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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第26回 冬季オリンピックと吹奏楽(5)
     ジョン・ウィリアムズ≪コール・オブ・チャンピオンズ≫

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 「オリンピック音楽」といえば、いまの若い方々には、なんといっても、ジョン・ウィリアムズだろう。

 彼は、いままでに、オリンピックがらみの音楽を4回書いている。

(1)1984年 ロサンゼルス大会 ≪オリンピック・ファンファーレ&テーマ≫
(2)1988年 ソウル大会 ≪オリンピック・スピリット≫(NBCテレビ中継テーマ曲)
(3)1996年 アトランタ大会 ≪サモン・ザ・ヒーロー≫
(4)2002年 ソルトレイクシティ冬季大会 ≪コール・オブ・チャンピオンズ≫

 この4曲とも、アメリカで各種吹奏楽版が出版されている。(1)と(3)は、いまでも多くのバンドに演奏されているスタンダード人気曲だし、(2)は「TBSオールスター感謝祭」の中の「赤坂5丁目マラソン」のBGMとして知られている。

 吹奏楽版メドレー≪The Olympics: A Centennial Celebration≫(John Moss編曲/Hal Leonard版)は、グレード3のわりに演奏効果が高いので、中高吹奏楽部に人気がある楽譜だが、上記(1)(2)(3)がぶっつづけで登場する、事実上「ジョン・ウィリアムズ・メドレー」である。アメリカ人にとって「オリンピック音楽」といえば、いまやジョン・ウィリアムズなのだろう。

 ところが4曲中唯一の冬季曲(4)は、吹奏楽版も何種類か出ているし、なかなかいい曲なのだが、あまり演奏されている気配がない。やはり、冬季大会は、夏に比べると注目度が低いのだろうか。また、もともとが合唱を主体としたシンフォニック曲なので、吹奏楽だと原曲の味からかけ離れてしまうからかもしれない。

 だが、曲のせいばかりでもないような気がする。2002年のソルトレイクシティ冬季大会自体が、あまり後味のいい大会ではなかったせいもあるのではないか。

 この大会は、開催国アメリカの自己主張がたいへん強かった。開会式では、前年の9・11テロの際、貿易センタービルの残骸の中から発見された星条旗が掲げられた。ブッシュ大統領は、開会宣言で「誇り高きこの国を代表して」と、オリンピック憲章に定められた文言を無視した。ショートトラックでは、1位の韓国選手が進路妨害と認定され、アメリカ選手に金メダルが送られた。全体的にアメリカびいきの判定が多かった。

 そのほか、フィギュアでは審判買収疑惑、アルペンやクロスカントリーのドーピング大量失格など、ロクでもない騒動で終始した。

 世界中から訪れたマスコミ陣も、ストレスがたまって爆発寸前だった。9・11テロの影響で、警備や検査が異常なまでに厳しく、スムーズに会場を移動できなかった。ソルトレイクシティ自体が、モルモン教の聖地とあってアルコールを提供する店が少なかったことも拍車をかけた(コナン・ドイルが書いたシャーロック・ホームズ物第1作『緋色の研究』に、同地が建設される挿話が出てきて有名になった町だ。ただしその記述は誤解と偏見だらけである)。

 バンクーバー大会も、開会前に練習で急死する選手がいたかと思えば、「腰パン」騒ぎを起こす兄ちゃんがいたりと、周辺話題が豊富だが、後味の悪い終わり方だけはしてほしくないものだ。同時に、もう少し≪コール・オブ・チャンピオンズ≫も演奏されてほしい。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.02.24)


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