吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー
【コラム】

富樫鉄火のグル新
第105回
真のインターナショナルとは

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)
*本文に埋め込みリンクがあるので、カーソルでなぞりながらお読みください。

 先日、ある取材で、九州の山奥をまわった。現地のライターの方の案内だった。
「近くに、食事がおいしいことで有名な、知る人ぞ知る秘湯の宿があるらしい。泊まってみませんか」
 聞けば、九州では、盛んにテレビや新聞で紹介されており、東京から来る客もいるという。たまには、そんな出張もいいだろうと、ライター氏の薦めに従ってみた。

 その宿は、以前は人跡未踏だったと思われる山間の中腹にあった。山肌に寄り添うように、離れの個室が、いくつも建っている。それぞれに半露天の風呂が付いていた。
 私のようなオヤジがイメージする温泉宿は、大広間、宴会の嬌声、三味線の音色、ギシギシいう廊下や階段、大浴場……だが、最近は、そういうのは流行らないらしい。
 食事は、食事処で供された。高額料金の客は、これも個室。我々は最低料金なので、大広間である。女性の仲居さんは、いない。従業員は、若いイケメン男子である。和洋折衷の衣服に、インカムを耳に付けている。まるで昔のディスコの黒服だ。若い女性客は、なかなか楽しそうである。

 この食事がひどかった。席に着くと、すでに大量の和食がぎっしりと並んでいる。確かにすごいヴィジュアルだ。ところが、かなり早い時間から置かれていたようで、刺身など乾いてしまっている。小鍋のしゃぶしゃぶ用の牛肉に至っては、干からびて、縮んでいた。案の定、料理すべて、かなり不味かった。和食は、一品ずつキチンとつくって出すべきだと思うのだが(さすがに串揚げは途中で出た)。それでも女性客は、みなさん、歓声をあげて「すごい」「美味しい」と、大喜びである。

 以前、ニューヨークで、アメコミ編集者と会ったら、「座頭市」にあまりに詳しいので驚いたことがある。現地ケーブルTVでは大人気で、全部観ているんだそうだ。どこがそんなにいいのかと聞いたら「徹底してドメスティックなものこそが、真のインターナショナルだ。カツ(勝新太郎)のイチ(市)は、ジャパンそのもの。イチこそ世界に通用するキャラクターだ。ぜひ、デアデビルと共演してほしい」と、興奮気味に話していた。外山雄三《管弦楽(吹奏楽)のためのラプソディ》が海外で受けるのと同じ理屈か。
 その理屈に従えば、あの九州の宿も、個室やイケメンや派手な料理なぞやめて、地元の女性仲居さんで、ヤマメなどの川魚に麦飯でも出して、「健康粗食」を売りにするほうが、今の時代、受けるんじゃないだろうか。まあ、それでは女性客は来ないだろうけど。
(敬称略)


富樫鉄火(昭和の香り漂う音楽ライター)
FMカオン、毎週(土)23時〜「BPラジオ/吹奏楽の世界へようこそ」パーソナリティもやってます。10月11日(土)は、「ウォルトンを降ろせ! 映画『空軍大戦略』事件」です。パソコンやスマホでも聴けます。


(2014.10.08)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権・公衆送信権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
 
 
 
 
 
 
jasrac番号吹奏楽マガジン バンドパワー