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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第50回 おめでたいひと

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(週2〜3回更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

 上海万博のPRソングが、どう聴いても岡本真夜の曲のパクリだと報じられて騒ぎになった。私もさっそくYOUTUBEで確認してみたが、確かに「似ている」のレベルを超えて、ほとんど「そのまま」だった。

いまでは「岡本真夜」「上海万博」のキイワードで、ゾロゾロ出てきます

 【第34回】『アバター』、【第41回】「冬ソナ」につづき、また「パクリ」の話題か……と思っていたら、事態は、思わぬ方向に進んだ。

 なんと中国側が、岡本真夜に対し、正式に楽曲使用を申し込んだのである。

 これに対し岡本側は「とても素敵なお話で、光栄です」と快諾したそうだ。おかげで岡本の好感度は急上昇し、中国でも「気前がいいひと」「素晴らしい」と大歓迎。13年前で出た「原曲」である≪そのままの君でいて≫がリバイバル・ヒット。まさに「パクリ特需」である。

 突如、すべてがまるくおさまって、「パクリ騒動」は「美談」に変貌したわけだが、これでいいのだろうか。

 たとえば、ある有名演奏家が、店頭から万引きした楽器で演奏していることが発覚し、「彼の楽器は、○○楽器店にあったのを万引きしたものじゃないか」と指摘されたとする。すると本人が、悪びれた様子も見せず、堂々と楽器店を訪れ、新人アルバイト店員を相手に、謝りもしないで「いやいや、ちゃんと代金は払うから」と、少し多めに現金を置いていった。楽器店の若い店員たちは、有名演奏家があらわれたことがうれしくて「光栄です。ありがとうございます。なんて素敵なお話でしょう」と頭を下げる。

 今回の事態って、こういうことじゃないのか。要するに、大国・中国の前で、初心(うぶ)な日本が、いいようにされただけじゃないのか。

 誰か、楽曲提供を許諾する前に、ちゃんと、犯罪行為についてハッキリさせろと怒る人間は、いなかったのか。岡本真夜、ほんとうに、これでいいのか。私には、あなたが、「素晴らしいひと」ではなく、単なる「おめでたいひと」にしか見えないのだが。

※早くも連載「50回」。まことに「おめでたい」ことで、BP編集部はなんと「気前がいいひと」たちなのでしょう。私も「光栄」です。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.04.22)


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