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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第47回 東京都青少年育成条例

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

(週2〜3回更新しています。バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)

 すでに報道でご存知のとおり、東京都青少年育成条例に、改正の動きが出ております。もしも改正案が通った場合、下記のような曲を演奏すると、条例に抵触する恐れがありますので、東京都の中学高校吹奏楽部の顧問の先生方は、十分、ご注意ください。

●≪サロメ≫〜7つのヴェールの踊り(リヒャルト・シュトラウス)
  王女サロメが、ヨカナーンの「生首」を欲するあまり、義父ヘロデ王の前で、ストリップ・ダンスを演じ、羽織っている7枚のヴェールを1枚ずつ脱いでいくという、まことに不謹慎な音楽です。肉体を利用すれば欲しい物が入手できるとの、誤った思想を誘発する可能性すらあります。くれぐれも演奏させないようにしてください。

組曲≪ばらの騎士≫(リヒャルト・シュトラウス)
  若いツバメと熟女の公爵夫人がベッド上で「一戦」を終え、ぐったりしている場面から始まります。昨今人気の「熟女AV」の先駆けともいえ、健全な性教育のあり方から完全に逸脱しています。また、冒頭のホルンの雄叫びは、性行為における男性の「クライマックス」を描写しています。絶対に未成年に演奏させてはいけません。

≪中国の不思議な役人≫(バルトーク)
  ギャングに拉致された少女が、売春を強要され、中国人の役人を誘惑するものの事態は異様な方向に進展し、最後は殺人事件に至る、とんでもない内容です。これほど残虐な殺人行為が平然と描かれた音楽は、ほかにありません。演奏どころか、曲の内容を説明することすら憚られます。同様主旨で、≪仁義なき戦い≫(津島利章作曲/天野正道編曲)も、絶対に演奏させないでください。

≪ディオニソスの祭り≫(フローラン・シュミット)
  生きた牛を殺し、神に捧げる儀式が描かれます。完全な動物虐待であり、未成年にはまことに刺激的な内容です。どこかの国のやまかしい団体から抗議の来る可能性すらあります。腫れ物には触れないにかぎります。

≪ローマの祭り≫〜チルチェンセス(レスピーギ)
  英語の「サーカス」の語源であることから想像できるとおり、古代ローマの闘技場で、ライオンと奴隷を闘わせる非人間的な見世物が描かれます。差別を助長する内容でもあり、未成年にはふさわしくない音楽です。いますぐ演奏禁止にするべきでしょう。

≪トリスタンとイゾルデ≫〜愛の死(ワーグナー)
  男女の性愛が死の法悦に昇華する、そのことを「快感」であるかのように描いた、たいへん危険な音楽です。このような音楽を未青年に聴かせたり、演奏させることは、薬物使用につながります。吹奏楽で演奏されることはめったにありませんが、全国大会に1回だけ登場してしまったので(1989年、北海道・北見交響吹奏楽団)、今後のために注意を喚起しておきます。

行進曲≪美中の美≫(スーザ)
  毎年、スーザがボストン食品展示会の会場で見かけた「美人コンパニオン」を描いたマーチであり、原題を直訳すれば「展示会(フェア)でいちばんの美女(フェアレスト)」です。女性を外見だけで評価する、前近代的な人間評価であることはいうまでもありません。ことに未成年男子には演奏させてはいけません。

 ……まさか条例改正したら、こういうことになるんじゃないだろうなあ。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.04.12)


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