】

富樫鉄火のグル新
第77回 ややこしいコンクール

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(不定期で更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

 いよいよコンクール全国大会である。今年も数々の名演が繰り広げられると思うが、特に、震災の被災地域から出場される団体には、心から声援を送りたいと思います。

 ところで、全国大会があるということは、いうまでもなく、その前に「予選」(地区大会)、「県府大会」「支部大会」があるわけで、私も、仕事柄、毎年、7〜9月は、可能な限り、通っている。時折、全国大会よりも面白いと思う曲目や演奏に出会うこともある。ここ数年、身体をこわした関係で、一時期ほどではないが、それでも今年も、東京とその近県で、約200団体ほどの演奏を聴いた。

 で、これら「予選」で気になったことを、メモランダムがわりに、記しておきたい。

 これは、東京の「高校の部」の予選でのケースなのだが、今年から、参加部門が、A組、BT組、BU組、C組の4部門になった。

 いままでは、A組=普門館の全国大会を目指す組、B組=東日本学校吹奏楽大会を目指す組、C組=上位大会のない組……という区分けだった。それが、今年からB組が2つに分かれたのである。

 東日本学校吹奏楽大会とは、北海道・東北・東関東・西関東・東京都・北陸の6支部によって開催される、小編成(30名以内)対象の大会である。いまのところ、全日本吹奏楽連盟が主催する全国規模の小編成大会はないので、これが、事実上、小編成の最上位大会ということになる。

 で、今年度から分かれたこの4つの組に、いったい、どういう違いがあるのか。

A組(55名以内)=普門館の全国大会を目指す。ここに参加すると、同一校からBU組に同時参加はできない。BT組との同時参加は可能。
BT組(35名以内)=上位大会なし。ここに参加すると、同一校からBU組に同時参加はできない。A組との同時参加は可能。
BU組(30名以内)=東日本大会を目指す。ここに参加すると、同一校からA組・B1組に同時参加はできない。
C組(20名以内)=上位大会なし。

【注】上記の「人数」は、東京都高等学校吹奏楽連盟ウェブサイト上で発表されている実施規定だが、今夏の予選会場で販売されたプログラムに記載された実施規定だと、BU組は「30名以内」ではなく、「35名以内」と記載されている(どちらかが誤植かもしれない)。ちなみに、東日本学校吹奏楽大会は、今年度から「30名以内」となった。

 ちょっとわかりにくいかもしれないが、要するに、事実上、2チームを送り込んでくる大人数の強豪校に対し、「普門館か東日本か、どちらか一つに絞りなさい」と言っているのである(同一校からの参加は2チームまで)。

 大人数の強豪校は、2チームで、毎年、A組(普門館行き)もB組(東日本行き)も上位を占めてしまうという現象が続いていた。もちろん、A組(普門館行き)の学校からは、同時に東日本へは行けないようになっていたのだが、それでも、とりあえずは同じ土俵の上で競うわけで、以前より、少人数の学校から「アリが巨象に挑むようなもの」との声があがっていた。

 そこで、今年度から、このような措置になったようなのである。

 かくして、A組で普門館を目指す強豪校の、もう一つのチーム(小編成)は、BT組に参加するしかなくなった。ということは、逆に、BU組には、普門館で名前を見るような強豪校はいないはずで、東日本を目指す目指さないにかかわらず、少人数の学校は、BU組に参加すれば、「巨象」と真正面から戦わずにすむはずである。ゆえに、今年度は、「巨象」を避ける小編成団体がBU組に殺到すると思われた。

 ところが、フタをあけてみれば、参加チーム数は、

A組……79チーム
(東京支部大会行き12団体)
BT組……71チーム
(最優秀賞:八王子、都立片倉、都立小山台)
BU組……71チーム
(東日本行き:國學院大久我山、都立八丈、都立上水)
C組……71チーム
(最優秀賞:都立片倉、東海大高輪台)

 と、なぜかきれいに4分割となった(東京都高校吹奏楽連盟の加盟校は、今夏時点で「300」校)。つまり、「上位大会もない、しかも強豪ばかりがひしめいているBT組」に、予想以上の小編成団体が殺到したのである。

 これには、私も少々驚いた。

 もちろん、BT組が35名以内、BU組が30名以内なので、少しでも多くが参加できるBT組に行ったとも考えられる。

 ところが、私がいくつかの学校の生徒や顧問から直接聞いたところによれば、今年度からの組分け変更の意味が、あまり現場に周知徹底されていない面も、少なからずあったようなのだ。つまり「BT組は東日本を目指さない」「BU組は東日本を目指す」ことばかりが伝わってしまい、その結果、「うちはどうせ、東日本大会に進めるほどの腕前じゃないから、BT組でいいんじゃないか」程度の認識で、BT組に参加した学校が、実際にけっこうあるのだ。

 ところが彼らは、本番近くなって、BT組の参加団体名を見て驚いた。何しろ、八王子、都立片倉、都立小山台、東海大高輪台、駒澤、東海大菅生、都立杉並といった、全国大会レベルの学校がゾロゾロ出ているではないか。「巨象」だらけだ。これでは、A組と同じじゃないか。彼らはあくまで普門館が第一目標だから、まずはA組に出る。となると、必然的に東日本を目指すことはできないわけで、もう1チームはBT組に出るしかなかったのだ。となれば、BT組の金賞は、彼らが独占するに決まっている……ここで初めて、いくつかの学校は、巨象との対決を避けるのであれば、BU組に参加すべきだったことに気がついたようなのだ。

 もちろん、こんなことは、顧問や部長が、事前の説明会でキチンと話を聞いて、理解しておくべき話だ。だから、もし後悔しているとすれば、その責任は、ひとえに顧問教員にあるといっていい。

 だが、たぶん、以上の私の説明を読んでも瞬時に理解できないひとがいるはずなのと同様、これは、なかなかややこしい話でもある。それこそ、コンクールが年間の最大目標になっているような団体は別だろうが、それほどでもない吹奏楽部のほうが、実際は多いのである。吹奏楽界は、「巨象」団体だけで動いているわけでは、ないのだ。

 そして、いったいコンクールは、なぜ、こんなややこしいことになってきたのかとも思う。「吹奏楽人気の高まり」「団体数の増加」に対し、「小人数」団体は、さらに増えている。私の知己の指導者の中には「アンコン(8人)と、コンクール小編成部門(20〜30人)との、中間くらいの編成のコンクールを開催してほしい」などと、わがままというか涙ぐましいというか、そんな要求を掲げる人もいる。「小編成の全国大会」の必要性を求める声もあるが、「ものすごい参加数になるはずで、物理的に不可能」と、よくいわれる。

 突然、妙な例を出して恐縮だが、私は、最近、国立劇場で、音羽屋(中村菊五郎)一座の『開幕驚奇復讐譚』と題する歌舞伎を観た。曲亭馬琴の伝奇小説に基づく新作初演である。これを観ながら、「吹奏楽コンクールの東京・高校予選に似ているな」と思った。

 つまり、参加団体(観客)の要望に応じて、「多くの団体(観客)に公平に」の精神で、コンクール(歌舞伎)を運営(創作)したため、かえってややこしい規定(物語)になってしまい、一部が置き去りにされてしまっているような……そんな気がしたのである。
もしかしたら、来年か再来年には、また別の部門が誕生しているのではないか。それが吹奏楽界にとって、いいことなのかどうか、道楽者の私などには、何ともいえないのだが。

(2011.10.20)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権・公衆送信権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
jasrac番号吹奏楽マガジン バンドパワー