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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第42回 ニッポンミュージカル時代

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 東京首都圏以外の方には縁が薄い話で申し訳ないが、古書店街で知られる神保町(東京・千代田区)に、「神保町シアター」なる名画座がある。吉本興業が運営するミニ・シアターで、同ビル内には「神保町花月」も併設されている。

 2007年のオープン当初は、若者・家族を対象とした普通のミニ・シアターだったのだが、いまでは「懐かし映画専用劇場」として、確固たる存在を示すようになった(時折、洋画の特集もあるが、邦画が多い)。

 ここは、毎月ワン・テーマで複数の作品を入れ替わりで次々上映する。昨年暮れから2月にかけての「高峰秀子特集」では42本が上映され、再人気ブームのきっかけをつくった(現在、『高峰秀子の流儀』なる本もベストセラーになっている)。

 その神保町シアターが、4月に、「ニッポンミュージカル時代」と称し、ミュージカル邦画21本を上映する。

 いまの若い方々は、日本映画に「ミュージカル映画」なんてジャンルがあったのかと不思議に思うかもしれないが、かつては怪獣映画同様、さかんに製作されていたものである。

 BP読者は、当然のことながら「音楽ファン」のはずだし、「音楽映画」「ミュージカル」のお好きな方もいると思うので、いくつか推薦紹介しておきたい。

 (上映日時に関しては、神保町シアターHP http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/index.htmlを参照)

 『鴛鴦歌合戦』(昭和14年)と、『歌ふ狸御殿』(昭和17年)は、戦前に製作された「オペレッタ映画」であり、和製ミュージカルの元祖である。おバカとしかいいようがない軽いタッチで、底抜けなまでにお気楽なひとときを味わえる。
 
  「三人娘」といえば、「山口百恵・桜田淳子・森昌子」が浮かぶが、それ以前から何組かあった。代表格は、「美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみ」だろう。この3人が共演した映画は多いが、今回は『ひばり・チエミ・いづみ 三人よれば』(昭和39年)が上映される。かつて女子高の同級生だった3人が、お見合い騒動を繰り広げる。

 これに対し、ナベプロ(渡辺プロダクション)の「スパーク三人娘」が「中尾ミエ・伊東ゆかり・園まり」である。こちらの『ハイハイ3人娘』(昭和38年)は、歌も踊りも超一流、東宝ミュージカル映画の最高傑作との声もある。なにしろ振り付けが、ハリウッドから招かれたラウル・アベル(『ウエストサイド物語』の振付師)なのだ。いま、こんなエンタテインメントをこなせるアイドルがいるだろうか。

 以上2本は東宝映画だが、驚くなかれ、松竹も「三人娘」を輩出している。なんと「水谷良重・倍賞千恵子・鰐淵晴子」である。その映画『踊りたい夜』(昭和38年)は、歌って踊るショウダンサー三姉妹の物語。いうまでもないが、水谷良重とは、現在、新派の大女優「二代目水谷八重子」であり、倍賞千恵子とは、寅さんの妹(さくら)である。

 だが、今回特におススメは、東宝創立35周年記念映画『クレージー黄金作戦』(昭和42年)だ。当時の「90分映画2本立て興行」の常識を打ち破り、事実上の「2時間半1本立て」(短編記録映画を併映)で公開された、超大作である。初公開時は、途中で「休憩」が入ったほどだ。この長さゆえに、再上映やTV放映がしにくく、半ば「伝説の名作」になってしまったのだ。

 ここでは、なんと、完全封鎖されたラスベガスのメイン・ストリートを、クレージー・キャッツたちが≪ハロー・ラスベガス〜金だ金だよ≫を歌いながら猛進する、トンデモ場面を観ることができる。DVD化もされているが、このド迫力はスクリーンでなければ味わえない。ゲストが、若大将・加山雄三、ブルー・コメッツ、ザ・ピーナッツ、ザ・ドリフターズ(もちろん荒井注時代)、ジャニーズ(もちろん、あおい輝彦がいた初代「日大芸術学部」4人組)というのも驚きである。ホテル・リヴィエラのショー場面では、ゲストたちの豪華ショーにつづいて、クレージー・キャッツのおバカ音楽ショーが展開する。「犬塚弘のマーチング・シンバル」も登場する(これ、いまわかるひと、いるかなあ?)。とにかく2時間半、一瞬たりと目が離せない展開は見事としかいいようがない。

 ただし、以上のような「和製ミュージカル映画」を観ても、ハッキリいって、あとには何も残らない。感動するとか、もう一度観たいとか、その種の感慨もわきおこらない。観ている間、ただひたすら「楽しい」だけ。だが、それこそが「娯楽」なのだ。

 世は相変わらず不景気。新年度は、和製ミュージカル映画で能天気に迎えよう。昨今の、歌唱力も芸もないタレントなど、バカバカしくて観る気にならなくなること確実ですよ。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

■神保町シアターHP
http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/index.html

(2010.03.31)


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