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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第41回 「冬ソナ」DVD発売延期

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 3月26日(金)の、朝日新聞・朝刊の「全面広告」を見て、驚いた方も多いのではないか。

 広告主は「ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント」(SPE)。広告のタイトルは「『冬のソナタ』ファンの皆さまへ/DVD発売延期のお知らせ」。http://bd-dvd.sonypictures.jp/fuyusona/

 「なんだ、よくある発売延期のお知らせじゃないか」と思ったかもしれないが、それにしては「全面広告」とは、あまりに大げさではないのか(全国紙のカラー全面広告は、契約条件にもよるが、普通、数千万円の費用がかかる)。

 不思議に思って、その全面広告を詳細に読んでいくと、奇妙な説明がつづいていた。要旨をまとめてみると、

(1)このDVDセットは、『冬のソナタ』が初めて韓国KBS放送で放映されたときの、オリジナルのまま収録したものである。

(2)ところが、ドラマ中に使用された音楽の、かなりのものが、著作権者が不明である。

(3)商品化するためには、そのすべての権利者から許諾を得なければならないが、どうにもわからず、このままでは発売できない。

(4)よってとりあえず発売延期とするが、下記の音楽の著作権者についてご存じの方々は、ご連絡いただきたい。

 私も長いこと、音楽メディアの世界にかかわっているが、こんな広告を見たのは生まれて初めてだった。

 要するに『冬のソナタ』の音楽は、どこから持ってきたのかも、誰が作曲したのかも不明な、わけのわからないものばかりらしいのだ。で、SPEが調べたものの、それでもわからない。当の広告の下には、「不明音楽一覧表」があって、「第1話/17分30秒〜18分13秒、チュンサンが黒板で数学を解く/演奏のみ」などとある。この場面に流れた音楽が、どこの誰によるものなのか、わからないので、ご存じの方は情報をください、というわけだ。中には、曲名までわかっていながら、著作権者が不明のものすらある(なぜかHPには、それら一覧表はないようだが)。

 こんなことが、あるのだろうか。素人がつくった自主制作映画ならいざ知らず、公共放送局が制作したTVドラマで、音楽の大半が、誰がつくったのか、わからないなんて。

 しかも奇妙なのは、なぜ、「韓国で制作されたTVドラマ」に関する情報を、日本で得ようとするのだろう。韓国ドラマなら、韓国の新聞に広告を出して、韓国国内で情報を募るべきではないのか。

 その理由は、ズバリ、『冬のソナタ』に流れた音楽の大半は、日本の音楽のパクリである可能性が高いからだ。

 すでに、主題歌は、日本の雅夢(がむ)の1980年のヒット曲≪愛はかげろう≫などの、劇伴の多くが「藤原いくろう」作品の、それぞれパクリであることが判明しており、数千万円の「和解金」(著作権使用料)で「手打ち」されようとしているウンヌンと報道されたこともあるので、ご存じの方も多いだろう。

 てっきり、あれですべてがおさまっていたとばかり思っていたが、それどころではなかったのだ。ジェームズ・ホーナー【第34回】も真っ青である。

 そもそもこのドラマは、音楽のみならず、中身も「70年代の日本のドラマ『冬物語』のパクリではないのか」などの指摘が続出していた。

 音楽でもドラマでも、過去の作品と似てしまうことは、よくある。≪知床旅情≫=≪早春譜≫=≪春へのあこがれ≫(モーツァルト)は有名だし、私個人でいえば、映画『ゴッドファーザー』を初めて見たとき、「これは、パール・バックの小説『大地』のパクリじゃないのか」と思ったものだ。だがどれも冷静になってみれば、それらしき元ネタがありながら、ちゃんと、それを超えたオリジナルになっている。

 だがどうも『冬のソナタ』は、そうではないらしい。

 しかし……こんな大金をかけた広告を打っても、それでも、発売の暁には十分な利益が期待できるということか。まるでこの広告自体が、宣伝のような気さえする。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.03.29)


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