吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー
【コラム】

富樫鉄火のグル新
第76回 ≪ディスコ・キッド2011≫

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(不定期で更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

 いままで、少人数の学校吹奏楽部の顧問が「文化祭で≪ディスコ・キッド≫をやりたいんですけど、うちではとても無理で……」とぼやいているのを、何度か聞いてきた。
 理由は、ほとんどが「少人数なので迫力ある音が出ない」「調性が難しくて、初級バンドには難しい」「ドラム・セットがない(奏者がいない)」のどれかであった。

 このうち「ドラム・セットがない」のは、これは、購入するか借りるかして練習すれば何とかなるだろうが、最初の2つ、つまり「編成」「調性」の問題は、通常の学校吹奏楽部のレベルでは、簡単に対応しにくい問題であった。

 ≪ディスコ・キッド≫は1977年のコンクール課題曲であるが、当時、ディスコは「不良の温床」であり、現に、新宿・歌舞伎町では「ディスコ殺人事件」などが発生していただけに、学生だった私は「ホントにこんな曲を、コンクールで演奏してもいいのかねえ」と、ビクビクしたものだ。

 それがいまや、課題曲の枠を超えたスタンダード曲になっていることは、説明するまでもない。初めて聴いた中高生が「演奏してみたい」と思う気持ちは、よくわかる。
 だが「編成」「調性」の壁に、多くの小編成・初級バンドは、あきらめていたのが現実だと思う。

 ところが、この春、全日本吹奏楽連盟から発売された楽譜セット集『楽しい吹奏楽T』に含まれている≪ディスコ・キッド2011≫では、上記の問題が一挙に解決されているので、簡単にご紹介しておきたい。

 まず「編成」だが、以下のようになっている。

フルート1(ピッコロ)/B♭クラリネット1〜3/アルト・サクソフォン1・2/テナー・サクソフォン/バリトン・サクソフォン/トランペット1〜3/ホルン1〜3/トロンボーン1〜3/ユーフォニアム/テューバ/ティンパニ、スネア・ドラム、クラッシュ・シンバル、ザイロフォン、グロッケンシュピール、ドラムス
【オプション】フルート2/オーボエ/バスーン/Esクラリネット/バス・クラリネット/弦バス

 おおよそ20数人程度から演奏できそうだ。有名なイントロのピッコロ&Esクラの部分は、フルート1ソロとB♭クラ1ソロで代行できるように書かれている。ラスト近く、ユーフォの高音の対旋律はオクターヴ低く書かれている。そのほか、オリジナルにはなかった楽しい対旋律が、いくつか追加されている。
 ちなみに曲の尺=小節数は、オリジナルとまったく同じで、B♭クラのアドリブ風ソロも、そのまま残されている。

 次に「調性」だが、本来この曲は3つの調性が登場し、「C→Es→C→Des」と転調する構成であった。
 つまり、パート譜で、記譜上の調号は、こうなっていたわけだ。

【C管】 調号なし→♭3個→調号なし→♭5個
【B♭管】♯2個→♭1個→♯2個→♭3個
【F管】 ♯1個→♭2個→♯1個→♭4個
【Es管】♯3個→調号なし→♯3個→♭2個

 確かに初級バンドにとっては、やっかいな部分が多いかもしれない。音域も全体的に高めの部分が多かった。
 だがこの曲は、本来が「課題曲」なのだから、文字通り「課題」としての「♭だらけの譜面」や「転調」「高音」をこなすことは、それなりに意味があったのである。
 だがいまこの曲は「課題曲」ではない。なにも苦労して演奏することもないではないか……というわけで、今回の改訂版は、ガラリと「B→Des→B→C」に移調されているのだ。

 よってパート譜の記譜上の調号は、以下のようになっている。

【C管】 ♭2個→♭5個→♭2個→調号なし
【B♭管】調号なし→♭3個→調号なし→♯2個
【F管】 ♭1個→♭4個→♭1個→♯1個
【Es管】 ♯1個→♭2個→♯1個→♯3個

 さんざんオリジナルを演奏してきた団体には、違和感のある改訂かもしれない。だが、これから取り組もうという、特に初心者が多い中学校あたりの小編成バンドには、たいへん演奏しやすい、そして楽しい譜面だと思う。

 この楽譜セット『楽しい吹奏楽T』には、ほかに、櫛田てつ之扶≪東北地方の民謡によるコラージュ2011≫、杉本幸一≪カーニバルのマーチ2011≫を含む、過去の人気課題曲の小編成改訂版が計3曲と、後藤洋による委嘱新作≪ア・ソング・オブ・ホープ≫の、計4曲が収録されている。
 この後藤洋の新曲などは、リズムやフレーズの基礎を身につけるのに最良のテキストにもなりそうだ。

 4曲とも小編成向けで、フルスコアとパート譜のほか、デモCD(演奏:大阪府立淀川工科高校、埼玉県立伊奈学園総合高校)も付いている。
 これでたった3,000円である。もし購入後、使用の機会がなかったとしても、さほど問題になる金額ではないだろう。

 私は、本稿を、発行元やその周辺の誰かに頼まれて書いたわけではない。たまたま全日本吹奏楽連盟のウェブサイトを見ていて知り、さほど高額商品でもなかったので、自分で取り寄せてみたのである。
 そして、せっかくこういうものを発行しているのに、あまりアピールされていないようなので(私が気づかなかっただけかもしれないが)、少々お節介気分になって紹介した次第である。
※敬称略

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

※『楽しい吹奏楽T』は店頭販売されていません。全日本吹奏楽連盟に直接申し込んで入手してください。
http://www.ajba.or.jp/tanoshii.htm 

(2011.09.26)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権・公衆送信権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
jasrac番号吹奏楽マガジン バンドパワー