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富樫鉄火[音楽ライター]

 吹奏楽に携わっていれば「岩井直溥」の名前を知らない人はいないでしょう。1972年以来、今日まで、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」(NSB)シリーズにおける編曲・指揮者として、楽しい吹奏楽ポップスのスコアと演奏を、私たちに提供しつづけてくれている、超ベテラン作曲家・編曲家・指揮者です。

 いまの若い方々には想像もつかないでしょうが、NSBが登場するまで、中学高校の吹奏楽部がポップスを演奏することなど「ありえない」ことでした。吹奏楽はクラシック編曲やマーチ、オリジナル曲を演奏するもので、ビートルズやバカラックを演奏するなど「許されない」ことだったのです。「センセ〜、もっと楽しい曲を演奏したいんですけど〜」……しかし、音楽室でドラムセットを叩くなんて「とんでもない、ダメ!」、エレキ・ベースは「不良のやる楽器だ、ダメ!」、中学生がミュートでプワ〜ンすると「何をふざけてるんだ、ダメ!」……。

 そんな状況下、吹奏楽ポップスの楽しさを少しでも多くの若者に知ってもらおうと、1972年、岩井直溥氏はNSBをスタートさせました。しかも楽譜と音源を発表するだけでなく、日本全国をクリニックやゲスト指揮でまわりつづけ、吹奏楽ポップスに対する偏見を、実地指導で解いてまわったのです。

 つまり、いま中高生が当たり前のように学園祭や定期演奏会でポップスを演奏できるのは、岩井直溥氏のおかげなのです。まさに「吹奏楽ポップスの父」といえましょう。

 しかし岩井直溥氏の84年の人生の中で、吹奏楽にたどりつくまでには、実にさまざまな音楽との出会いやドラマがありました。
  少年時代、中国・上海で初めて出会ったトランペット。
  東京芸大に合格したはいいものの、トランペット専攻が満員だったのでホルン専攻にまわされた「不条理」。
  戦後の占領下、米軍キャンプやクラブで吹いて吹いて吹きまくった日々。
  フランキー堺(ドラマー、俳優)と出会って、クレージーキャッツの原型ともいえる「冗談ジャズ音楽」を開拓。
  東芝EMIで超人的な量の歌謡ポップス編曲指揮をこなし、弘田三枝子、森山加代子、スリーファンキーズといった大スターを育てる。
  ……これらすべてが下地となって、NSBを始めとする吹奏楽ポップスの世界が誕生したのです。

 そして、この波乱万丈の日々は、「昭和」の63年間を見事にカバーしています(岩井氏は大正12年10月、関東大震災の1ヵ月後に生まれたのです!)。つまり岩井氏の人生は、そのまま昭和史とイコールだともいえるのです。

 このたび、指揮やクリニック、編曲作業などでいまでも日本中を飛び回る、そんな多忙な日々の合間を縫って、岩井氏から長時間インタビューの機会をいただきました(現在もつづいています)。年齢を感じさせない若々しい岩井氏の証言は、吹奏楽に携わる人たちにとって、「驚愕」「感動」「新発見」の連続です。博物館級の貴重な資料も、全面提供していただきました。

 これらをまとめ、岩井氏の語りを聞き書きで再現する大型連載『吹奏楽ポップスの父、昭和大爆走! 岩井直溥自伝』をスタートいたします。
  1972年、NSB初登場の瞬間を中学吹奏楽部員として経験した私にとっても、たいへん興味ある話です。これほどドラマチックな人生を送ってきた音楽家は、そうはいないでしょう。
  ぜひ、多くの方々に、楽しみながら読んでいただきたいと思います。

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その輝ける軌跡。巨匠、初の吹奏楽オリジナル作品集がついに登場!


『EVERGREEN 〜岩井直溥作品集〜』

岩井直溥&東京佼成ウインドオーケストラ

 日本音楽界の生き証人、岩井直溥の自作自演による吹奏楽オリジナル作品集。名アレンジャーとして名を馳せる氏の吹奏楽オリジナルといえば、70〜80年代にかけて綺羅星のごとく輝いたコンクール課題曲が有名だが、このアルバムではさらに自由曲として全国大会での演奏経験もあるオリジナル作品や、秘蔵の名曲も収録。岩井×TKWOのゴールデン・タッグによるこの記録は、日本吹奏楽にとって大いなる遺産となるであろう。

BPショップにて発売中 http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1548/

【収録曲】

編曲・作曲:岩井直溥(Naohiro Iwai) 【全曲】

1. シンコペーテッド・マーチ「明日に向かって」 【3:29】
   Syncopated March "Asuni-Mukatte"

2. ポップス・オーバーチュア「未来への展開」 【4:42】
   Pops Overture "Development toward the Future"

3. ポップス描写曲「メイン・ストリートで」 【5:01】 
   On Main Street

4. ポップス変奏曲「かぞえうた」 【5:09】 
   Pops Variation "Kazoeuta"

5. ポップ・コンサートマーチ「すてきな日々」 【4:24】 
   Pops March "Wonderful days"

6. Jump Up Kosei 21 【7:46】  

7. 詩曲「渚の詩」 【8:50】  

8. 響きかぎりなく 【7:02】 

9. あの水平線の彼方に 【11:38】

【ボーナストラック】

10.靴が鳴る/弘田龍太郎(arr.岩井直溥)

BPショップにて発売中 http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1548/


(2008.05.20)


 
 
 
 
 
 
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