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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第34回 アカデミー賞(2) 『アバター』

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 興行収入歴代第1位にもかかわらず、アカデミー賞を3部門しか受賞できなかったことで、『アバター』は「3D効果がすごいだけで、中身がない映画なのだ」と感じた方が大半だと思う。

 だが、ほんとうに、そうなのだろうか。主要部門をすべて逃した事実は、『アバター』の「勝利」を意味していないだろうか。

 すでにご覧になった方も多いはずなので詳述は避けるが、あの映画が、「アメリカ覇権主義」を批判していることは、どなたも感じたと思う。「キリスト教白人中心主義」を批判しているようにもとれる。

 かつてアメリカは、ネイティヴ(インディアン)を駆逐し、土地を奪ってきた。日本を占領し、思いのままになる国に育てた。ベトナムを傘下におさめようとした(これは失敗した)。そしていまでは、イスラム圏に進出している。かようにアメリカの歴史は、異文化侵略の歴史なのである。『アバター』は、その歴史を寓話で描いたのだ。

 はるか遠くの星に進出できるほどの科学力がある時代に、あの映画に登場する地球軍の兵器や軍人の姿は、まるでベトナム戦争当時と大差ないではないか。ジェームズ・キャメロン監督の確信演出である。

 おそらくアメリカの「インテリ」「指導者層」は、『アバター』を観て、過去に自分たちや先祖がやってきたことを思いおこしたはずだ。それは、「世界の警察」を自認する大国としては、とても嫌な気分だったにちがいない。まるで、映画史に残る名作『駅馬車』を否定されたようなものである(『アバター』のクライマックスは、「暴力集団」アパッチ族を白人騎兵隊が駆逐する『駅馬車』の裏返しである)。

 だから、『アバター』がアカデミー賞で無視されたことは、この作品の真の目的が達成されたようなものなのである。前回書いた、「異国の食文化を認めない」映画『ザ・コーヴ』が長編ドキュメンタリ賞を受賞したのと、構造は同じである。

 もう一点。今回の音楽は、キャメロン作品でおなじみ、ジェームズ・ホーナーだった。サントラ・ファンの間では「パクリ魔」「自作使いまわし王」として有名である。今回は、うまくフィットしない3Dメガネにイライラして、音楽にまで気がまわらなかったが(それでも、エンヤかアディエマスが聴こえたのは、気のせいか?)、ラストに流れた≪愛のテーマ≫は、案の定、『タイタニック』主題歌とそっくりフレーズのオン・パレードであった。今後、劇判のほうも、パクリ指摘が出てくるのではないか。『ミクロキッズ』のように、あとになってパクリが発覚し、ニーノ・ロータ遺族に著作権使用料を支払ったような、ああいう事態にならないことを祈る。

【余談】ほかの、有名なホーナー「パクリ」音楽……『ウィロー』←シューマンの交響曲第3番≪ライン≫、『エイリアン2』←ハチャトゥリアン≪ガイーヌ≫〜<アダージョ>。確か、バーンスタインをパクって差し替えになった映画もあったと思う。

■『アバター』愛のテーマ
http://www.youtube.com/watch?v=3YDz-ftqr1g&feature=fvw

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.03.11)


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