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【コラム】

富樫鉄火のグル新
第108回
さらばEMI

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

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  20年近く前、あるクラシック音楽雑誌の創刊にかかわったことがある。このとき、真っ先に飛んできて、表4広告出稿の年間契約を申し出てくれたのが、東芝EMIのクラシック部門だった。細かい条件も聞かず、N部長は「日本のクラシックCD市場を活性化させてください。応援しますから頑張って下さい」と言って下さった。私は思わず涙を流してしまった。さすがは、老舗「英EMI」の系譜だと、頭が下がった。

 結果として私はその期待に応えることができず、雑誌は短期間で消えてしまうのだが、まさかその時、「EMI」レーベルも消える日が来るとは、夢にも思わなかった。フルトヴェングラー、クレンペラー、カラヤン(フィルハーモニア時代)、クリュイタンス、ラトル、コルトー、ギーゼキング、リパッティ、デュ・プレ、マリア・カラス……私の世代はEMIの赤いロゴで育ったといっても過言ではない。

 英EMIの、事実上の日本法人ともいえた「東芝EMI」は、2007年、東芝が音楽事業から撤退したため「EMIミュージック・ジャパン」となった。同社は2012年、ユニバーサルに買収される。この時点で、日本から「EMI」の3文字を冠した会社は消えた。ただし「EMI」ロゴのCDは、ユニバーサルからリリースがつづくものだと周囲は思っていた。ファンは「黄色(ドイツ・グラモフォン)の会社から赤(EMI)が出るとは、奇妙な時代になったものだ」などと語っていた。

 ところがその直後、今度は、ユニバーサルが、傘下の「パーロフォン」レーベルを、ワーナー・ミュージック・グループに売却した。ユニバーサルに移ってからのEMIは、この「パーロフォン」傘下だったので、一緒にワーナーへ譲渡されることになった。かくして今後、旧EMIクラシックス音源は、青い「W」マークのワーナー・レーベルから出ることになった。要するに「EMIレーベルはこの世からなくなった」「今後、旧EMIクラシックス音源は、ワーナー・クラシックスとなる」のである。

 さっそく先月から、ナクソス・ミュージック・ライブラリーでは、「ワーナー音源としての、旧EMI音源」が配信されている。EMIの音を、ワーナーの名で、ナクソスで聴くことになるとは、これまた夢にも思わなかった。 

 世のすべては移り行き、変化するもので、その間、生まれてくるものもあれば、消えていくものもある。永遠なんて、ありはしないとわかっている。だけど、20年前に、海のものとも山のものともわからない雑誌のために飛んできてくれた、東芝EMIのN部長の顔を思い浮かべると、またも涙が出そうになるのである。


富樫鉄火(昭和の香り漂う音楽ライター)
FMカオン、毎週(土)23時〜「BPラジオ/吹奏楽の世界へようこそ」パーソナリティもやってます。パソコンやスマホでも聴けます。11月は「全英ブラスバンド選手権・課題曲、栄光の歴史」前後編です!

(2014.11.04)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権・公衆送信権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
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