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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第54回 豊島区吹≪銀河鉄道の夜≫

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(週2〜3回更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

 私も、仕事柄、プロ・アマ問わず、いろんなコンサートへ行くが、アマチュア・バンドで、ここまで完成度の高いステージを観たのは初めてだった。5月2日、東京芸術劇場における、豊島区吹奏楽団(http://toshimawo.exblog.jp/)の「Spring Concert 2010」である。

 前にも書いたが、私は豊島区民なので(当日、開幕に演奏された≪アトミッシュ・フローリッシュ・ファンファーレ≫の作曲者・鈴木英史氏も豊島区在住デス)、昔からこのバンドが好きで、当日も、予備知識なしでフラリといったのだが、呆気にとられてしまった。正直にいえば、「アマチュアがそれらしくやる、学園祭レベルのものだろう」とタカをくくっていたのだが、とんでもなかった。ごめんなさい。これを入場料1,000円で見せるとは、驚くべきことである。

 実はこの日の内容は「鉄道特集」で、前半は、ウィテカー≪ゴースト・トレイン≫や、スパーク≪オリエント急行≫など、おなじみの曲が演奏されたのだが、後半が、問題の、ミュージカル≪銀河鉄道の夜≫だった(脚本・演出=中島透、音楽=西村友、協力=劇団ひまわり・砂岡事務所)。

 私は初めて知ったのだが、もともと劇団ひまわりで舞台化されていたミュージカルだそうで、それを、今回、作曲者の西村友(豊島区吹指揮者)自ら、吹奏楽版にアレンジして演奏会形式での上演となったようだ。主要出演者は、プロの俳優兼歌手、コーラスは劇団ひまわりである。

 なにぶん、会場が、オープン構造の本格的コンサート・ホールなので、いくら歌手たちがPAを使用しても、音が散ってしまい、フル編成バンドとのバランスに時折イライラしたが(バンドのトゥッティになると、歌手たちが何をいっているのかわかりにくい)、それを割り引いても、とにかく素晴らしい内容だった。

 音楽もわかりやすくて楽しく、歌手たちの歌唱やちょっとした演技も素晴らしかった。ジョバンニ(石川由依)とカムパネルラ(熊本野映)の、ラスト近くの歌には、ホロリときた。終演後、原作本を読んでみたいと話していた若い子が周囲にいたが(読んだことないとは!)、ほんとうに、そんな気分にさせられる内容だった。

 確かに、プロの手が入ったステージではあったが、バンドは社会人のアマチュアである。90分近く、ほとんど休みなしで、吹いて叩き続けた豊島区吹のメンバーには、大喝采を送りたい。私も若いころはバンドにいたから、あれがいかにたいへんなことか、よくわかる。全体を見事にまとめた作曲・指揮の西村友ともども、ほんとうに、よくやってくれた、としかいいようがない。

 これは(そう簡単にはいかないだろうが)、十分、再演に値するステージである。同時に、どこかのプロ・バンドがそのままやっても、立派な興行として成り立つ内容である。いや、プロ・バンドには、この豊島区吹を見習っていただきたいほどだ(客席だって、1・2階、ほぼ、満席だったのだから)。吹奏楽を一般に膾炙させるには、こういう方法もある、そのことを、豊島区吹は、見事に提示していると思う。コンクールばかりが吹奏楽ではないのだ。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.05.05)


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