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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第15回 ≪4分33秒≫

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。



 関西在住の友人から聞いたのだが、先日のアンコン兵庫県大会で、ジョン・ケージの≪4分33秒≫にバリテュー四重奏で挑もうとした一般団体があったらしい(結局、本番ではほかの曲を演奏したようだが)。

 単なる噂だったのか、あるいは、ほんとうに、その曲目で参加申し込みをしていたのをあとになって変更したのかはわからないが、なんともケッサクな話だと思った。

 私は、この≪4分33秒≫を、ナマで「聴いた」ことがある。1980年代初頭だったと思うが、TV番組「題名のない音楽会」の公開録画で、渋谷公会堂で「聴いた」のだ(私は、黛敏郎が司会をしていた時代の「題名のない音楽会」マニアで、中学以来10数年間、公開録画のほとんどに行っていた)。

 そのときは、ジョン・ケージ特集だった。楽譜を手にピアニストが登場し、ピアノの前に座るのだが、何もしない(途中で何度か、楽譜をめくっていた記憶がある。それが「楽章」の切れ目だったらしい)。

 そのうち、客席がざわつき始める。聴衆の咳、かすかな笑い声なども聴こえてくる。やがて、4分33秒後に、ピアニストは立って一礼し(演奏終了)、下がっていった。

 「演奏」後の黛敏郎の解説によれば、これは現代音楽の巨匠ジョン・ケージ(1912〜92)が「作曲」した「偶然性の音楽」の代表作で、4分33秒の間、演奏者は何もしない。「その間、みなさんは会場に響き渡るざわめきや雑音などを聴いたはずです。それこそが、この曲が奏でる音楽なのです」。楽譜もちゃんとあって、3楽章構成だが、単に「Tacet」(休み)と書かれていだけるらしい。

 こんな「曲」を「演奏」し、堂々と全国放送で流すとは、とてつもない番組だと、恐れ入った。

 そして、ウソかホントか知らないが、それを、BT4で、日本のアンコンでやろうとしていた団体があったというのだ(この曲は、どんな楽器編成で「演奏」してもいいことになっている)。う〜ん、実現しなくて残念! 審査員や主催者が、どんな顔をするか、みたかった!

※実は「題名のない音楽会」では、この曲の「管弦楽版」も「演奏」されたような記憶があります。もしかしたら、私が「聴いた」ピアノ版は、別のところで接したのを混同しているのかもしれません。なにぶん昔の話なので、記憶があいまいですいません。また、この曲は、現在、YouTubeなどで様々なヴァージョンで聴く(観る)ことができます。

■John Cage: 4'33'' for piano (1952)/YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=gN2zcLBr_VM

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)

(2010.01.29)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
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