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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第23回 冬季オリンピックと吹奏楽(2)
     岩河三郎≪虹と雪≫

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 1972年の札幌冬季オリンピックの入場行進で演奏された曲は、もちろん≪白銀の栄光≫(前回参照)だけではない。記録によれば、古関裕而≪純白の大地≫なども演奏されている。だが、ある意味、≪白銀の栄光≫以上に印象に残ったマーチもあった。

 岩河三郎の、行進曲≪虹と雪≫である。

 札幌オリンピックのテーマ曲としてNHKが制作した≪虹と雪のバラード≫(河邨文一郎作詞、村井邦彦作曲)は、多くの歌手が競作で歌ったが、最大のヒットとなったのは、トワ・エ・モア版だった。その後しばらく、音楽の教科書にも載っていた名曲である。

 この曲を入場行進曲用に編曲することになり、委嘱されたのが、NHKの音楽番組に関与していた、岩河三郎(1923〜)だった。

 岩河は、本来、合唱曲が専門だったが、すでに吹奏楽コンクール課題曲≪南極点への序曲≫(1969年)などを書いており、吹奏楽には感度があった。

 ここで岩河は、≪虹と雪のバラード≫を、そのままマーチにするような単純な編曲はしなかった。前奏や第1主題は、完全なオリジナルで、TRIOに入って初めて原曲が登場する仕掛けを施したのである。これは実に新鮮だった。聴いていて、何の不自然さもなく、すんなりと≪虹と雪のバラード≫につながるのである。もし原曲を知らずに聴いたら、「何て素晴らしいマーチなんだ」と驚くであろう。

 以後、岩河は吹奏楽界にとって欠かせない人気作曲家となり、課題曲も≪北海の大漁歌≫(80年)、≪サンライズ・マーチ≫(82年)と、たてつづけに書くことになる。特に後者は、課題曲マーチ史上に残る名曲である。

 その原曲≪虹と雪のバラード≫が、1998年の長野冬季オリンピックの際、トワ・エ・モアによってリメイク発売された。だが、テレビやラジオは「自粛」して、ほとんど流さなかった。原曲の歌詞の2番に「雪の炎にゆらめいて 影たちが飛び去る ナイフのように」とあることが原因だという。当時、未成年によるナイフ殺傷事件が頻発していたのだ。まことにバカバカしい話であった。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

 

■吹奏楽コンクール課題曲集Vol.3 (1977〜1980)
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1196/
「南極点への序曲」「北海の大漁歌」「サンライズ・マーチ」(岩河三郎)を収録

■東京佼成ウインドオーケストラ&普門館【DVD】
「サンライズ・マーチ」(岩河三郎)を収録
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/dvd-9318/


(2010.02.18)


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