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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第49回 東京ウインド・ヒーローズ

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(週2〜3回更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

 東京文化会館なう。4月17日(土)、新たなプロ・バンドのデビュー・コンサート。

 吹奏楽団の名称は、多くが、英語の「〜ウインド・オーケストラ」「〜バンド」、ドイツ語の「ブラス・オルケスター」、日本語の「〜吹奏楽団」あたりがほとんどだが、この手があるとは思わなかった。その名も「東京ウインド・ヒーローズ」(TWH)である。

 彼らは、すでに2枚のCD『ウルトラマン・オン・ブラス』『同2』をリリースしている「科学特捜隊ブラスバンド・クラブ」の別名称であり、指揮も、CDと同じ矢澤定明だ。

 当初は、録音用の臨時編成バンドだったが、CDの売れ行きもよく、これだけで終わらせるのはもったいないとのことで、「TWH」と名前を変え、半常設バンドとしての活動をスタートさせたようだ。約30人の中編成で、メンバーは、全員が、東京芸大の卒業生である。

 「ウルトラ」シリーズの音楽を演奏するために結成されたバンドなので、当日の曲目もそれらが中心だったが、まず前半は、「名曲アルバム」と題して、バッハやショパンなどが演奏された。さすがに芸大メンバーだけあって素晴らしい演奏だったが、中でも(おそらくこの日のために準備されたと思われる)ビゼー≪カルメン≫〜<ジプシー・ダンス>(石毛里佳編曲)は、Trp3本をフィーチャーした、たいへん楽しいスコアで、ルロイ・アンダーソン≪ラッパ吹きの休日≫をこなせるバンドなら、ぜひレパートリーに加えるべきである。

 さらに、同じ石毛編曲の、バッハ≪トッカータとフーガ ニ短調≫は、30人編成用だけあって、個々の奏者にかなりの高レベルを要求する内容だったが、これもまた、小中編成バンドに光明を投げかける試みだったと思う。

 で、目玉の後半である。≪ウルトラセブン≫≪ウルトラマンタロウ≫など、CDでもおなじみの旋律が続々演奏されるのだが、私が仰天したのは、≪ウルトラQ≫のテーマであった(宮内國郎作曲/福田洋介編曲)。「ウルトラ」シリーズ、唯一の「インストゥルメンタル」主題曲である。

 これをCDで聴いたときは「スタジオ収録で、CD用に加工された音」だと思っていたので、ナマで(しかも文化会館の、あの大ホールで)演奏するなんて、ちょっと無茶ではないかと思っていたのだが、なんと、かつて私が小学生時代、毎週TVで観ていたときの、あの響きのままなのだ。フルートの不気味な旋律も、そのままではないか。ほんとうにゴメスが出てくるかと思った。

 これはもう、福田洋介の編曲魂の勝利である。口の悪い者は「あれは、編曲じゃなくて、トランスとかコピーだ」というだろうが、そうではない。これは明らかに「あのとき、TVから聴こえてきた響きを、中編成吹奏楽で再現した」もので、見事な「編曲」である。しかも「加工した音」ではない。目の前で、ナマで演奏されているのだ。

 そのほかの曲、たとえば≪帰ってきたウルトラマン≫しかり。≪ウルトラセブン≫に至っては、番組冒頭ロゴのBGMから始める徹底ぶりである。つまり、この矢澤定明=TWHは、「TVで聴いた響きを吹奏楽で甦らせる」一流バンドなのである。その意味で、従来のプロ・バンドとは、まったく方向性も意味合いもちがう。このバンドに、リードとかスパークとかデ=メイとかを期待してはいけない(もちろん、やれば素晴らしい演奏をするだろうが)。

 それゆえ、そのお披露目が、東京文化会館だったことは、なんだか、素晴らしいような、かえって不似合いだったような、不思議な後味であった。

 彼らのレパートリーは、まだまだある。私の世代が随喜の涙を流す≪科特隊の歌≫≪ウルトラ警備隊の歌≫は、ついに演奏されなかった。間違いなく、次の機会にとってあるのだ。頼む! 早く第2回コンサートを開いてくれ! 無理して文化会館のような立派なところでなく、もっと小ぶりなホールでいいから。

 なお、後半、指揮の矢澤定明は、なんと、「科学特捜隊」の制服で登場した。ご本人もいっていたが、日本を代表するクラシックの聖堂に、あのような服装で立った指揮者は、彼が初めてだろう。

 ラストでは、ステージに、ウルトラマン本人が登場した。M78星雲から、このコンサートのためだけに来たようで、たいへんだったろう。私は、生きているウルトラマンを、あんな間近で見たのは初めてだったが、これほど美しい生きものだったのかと、感動した。TVで見ていた彼は、外見も痛んでいて色艶が悪かった。だが、いまでは実に美しい肌となり、目の輝きも、胸のカラータイマーの光も、とてもきれいだった。できればスペシウム光線か、レッドキングを裂いた「八つ裂き光輪」、ジャミラを倒した「ウルトラ水流」なども見せてほしかったが、まあ、客席に降りてきて、みんなと握手してくれただけでもよかった。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

■ウルトラマン・オン・ブラス


http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1910/

■ウルトラマン・オン・ブラス2


http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1910/


(2010.04.19)


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