吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー

【レポート】

東京佼成とエイベックスが贈る「夢の吹奏楽企画」!

《THE 課題曲=SHOWA編=》 (仮称)
発売は7月予定。

 

レポート:福田滋

  大ヒット作「ブラバン!甲子園」以来、素晴らしい夢の企画を実現している東京佼成ウィンドオーケストラ。その最新のレコーディング現場へ潜入してきた。

 エイベックスと佼成ウィンドの録音は、今回で2度目。前回は“ブラバン・エイベックス”というJ−POPを録音したものが2月27日に発売になったが、今回の録音は過去のコンクール課題曲の中から名曲をよりすぐった、タイトルもずばり、《THE 課題曲=SHOWA編=》 (仮称)となっている。発売は7月予定。

 実は録音していたホールが私の仕事場の近くということもあり佼成側から「ちょっと遊びに来たら?」と嬉しい誘いがあったので、差し入れを手に訪問した次第。

 ホールの扉を開けるとさっそく何やら懐かしいサウンドが迫ってきた。おやっ、これは青木進作曲「フェリスタス」ではないか? 第27回大会(1979年)の課題曲(A)である。この年の前後はとくに心に残る課題曲が多いと記憶している。
 この時代の課題曲は最近のもの(失礼!)と違って聴きやすい。曲の構成がしっかりとしていてメロディーが美しいという解りやすさが安堵感を与えてくれる。
 気になる曲目は下記の通り(順不動)で、指揮はお馴染みの山下一史である。

1.吹奏楽のための協奏的序曲(藤掛廣幸)1976【B】
2.高度な技術への指標(河辺浩市)1974【B】
3.吹奏楽のための「シンフォニック・ポップスへの指標」(河辺浩市)1975【D】
4.ジュビラーテ(R.ジェイガー)1978【A】
5.フェリスタス(青木進)1979【A】
6.イリュージョン(鵜沢正晴)1981【A】
7.ポップス描写曲「メインストリートで」(岩井直溥)1976【D】
8.ディスコ・キッド(東海林修)1977【C】
9.吹奏楽のための「深層の祭」(三善晃)1988【A】
10. 風紋(保科洋) 1987【A】
11.行進曲「オーヴァー・ザ・ギャラクシー」(斎藤高順)1980【D】

 といったラインナップでなんとも懐かしい。
 私事で恐縮であるが、岩井直溥先生のポップス描写曲「メインストリートで」は、当時の模範演奏のカセット録音に参加したこともあり感無量…。
 録音現場は、レコーディング・ディレクターの野田智子さん(桐朋学園音楽大学ピアノ科卒、BMG、ファンハウスを経て、98年にユニバーサルミュージックに入社、フィリップス・レーベル、レーベルマネージャーを一貫して音楽企画制作を担当。93年に制作した『ピーターと狼』〈小澤征爾指揮・ボストン交響楽団〉はゴールド・ディスク賞受賞。)の的確なディレクションと指揮者山下氏の段取りの良さで実に効率的に録音が進行している。こうした録音では極力無駄を省くことが重要で、演奏者にストレスがなく新鮮な演奏が保てるのである。

 佼成ウィンドの底力を感じたのは、プレイバックの時。ほとんど全員が楽譜を持ち、録音室に終結。バランスや響きを確認するその真剣な表情は凄い。このメンバーにして常に全力で上を目指す真摯な姿勢。トップランナーとしても誇りが垣間見えた瞬間であった。
佼成ウィンドは、今年に入ってすでに5回目の録音(まだ3月なのに)だそうである。ということで練習時間がとれず、録音前日に1回の練習をして2日間で収録というタイトなスケジュールである。いやはや人気バンドも楽じゃない(笑)。

 休憩に入り楽屋に指揮者の山下一史氏を訪ねた。
 「いや〜、メンバーは懐かしくてしょうがないのだろうけど、僕にはまったく思い入れがない(笑)。今回の中では三善先生の「深層の祭り」と保科先生の「風紋」が過去に指揮をしたこともあり知っているくらい。メンバーは作品を良く知っているので怖いですよ。それにしてもしっかりとした作品が多いですね。この時代の良い課題曲を芸術作品として紹介することにより、吹奏楽関係者はもちろん、他の分野のリスナーにも、吹奏楽ってこんなに良いものですよ、と紹介できるのです。」と熱く語る。

 この日コンマスを務めたサクソフォン奏者、田中靖人氏は「懐かしいですよ。今吹いていた曲(フェリスタス)は、僕が高校の時に吹いた課題曲ですからね。タイトな練習時間の割に良い演奏でしょう?」と語る(どおりで冒頭のアルト・サックスのソロが素晴らしいはずである)。
 ライブラリアンの小野寺氏も「この時代の課題曲の多くは、実績のある作曲家にお願いしていたので質が高いですね。良い意味で展開が読める安心感があります。その上にコンテストの課題曲として、クリアしなくてはいけないことも多く含まれているのです。」と的確に分析。確かに今の作曲家に、そこまで考えて作曲している人がどこまでいるのか。「まずは選考審査に通ること」といった事情がちらつくのは私だけではあるまい。それにしても今回の課題曲、聞いていて実に良く鳴る作品が多い。
 休憩の合間に、今演奏した課題曲のメロディーを口ずさんだり、口笛を吹きながらコーヒーを飲んでいる団員のひとりが「我々は良い時代に育ったねぇ」とつぶやいたのが妙に印象的に残った。

 なお、この日はNHK「瞳」テーマ曲(山下康介)の収録も行なったが、これは来月エイベックスから発売される、NHK連続テレビ小説オリジナル・サウンドトラックにボーナス・トラックとして挿入されるそうで、楽譜も出版される模様。ソリストはトロンボ−ンの中川英二郎氏で、これまた楽しみな企画である。

 この日、差し入れのお礼に昼食までご馳走になり恐縮してしまった。この録音に関係する人々の熱い意気込みに触れ、桜の蕾が開き始めた春の日差しの中を気持ちよく帰路に着いた。

■収録日/2008年3月25、26日
■会場/和光市民文化センター“サンアゼリア”

【レポート:福田滋】

福田滋プロフィール:武蔵野音楽大学卒業。吹奏楽の他にオーケストラ、邦楽、合唱を通じ日本人作曲家の作品紹介をライフワークとしている。一方、コンサートプロデューズ、CD解説&デザイン、音楽現代などに執筆中。現在、陸上自衛隊中央音楽隊勤務。リベラ・ウインド・シンフォニー音楽監督、鶴ヶ島市音楽連盟副会長、彩の国県民芸術文化祭運営委員。2001年長年の文化活動の功績により鶴ヶ島市より特別表彰。

【レコーディング風景】

■レコーディング全景

■指揮者との打ち合わせ中
■当日のスケジュール
■筆者と指揮の山下一史氏

(2008.03.31)



吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
jasrac番号吹奏楽マガジン バンドパワー