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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第125回
《メインストリートで》の「大編成版」とは?

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▲上記CDには《復興への序曲「夢の明日に」》大編成版を収録

 私たちが接する吹奏楽曲でいちばん多い楽器編成は、「Trp1〜3/Trb1〜3/Sax4(アルト1・2+テナー1+バリトン1)」=「3・3・4」だろう。
 もちろん、これでなくてはダメなんて決まりがあるわけでもない。作曲家の中には「吹奏楽曲は楽器編成を半ば決められているようで、窮屈だ」と考える人もいる。
 なぜこういう編成になったのかは詳述する紙幅はないが、一つには、吹奏楽コンクールの公募課題曲が、ほとんど、この楽器編成を指定していることにあるかもしれない。

 この5月10日に一周忌を迎える岩井直溥さんも、この「編成」にはしばしば頭を悩ませていた。「ポップスは、もっと分厚い響きでやりたいんだよねえ」と、よく言っていた。確かに、コンクール課題曲や、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」などの、学校吹奏楽部や市民バンド向けの岩井スコアは、一般的な「3・3・4」編成で出版されていた。
 ところが、岩井さんは、それらの多くを最初から「4・4・5」で書いていたのである。つまり、「Trp1〜4/Trb1〜4/Sax5(アルト1・2+テナー1・2+バリトン1)」である。それらが出版元の希望でカットされて「3・3・4」になっていたのだった。
 いうまでもなく、この編成は、ジャズ・ビッグ・バンドに準じている。

 岩井さんは、終戦後、東京音楽学校(現・東京藝術大学)在学中から、占領軍専用のダンスホールやキャンプで、トランペットを吹いていた(学校での専攻はホルン)。最初は小編成だったが、次第に仲間が増え、名前の通り「ビッグ・バンド」になる。そして、当時、日本で最高ランクのギャラを取っていたトップ・バンド「アーニー・パイル劇場」楽団の専属トランぺッターとなった。
 このときの編成が「4・4・5」を基本にしながら、曲によってはストリングスを入れたりする、きわめて自由な編成だった。後年、吹奏楽ポップスを手がけるようになってからも、常に、このときの「自由で分厚い編成」が頭にあった。
「本当はね、吹奏楽ポップスにチェロを入れたいんだ。チェロを1本入れて、甘い旋律をソロ演奏させると、すごくいいんだよねえ。アメリカの空軍バンドなんか、標準編成でチェロが入ってますよ」 
 と、よく語っていた。

 5月10日(日)の「岩井直溥エバーグリーン・コンサート」では、名課題曲《メイン・ストリートで》の「大編成版」が演奏される。この「大編成」とは、つまり「4・4・5」である。そして、これこそが、岩井さんの頭の中で最初に鳴り響いた、いわば本当の意味での「原典版」だったのである。


富樫鉄火(昭和の香り漂う音楽ライター)
FMカオン、毎週(土)23時〜「BPラジオ/吹奏楽の世界へようこそ」パーソナリティもやってます。パソコンやスマホでも聴けます。5月は、下記の予定です。
■シリーズ「戦後70年」/ナチスドイツの最期〜ベルリン陥落
■岩井サウンドよ、永遠に〜岩井直溥 没後1周年
■第5週土曜日は「ノンストップ・ウインド・ミュージック」

 

 

(2015.05.07)


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▲スタートレックのテーマ(arr.岩井直溥)
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