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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第127回
「ろばの会」60年

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

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 毎年5月に、中田喜直(1923〜2000)を偲んで「水芭蕉コンサート」が開催されている。中田は、≪夏の思い出≫≪ちいさい秋みつけた≫≪雪の降るまちを≫≪めだかの学校≫などの唱歌、童謡で知られる国民作曲家である。 
 その中田は、1955年に、作曲家の大中恩、磯部俶、宇賀神光利、中田一次(喜直の実兄。作曲家でファゴット奏者)らと、「ろばの会」を結成した。「子供たちのために、いい詩と、いい音楽を」「頼まれて作曲するのではなく、自分たちで納得のいく音楽を」がモットーだった。
 5人は、定期的に集まり、質の高い童謡を目指して、コンサートや曲集出版などで、発表していった。どんな曲があったのか。いま、私がソラで歌える曲だけでも、これだけある。

≪サッちゃん≫(阪田寛夫作詞、大中恩作曲)
≪びわ≫(まど・みちお作詞、磯部俶作曲)
≪いぬのおまわりさん≫(さとうよしみ作詞、大中恩作曲)
≪ちいさい秋みつけた≫(サトウハチロー作詞、中田喜直作曲)
≪おなかのへるうた≫(阪田寛夫作詞、大中恩作曲)
≪おさるのゆうびん≫(まど・みちお作詞、宇賀神光利作曲)

 これすべて、「ろばの会」から生まれた曲である。私の幼稚園〜小学校時代、誰もがあたりまえのように歌っていた名曲群だ。
 この会は2000年3月に解散コンサートを開催し、中田本人も、その直後に没した。現在、健在なのは、大中恩(めぐみ)ただ一人である。
 その大中が、5月16日に開催された「水芭蕉コンサート」(「ろばの会」結成60周年)に、ゲストとして登場した。私は驚いた。91歳である。足こそ弱っていて、杖に頼らないと歩けないようだったが、声には張りがあり、話もよどみなく、実に楽しかった。学生時代、「ろばの会」の活動に協力していた中田幸子(のちに中田喜直と結婚)の話とあわせて、「ろばの会」が、いかに真剣に、新しい童謡を生み出すことに専念していたかがよくわかって、感動した。新曲の相互批評でも、情け容赦なく罵倒し、ダメ出しを繰り返していたそうだ。
 いまは、音楽家や作家、画家たちが、こういう「会」をつくって、相互批評し合いながら作品を世に出していくことは、かつてほどは行われていないようだが、一時期はたいへん盛んだったものだ。私の子供時代、何気なく口ずさんでいた曲が、実は、激しいディスカッションを経て生まれていたのかと思うと、感慨無量だった。(敬称略)


富樫鉄火(昭和の香り漂う音楽ライター)
FMカオン、毎週(土)23時〜「BPラジオ/吹奏楽の世界へようこそ」パーソナリティもやってます。パソコンやスマホでも聴けます。5月23日(土)は、「岩井サウンドよ、永遠に〜岩井直溥 没後1周年」です

 

(2015.05.21)


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▲スタートレックのテーマ(arr.岩井直溥)
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