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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第29回 ポール・メイエ

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 もう、いまから20年近く前のことだと思う。あるクラシック愛好家の自宅におけるサロン・コンサートに招かれたことがある。フランスから来た、若き天才クラリネット奏者が演奏するとの触れ込みだった。

 行ってみると、スラリと背の高い、たいへんなイケメン美青年があらわれた。

 曲は、プーランクやドビュッシーだった。個人宅の部屋だったので、10人ちょっとの聴衆が、すぐ目の前に迫っている。そのせいか、ちょっとやりにくそうで、照れているような感じが若々しかった。演奏はなかなかの名演で、確かに天才クラリネット奏者の出現だと思った。

 彼の名をポール・メイエといった。

 あの美青年が、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の首席指揮者に就任するとは、夢にも思わなかった。すでにTKWOの作曲コンクール本選会(2006年)や、昨年のコンクール課題曲参考演奏、特別コンサートなどで指揮しているが、20年前から、吹奏楽や指揮に興味があったのだろうか。

 2月19日(金)、TKWO第104回定期演奏会(東京芸術劇場)は、彼の首席指揮者就任記念コンサートであった。曲はモーツァルト≪13管楽器≫、ヒンデミット≪交響曲変ロ調≫、リヒャルト・シュトラウス≪ティル〜≫(ハインズレー編曲)の3曲。自身の選曲らしい。

 その内容については、すでに福田滋氏の的確なレポートが掲載されているので、詳細はそちらをご覧いただきたい。

 メイエの演奏は、いま風のいい方だと「ライト感覚」とでもいうのか、全体にたいへん軽快でスピード感あふれるものだった。≪13管楽器≫など、ヨッフムやベームで聴いてきた私のような世代には、そうとう速い演奏に感じられた。だが、おそらくこういう演奏が、現代では(あるいはフランスでは)主流なのだろう。確かに、新しいTKWOサウンドとしては、実に新鮮であった。

 もちろん速いからといって乱れることなどあるわけはなく、TKWOのアンサンブル能力の高さが十二分に発揮された演奏だった。特にモーツァルトにおけるオーボエ・宮村和宏氏(副コンマス)の技術と、全体を牽引する力は特筆に価するものだった。いま、≪13管楽器≫を、あれほどのレベルで演奏できる吹奏楽団は、TKWOしかないはずだ。

 これから、メイエがどんな曲目で、どんなサウンドを引き出してくれるのか、実に楽しみである。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

【関連記事】
■レポート/東京佼成ウインドオーケストラ
第104回定期演奏会 首席指揮者就任記念

http://www.bandpower.net/news/2010/02/04_tkwo0219/01.htm

(2010.03.02)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
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