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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第44回 Nコン課題曲

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 吹奏楽の世界に「めざせ普門館!」なるキメ文句があるのと同様、合唱の世界には「めざせNHKホール!」がある。小中高の合唱部で争われる「NHK全国学校音楽コンクール」=通称「Nコン」のことである。

 毎年秋の、NHKホールにおける全国大会TV中継を見て、号泣している方もおられるのではないか。

 近年、このNコンの「中学の部」の課題曲が、ポップス系となって話題となっている。2008年が≪手紙≫(アンジェラ・アキ作詞作曲/鷹羽弘晃編曲)、2009年が≪YELL≫(水野良樹=いきものがかり作詞作曲/鷹羽弘晃編曲)だった。どちらも紅白に登場し、Nコンの枠を超えてヒットした。ミュージックエイトからは「合唱+吹奏楽」譜も発売され、なかなかの売れ行きらしい。

 いま日本中で校内合唱大会が盛んになっている原因は、明らかにこの2曲である。オジサンになって涙もろくなった私など、昨年の全国大会中継のラストは、とてもじゃないが、まともにTV画面を見ていられなかった。

 さて、そんなNコンの、2010年の課題曲が発表された。

小学校の部≪いのちのいっちょうめ≫(里乃塚玲央作詞/横山裕美子作曲)
中学校の部≪I ×××(アイ・ラヴ)≫(愛作詞作曲/上田真樹編曲)
高校の部≪いのち≫(谷川俊太郎作詞/鈴木輝昭作曲)

 小学校の部は、たいへん楽しくて大人でも歌いたくなる曲。

 高校の部は、さすがにベテランによるだけあって技巧に満ちた曲。昨年の≪あの空へ〜青のジャンプ〜≫(石田衣良作詞/大島ミチル作曲)も初めて聴いたときは唖然となるスゴさだったが(ほとんど吹奏楽曲!)、今年はまた別の意味で難曲である。

 で、問題は、注目の中学の部なのだが……。

 合唱には素人の私がいうのもナンだが、この曲で、ほんとうにいいのだろうか。

 作詞作曲の「愛」とは、大塚愛のことである。タイトルにも歌詞にも「×××」とあって、ここは、好きな言葉を入れていいらしい。

 これ、ほんとうに、いまの中学生が共感できて「歌いたい」と思うのだろうか。全体の歌詞も絵文字のように単語を羅列し、そこにフシを付けたように思えるのだが……。

 よく「柳の下のドジョウ」という。一度柳の下でドジョウを捕まえたからといって、そう同じことは何度も続かない、という意味だ。これに対し、「柳の下にドジョウは三匹」ともいう。「いや、そんなことない。柳の下にドジョウは三匹まではいる」、つまり「物まねヒットも、三回目くらいまでは続く」といった意味だ。

 ≪手紙≫≪YELL≫ときて、今年も「三匹目のドジョウ」でいくかと思いきや、まさかの肩透かし。堂々と「三匹目」を狙ってもよかったのではないか。それとも、いまの中学生諸君は、これを「三匹目のドジョウ」と感じるのだろうか。
<敬称略>

■昨年のNコン中学の部≪YELL≫全員合唱
http://www.youtube.com/watch?v=wscXSmJsX78

■NHK全国学校音楽コンクール 公式サイト
http://www.nhk.or.jp/ncon/index.html


富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.04.05)


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