吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー
【コラム】

富樫鉄火のグル新
第102回 劇評/「変容」シェイクスピア2題

ツィッターほど短くもなく、ブログほど個人的でもない、
同じような話題をグルグルめぐるけど、基本は最新の話題。グル新。

バックナンバーは最下段「目次ページへ」からお入り下さい)
*本文に埋め込みリンクがあるので、カーソルでなぞりながらお読みください。
国立劇場『不破留寿之太夫』
シェイクスピア=作/鶴澤清治=監修・作曲/河合祥一郎=脚本/石井みつる=美術

 生誕450年で相次ぐシェイクスピア公演だが、面白い「変容」舞台を2つ観た。
 まずは国立劇場の制作による、新作文楽『不破留寿之太夫』[ふぁるすのたいふ]。下地は『ウィンザーの陽気な女房たち』(フォルスタッフの二重恋文の場。ただし洗濯カゴの場面はなし)と『ヘンリー四世』(フォルスタッフ追放の場)。ラスト、不破留寿(桐竹勘十郎)の戦争を憎むせりふのあと、客席の中を静かに去っていく姿など、悠揚迫らぬ魅力があった。全編に変奏曲のようにちりばめられた《グリーンスリーヴズ》の使い方なども見事だった(監修・作曲・三味線=鶴澤清治)。【注1】

 だが、人形も衣装も舞台も現代的なデザインのため、どこか辻村ジュサブローの人形劇のようだったのも事実。特にお早(クイックリー夫人)など、マスカラにアイシャドウで、高級クラブのマダムのよう。不破留寿の頭[かしら]も、団七や陀羅助の変形ではだめだったのだろうか。 
2009年の『天変斯止嵐后晴』[てんぺすとあらしのちはれ]でも感じたが、「西洋演劇の文楽化」は、どうしても「現代人形劇」になりがちだ。今回も、一瞬、『妹背山』の道行が登場したが、もっと推し進めて、文楽の世界観の中にシェイクスピアの骨子を持ち込めないものか。『曽根崎心中』と『ロミオとジュリエット』、『夏祭浪花鑑』と『リチャード三世』など、通底するものがあるように思うのだが。

華のん企画/子供のためのシェイクスピア『ハムレット』
脚本・演出=山崎清

 もう1本は、華のん企画による恒例の「子供のためのシェイクスピア」で、本年は『ハムレット』の再演。小田島雄志の訳本をもとに再構成、要所にコメディ要素を入れ、2時間で見せる
冒頭は、ラストの大殺戮直後のシーン。ノルウェー王子フォーティンブラスがホレイショーから悲劇の経緯を聞く回想形式で物語が進む。これはうまい改変で、過去にノルウェーとの間に何があったかも描かれ、物語に深みが出た。

  時折不思議なことを口走るポローニアス(山口雅義)を、徹底的な変人にしたのも痛快だった。「いい服を着ろ、カネの貸し借りはするな」の名説教で、あんなに笑わされるとは! クローディアスの福井貴一も見事な造形。
 平日夜だったせいか、客席に「子供」は見当たらなかったが(もともとこの公演に「子供」客は少ない)、それも無理はない。このアレンジの面白さは、ある程度シェイクスピアを知らないと、楽しめない。【注2】

蛇足ながら、このカンパニーで、トム・ストッパードの『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』を観たくなったのは、私だけではないと思う。主役の2人は、もちろん井沢麿紀と戸谷昌弘だ。(敬称略)

※『不破留寿之太夫』は国立小劇場で9月8日、『ハムレット』は池袋あうるすぽっとで9月11日、観劇。

 

【注1】『ウィンザーの陽気な女房たち』に≪グリーンスリーヴズ≫が流れる理由、【注2】そのほか、様々なタイプの『ハムレット』については、9月20日(土)23時のFMカオン「BPラジオ/吹奏楽の世界へようこそ」再放送をお聴き下さい。

富樫鉄火(昭和の香り漂う音楽ライター)
FMカオン「BPラジオ/吹奏楽の世界へようこそ」のパーソナリティもやってます。9月は、シェイクスピア特集と岩井直溥さん追悼(再放送)です。


(2014.09.16)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権・公衆送信権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
 
 
 
 
 
 
jasrac番号吹奏楽マガジン バンドパワー