吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー

【コラム】

富樫鉄火のグル新
第40回 「響宴」と「バンド維新」

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 3月22日、東京・池袋の東京芸術劇場で第13回「響宴」が開催された。早いもので、今年で第13回である。

 これから出るライヴCDで初めて曲を聴く方も多いと思うので、あまり細かいことは述べないが、とにかく、このような催しが13年間つづいてきたことに、敬意を表したい。客席もほぼ満席であった。第1回から事務局で奔走してきた富永啓之氏(2008年10月急逝、筆名「播堂力也」)も天上で喜んでいることだろう。

(私事だが、富永氏と私は、『一音入魂! 全日本吹奏楽コンクール名曲名演50』正続2冊をともに執筆した仲である。今後の共同企画も山ほどあったのだが……。彼の死は、断腸の思い以外のなにものでもない)

 にもかかわらず、招待席の中に、イビキをかいて寝ていたオジサンがいたのは、あれは何なのだ。確かにいい陽気だったし、ご当人にとっては眠気を誘う曲もあったかもしれない。だが、出演者もスタッフも、基本は手弁当なのである。休みをつぶして演奏参加してくれているステージ上の団体に、失礼だとは思わないのか。

 「響宴」の少し前、3月13〜14日は、静岡・浜松で「バンド維新」2010が開催された。今年はCDが先行発売され、早めに曲を聴けてしまったので、現地までは行かなかったのだが(そういうひと、多かったのでは?)、こちらも「響宴」同様、一種の新曲発表会である。

 この2つの催しに、共通して登場した作曲家がいた。中橋愛生である。ただし「響宴」には≪谺響(こだま)する時の峡谷〜吹奏楽のための交唱的序曲≫の「作曲者」として、「バンド維新」には交響詩≪ジャングル大帝〜白いライオンの物語≫(冨田勲作曲)の「編曲者」として。

 前者≪谺響〜≫は、≪科戸の鵲巣≫の続編だそうで、ステージ上のバンドは中央から左右二群に分かれ、客席1階、2階、3階の各左右、計6箇所にも打楽器やピッコロ・フルート、金管群のバンダが配置される。「3D」どころか「8D立体音響」だ。黛敏郎の≪涅槃交響曲≫を思い出す。楽器編成もほとんどのパートが「○人以上」と指定されており、まさに「極大音楽」であった。

 これに対し≪ジャングル大帝≫は、「バンド維新」の主旨に沿って、中小編成向けに書かれており、20人台で演奏できる(全体にホルンが主役のようなスコアである)。

 たまたま同じ作曲者によるこの2曲を聴いて、面白いなあと思った。≪ジャングル大帝≫は、本来がフル・オーケストラ曲で、壮大なサバンナの風景を描写する「映像音楽」である。それを20人台で演奏できるように仕立てなおすとは、なかなかたいへんな作業だったのではないかと察するが、それでも<パンジャの死>から<レオの誕生>〜<アフリカが見えた>に至る部分など、さすがといいたくなる流れだった。かつてTV版で弘田三枝子が歌った≪レオのうた≫の旋律がホルンで奏でられるところなど、1965年10月の放送第1回を如実に覚えている私など、ほとんど泣きながら聴いた(オープニングでフラミンゴの大群が飛び立つところは、子供心にも仰天唖然となったものだ。あんなアニメ映像、生まれて初めて観た)

 ≪ジャングル大帝≫が「壮大」→「中小編成」への「縮小作業」だったとすれば、≪谺響〜≫のほうは、もしかしたら、その逆だったのではないだろうか。≪科戸〜≫でもそうだったが、中橋作品には、どこか精細な、室内楽的響きがある。それをわざと極大編成で表現することによって新たに生まれる「何か」を求めているように感じた。スコアは巨大だが、作曲者の脳内には「室内楽」が響いていたのでは……?

 「響宴」と「バンド維新」の中橋スコアで、「極大」⇔「極小」を行き来し、耳で三寒四温を実感した、春のひとときでした。
<敬称略>

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

 【関連記事】

バンド維新2010 ウィンドアンサンブルの現在
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-2037/

一音入魂! 全日本吹奏楽コンクール名曲・名演50
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/bk-4056/

一音入魂! 全日本吹奏楽コンクール名曲・名演50 Part. 2
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/bk-4094/

バンド維新2010スコア集
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/sc-5261/

■ジャングル大帝(TVオープニング)/You Tube
http://www.youtube.com/watch?v=k_6HmHcjU3k

(2010.03.23)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
 
jasrac番号吹奏楽マガジン バンドパワー