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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第64回 ツイッター発、素朴な疑問

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(不定期で更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

 先日、ツイッター上で、偶然、以下のような2件のつぶやきを見かけた。

「1.オーケストラ、2.ウィンドオーケストラ、3.吹奏楽、4.ブラスバンド、の違いが分からない。特に1と2、2と3、3と4は説明できない」

「オーケストラ(管弦楽団)とブラスバンド(吹奏楽団)の違いは つまるところ、弦楽器があるかないか、なの?? 」

 BP読者にとっては説明するのもバカバカしいだろうが、しかし、吹奏楽界の中にいないひとにとっては、確かに素朴な疑問かもしれない。吹奏楽に携わっていると、つい、リードだのスパークだの、また、原調がいいだの悪いだの、「ダフクロ」だの「エルザ」だのと、隠語みたいな会話を交わしてそれが当然だと思ってしまうが、実は、そんなひとたちは、この世の中で、ほんの少ししかいないのである。

 で、何気なく、上記2件のツイートを、たいした意識もなくRTしたのだが、朝、iPhoneを開いて仰天した。私のRTに対するREや再RTが、数え切れないほど入っている。

 しかも、多くはコメント付きで「私も説明できません」「え? 吹奏楽とブラスバンドってちがうの?」だの、元ツイートに同調する内容ばかりなのである。

 そこで、あらためて私なりに(専門家向けでもなく、教科書的にでもなく)定義してみるので、「それでもわからない」「もっといい説明の仕方がある」という方は、BP編集部までご一報ください

(1)管弦楽(団)=オーケストラ……弦楽5部を中心に、管楽器と打楽器を加えて構成された形態。いわゆるクラシック音楽の世界で演奏されるレスピーギやラヴェル、ドビュッシーの「管弦楽曲」は、この形態のために書かれている。

(2)吹奏楽(団)=ウインド・オーケストラ、ウインド・バンド、ウインド・アンサンブルなど……木管楽器・金管楽器・打楽器の3群が、ほぼ拮抗する存在感で構成された形態。弦楽器は、低音管楽器を補強するための弦バス(コントラバス)数本以外は、加わらない(ただし海外にはチェロを加える吹奏楽スタイルもある)。スーザのマーチやアルフレッド・リードの≪春の猟犬≫≪アルメニアン・ダンス≫などは、おおむね、この形態のために書かれている。日本で「吹奏楽」といった場合は、ほぼこの形態だと思って間違いない。なお、この「吹奏楽」形態で、上記「管弦楽曲」がよく演奏されるが、それは、吹奏楽用に、あらためて「改訂編曲」された楽譜を使用するのであり、「管弦楽曲」をストレートに吹奏楽で演奏しているわけれはない。

(3)ブラスバンド(金管バンド)……主としてイギリスを中心とする、ヨーロッパで盛んな形態。職場労働者バンドが多い。広い意味で、「吹奏楽」の中の一種であるといえなくもないが、それにしては、吹奏楽とはあまりにちがう響きである。コルネット、ホーン、トロンボーン、ユーフォニアム、テューバ、打楽器で構成される。吹奏楽よりずっと少人数。木管楽器やトランペット、ホルンは使わない。映画『ブラス!』に出てきたのは、この形態である。全英や全欧ブラスバンド選手権の熱狂は、BP読者ならば、サイト上の各種レポートでご存知だろう。日本では小学校でさかんな形態だが、小学校のブラス(金管)バンドの編成は、上記イギリス・スタイルとはかなりちがう。

 なお、「ブラスオルケスター」なる呼称があるが、これはドイツ語で「吹奏楽(団)」=上記(2)のこと。ドイツ語の「ブラス」は「吹く」の意味で、「金管」のことではない。だから「ブラスオルケスター」は「金管楽団」ではない。

 さて、よって、「吹奏楽」を「ブラスバンド」と称するのは誤りであり、その略称「ブラバン」も、誤りなのである。よく「昔から日本では慣習的に吹奏楽をブラスバンドと称してきた」なんて説明があるが、そんないいわけのような説明をする以前に、その慣習自体が誤りであったことをもっと知らしめ、徹底させるべきである。これは、私や学校の先生も含む、全吹奏楽関係者の「使命」「義務」である。もし、外部のひとが、吹奏楽のことを「ブラスバンド」とか「ブラバン」と呼んだら、面倒かもしれないが、その場ですぐに、誤りであることを説明するべきだ。そうしないと、いつまでたっても吹奏楽は「ブラバン」呼ばわりされたままになってしまう。

 いまの若い方はあまり感じないようだが、私のようなオヤジ世代は、吹奏楽を「ブラバン」と呼ばれると、猛烈に腹が立つ。昔、「ブラバン」には、学校吹奏楽部を揶揄するニュアンスがあったのだ。放課後、校庭で野球やサッカーに汗を流している生徒が(そして、それこそが学園生活の主流だと思い込んでいる生徒が)、校舎のどこかから漏れてくる吹奏楽部の音を聴いて「毎日毎日、ブンチャカドンチャカと、うるせえ奴らだ」と感じた、その思いが「ブラバン」に結実しているのだ。

 現に、作曲家・小山清茂(2009年没)は、1971年に「ブラバンなどという妙な言葉が持つへんてこな雰囲気」(をなくそう)と書いている。まさに筆者が中学で吹奏楽にかかわり始めた時期の記述だが、当時私が入っていた吹奏楽部も、確かに周囲から「ブラバン」と呼ばれていた。小山の記述は、このころにはすでに「ブラバン」なる語があり、「へんてこな雰囲気」と感じているひとがいた証左である。

 よく「ブラバン○○」なるCDがあり、私のもとへもライナー執筆の依頼が時折くる。てっきり中身が「ブラスバンド」なのかと思いきや、聴けば「吹奏楽」ではないか。最初は、「誤称がタイトルに使われているような商品には書きたくない」と意地を張っていたのだが、あまり偉そうに頑張っていると、楽譜出版社や演奏団体などの関係者に迷惑がかかることがわかり、いまでは書いているが、それでも、私の原稿の中では、絶対に「ブラスバンド」「ブラバン」は使わない。だって、吹奏楽とブラスバンド(ブラバン)は、まったくちがうのだから。

 では、なぜ日本で、「吹奏楽」と「ブラスバンド」は、ごちゃ混ぜになってしまったのか。私ごときの説明よりも、大阪発・樋口幸弘センセの解説をお読みください。目からウロコが落ちまっせ〜 → http://www.bandpower.net/soundpark/05_olaf/13.htm

 

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.07.06)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
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