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【コラム】

富富樫鉄火のグル新
第100回 劇評/文学座の「シェイクスピア祭」

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文学座「シェイクスピア祭」

 


 シェイクスピア生誕450年の今年、老舗劇団の文学座が、「シェイクスピア祭」 と銘打って、本公演や研究所公演のほかに、「リーディング公演」を連続開催している。これが(失礼ながら)本公演よりずっと面白い。大ベテラン・加藤武が着物で演じたアントーニオ。『ロミオとジュリエット』を江戸に移した新作『夏祭恋逝殺』。同一キャストで上演された『ウィンザーの陽気な女房たち』と、その元ネタのような『アビントンの焼きもち女房たち』(ヘンリー・ポーター作)。どれも正典の枠を超える意欲的な舞台ばかりである。

 中でも印象に残ったのが『タイタス・アンドロニカス』(西本由香演出/4月下旬、新モリヤビル第1稽古場にて)で、「リーディング」(朗読)といいながら、誰一人台本を手に持たない、いわゆる普通の「芝居上演」だった(ほかの演目でも、時々、台本なし上演があった)。ジェット・コースターのような“殺人オン・パレード”悲劇を、さらに凝縮し、シンプルな衣装と小道具で、軽やかに見せてくれた。殺された人物は、首からスカーフを外し、そっと地面に置く。この「死」の演出が、血なまぐさい物語を美しく昇華させているようで印象的だった。

 有名な、ラストの人肉パイの場面はコメディすれすれの演出。高橋克明のタイタスはヤクザの親分のようで、なかなか痛快。「娘を手篭めにし、舌を切り取った2人は、すでに焼かれて、そのパイの中に入ってるんだ。母親が、いま旨そうに食ったばかりだ。自分が産んだ肉を、自分で食ったんだ! ワハハハ!」 息子の人肉パイを食べてしまった女王タモーラ。演じる奥山美代子も“怪演”といいたくなる迫力だった。暴力に暴力で応えることしかできない人間たちの姿は、十分、現代にも通じる。もう少し手を加えて、本公演かアトリエ公演にできるのではないかとさえ、思った。

 春にスタートした「シェイクスピア祭」は、すでに12演目が上演されており、今後、年末までに7演目ほどが控えている。中にはハイナー・ミュラーの問題作『ハムレット・マシーン』や、太宰治『新ハムレット』などもあるようだ。どれも90〜120分ほどのダイジェスト上演だが、試験上演のレベルを超えている。これがたった1,000円で見物できるのだから、芝居好きにはたまらない。

 大劇場での、練りに練った演出・衣装・美術による芝居もいいが、稽古場やアトリエのような小さな空間で、ダイジェストで気軽に楽しむシェイクスピアも、意外といいものだと思った。生誕450年といわず、年に1〜2回は、こういう試みを続けてほしい。(敬称略)

(参考)シェイクスピア『タイタス・アンドロニカス』は、ミュージカル『ライオン・キング』の演出家ジェリー・テイモアによって、映画化されています。 

富樫鉄火(音楽ライター)
FMカオン、毎週(土)23時〜「BPラジオ/吹奏楽の世界へようこそ」パーソナリティもやってます。9月6日(土)は「吹奏楽で聴くシェイクスピア」を放送します(20日再放送)。パソコンやスマホでも聴けます。


(2014.09.02)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権・公衆送信権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。
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