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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第60回 大合唱付き≪アフリカン・シンフォニー≫

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(週2〜3回更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

 たいへんなものを、観て、聴いた。生きててよかった。大合唱付きの≪アフリカン・シンフォニー≫である。前回につづいてまたも「合唱+吹奏楽」の話題はどうかとも思ったが、やはりこれは、多くの方々に知っておいてほしい話題だ。

 6月5日(土)、東京の文京シビックホールで開催された、佐渡裕指揮、シエナ・ウインド・オーケストラ公演「VIVA! NIPPON 吹奏楽と合唱の祭典」でのことだった。

 この日のコンサートは、ワールド・カップ開催にちなんで、サッカーをめぐる音楽が中心だった。シエナWOが文京シビックでコンサートを開催するのは初めてである。会場が変われば聴衆も変わるもので、明らかに、いままでの、横浜みなとみらいホールや、池袋の東京藝術劇場とはちがい、年輩の方も多い、ファミリー層が中心だった。もちろん、完売満席であった。

 で、前半は、サッカー応援音楽のメドレーや、坂本龍一作曲・伊藤康英編曲によるド迫力公式アンセム≪日本サッカーの歌≫などが演奏されたのだが(実はこのスコア、シエナが初演録音した)、後半が、晋友会合唱団も加えての「合唱+吹奏楽」だったのである。

 ≪エルザの大聖堂への入場≫が、原曲どおり合唱付きで演奏されたり、この日のために狭間美帆が編曲した≪家族写真≫(森山良子)、≪旅立ちの日に≫≪巣立ちの歌≫などがつづいた。最後はおなじみ≪大地讃頌≫で、これは客席の聴衆にも歌えるひとが多かったようで、たいへんな盛り上がりとなった。

 先週は、神奈川県立弥栄高校合唱団との共演で、若者の美しい澄んだ声に癒されたが、今回は、安定した大人の声である。それぞれに味があって、あらためて「合唱+吹奏楽」は、なかなかいいものだと感じた。

 で、問題はアンコール数曲のうちの1曲なのだが、なんと、≪アフリカン・シンフォニー≫(岩井直溥編曲)が、「合唱付き」で演奏されたのである。

 これには、心底、仰天した。心臓が止まるかと思った。吹奏楽だけでも生半可な迫力ではないのに(特に佐渡&シエナの演奏は!)、そこへ、大合唱団が加わったのである。

 もちろん合唱は「歌詞」があるわけではなく、おおむね、主旋律を「Aaaa」の混声ヴォカリーズで、しかも大音声で歌うのだが、これほどドンピシャとは思わなかった。ほんとうに、アフリカの大地が目に浮かぶようだった。その大迫力に、文京シビックの壁がビリビリ鳴っているような気さえした(映画『沈まぬ太陽』で使えばよかったのに!)。ホルンなどは、プロ・コンサートではめったに見られないほどの高さにまでベルアップし、強烈な雄叫びをあげていた。客席はスタンディング・オベーション続出で、このような光景を吹奏楽コンサートで見たのは久しぶり……いや、初めてだったかもしれない。

 合唱スコア編曲は、≪風之舞≫でおなじみ、福田洋介。仄聞するに、急きょ決まった企画だけに、短時間での作業だったそうだが、よくぞやってくれたと思う。

 果たして、この「合唱スコア」が、一般でも入手できるようになるのかどうかは知らないが、今後、大人数の合唱団と吹奏楽団が、何かのフェスティヴァルなどで共演する機会で、取り上げられるようになったら、どんなに楽しいだろう。

 先週から始まった「合唱+吹奏楽」ブーム(?)は、佐渡&シエナのおかげで、早くもピークに達したような気さえした。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.06.08)


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