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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第32回 板吹のドリル

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 実にひさしぶりに、板橋区吹奏楽団のポピュラー・コンサートに行ってきた(3月7日、東京・板橋、板橋区立文化会館)。

 一般市民バンドで、ステージ・ドリルをやるところは、そう多くない。板吹は、本格的なステージ・マーチング・ショーをこなす珍しい一般バンドである。

 今回のドリルは、プロ・マジシャン(ドルフィン・マジック・カンパニー)をゲストに迎えていたが、正直、驚いた。マジック・イリュージョンとステージ・ドリルが共演したのである。

 マジックは、箱に入った人間が消えたり入れ替わったりする大がかりなもので、その後ろで、ドリル隊がナマ演奏するのである。当然、音楽の山場とマジックの見せ場は、一致していなければならない。これが実に見事で、板吹ドリルは、新たなマーチング・ショーの可能性を開いたように思う。一般バンドでここまでやるところは、そうはあるまい。

 もうひとつ、私が板吹ドリルを好きな理由は、昔ながらの基本的なドリルに徹していることである。私が学生時代にやっていたようなドリルを、いまでもキチンと踏襲しているのだ。

 近年、マー協の大会やジャパン・カップ、DCJなどを観るにつけ、マーチング・ショーは、カラーガードと小道具・大道具が派手で大がかりになるばかりで、疲れることが多いと感じている。どこを観て、何を聴けばいいのか、よくわからないうちに終わることがほとんどだ。

 だが、ドリルとは、「音楽」なのである。

 本来、座奏でいいはずが、そのうち、身体が自然と動いてくる。マーチを演奏しているうちに、歩かずにはいられなくなり、それが「パレード」になる。さらに、やむにやまれぬ思いがわいてきて、それがいつしか、フォーメーションになり、ステップになる。それがドリルの基本姿勢だと思う。

 板吹のドリルは、この基本を忠実に守っている。初めに「動き」があるのではなく、すべては「音楽」から始まっているのである。だから、観ていて疲れないし、無理がない。今回のようにマジックと共演する際は、あくまでバックに徹している(もう少し、マジック中は、動きを少なくしてもいいと思ったが)。

 やたらと視覚効果だけで観客を驚かすタイプのドリルをやっている高校や大学のバンド諸君は、板吹のドリルを観て参考にするべきだと思った。

 なお、板吹のポピュラー・コンサートは、毎回凝ったテーマ構成で楽しませてくれる。今回の「不思議な百貨店」なるテーマも、少々もたれる感じはあったが、ドリルともども、社会人中心の一般バンドで、よくあそこまでやっていると思う。

 蛇足だが、プログラムは絵本仕立てになっており、後ろに小さく曲目が書いてあるだけで、作曲者名も編曲者名も、曲の由来解説もなかった。小長谷宗一作曲≪エド・ページェント≫のような板吹ならではのオリジナルもあったのに、ちょっと残念だった。

■板橋区吹奏楽団HP
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/itasui/


富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.03.09)


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