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九州管楽合奏団
指揮:金洪才

◎吹奏楽オリジナル名曲だけで勝負! 潔い九州管楽合奏団

 九州で唯一のプロ吹奏楽団という「九州管楽合奏団」(九管)の演奏会を、福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)で聴いた。

 九管は、九州交響楽団のクラリネット奏者・水崎徹が代表となって、2004年に結成された。メンバーは、九響を中心に、九州方面で活躍するプロの管打楽器奏者たちで構成されている。

 活動目的としては「吹奏楽を教育の場から音楽芸術の場へ引き上げる」「九州在住の優秀な演奏家に活動の場、技術向上の場を与える」「管楽器・打楽器の可能性を模索する」などが掲げられている。

 現在は、年に1回ずつの定期公演とポップス・コンサートを中心に、九州各地のイベントや音楽鑑賞教室などをこなしているようだ。福岡県宗像市の「宗像ユリックス・ハーモニーホール」とフランチャイズ契約を結び、同会場と「福岡シンフォニーホール」の二箇所を中心に公演をこなしている。

 特に首席指揮者などは置いていないようだが、いままでに、下野竜也、金洪才などを迎えている(今回も金洪才の指揮だった)。ポップスのほうは、人気サックス奏者オリタ・ノボッタが指揮・プロデュースをしている。

 今回聴いたのは、第3回にあたる定期公演。その最大の特徴は、基本的に「吹奏楽オリジナル名曲」、しかも古典的名曲だけで構成されている点であろう(ただし、時期的にコンクール課題曲の模範演奏もある)。

 たとえば、2005年の第1回の曲目を見てみると、ヒル《セント・アンソニー・ヴァリエーションズ》、ヴォーン=ウィリアムズ《イギリス民謡組曲》、兼田敏《吹奏楽のためのパッサカリア》、三善晃《深層の祭り》、ネリベル《交響的断章》、マクベス《第7の封印》(+課題曲)。

 2006年の第2回は、クリフトン・ウィリアムズ《ファンファーレとアレグロ》、リード《イン・メモリアム》、スミス《フェスティヴァル・ヴァリエーションズ》、ジェイガー《吹奏楽のための交響曲》(+課題曲)。

 そして今回の第3回が、モートン・グールド《アメリカン・サリュート》、ジェイコブ《オリジナル組曲》、ニクソン《太平洋の祭り》、チャンス《呪文と踊り》、ジャンニーニ《交響曲第3番》(+課題曲)。

 この曲目を見て、どう感じるだろうか。団員たちが若い頃にやった曲なのだろうか。あるいは、純粋に、次世代に伝えるべきとの思想で選曲されたのだろうか。とにかく最新曲など1曲もないのだ。

 私は、いまどき珍しい、こういった正攻法のオリジナル名曲で挑んでいる姿勢に、潔さを覚えた。少なくとも、私のようなオジサン世代には、一種の懐メロであると同時に「ひさびさ、プロによるナマ演奏で聴いてみたい」と感じさせる構成でもある。特に、各公演の最後に置かれた大曲は、現在、CD音源などでも、そう簡単には入手できない曲ばかりだ。よくぞ、このようなプログラムで、あれほどの大ホールで興行を打つものだと、脱帽したい気分である。

 演奏も、たいへんこってりした、それでいて大音響ばかりに頼らない整然としたもので好感を覚えた。金洪才の的確なタクトさばきも見事だった。

 それだけに、かえって強く感じたことがある。会場の若い人たちに、このコンサートはどう映ったのであろうか?

 会場には、中高生の姿が多く見られた。彼らのお目当ての多くは、課題曲の模範演奏にあったであろう。

 いまの時期、どこの吹奏楽コンサートへ行っても課題曲ばかりになるのは仕方がない。興行である以上、集客のためにそうせざるを得ないのも当然といえる。

 だが、せっかくあんなにたくさんの中高生が来たのだ。ぜひ、彼らに、あの名曲群を、じっくりと全身に染み込ませて帰ってほしいと願うのは、私だけではあるまい。というのも、課題曲以外の曲になると、つい白河夜船になっている中高生が、周りにたくさんいたからだ。実にもったいないと思った。

 そのために、簡単でいいから、MC(解説)を入れながら進行してもいいのではないかと思った。これらが、どういう曲なのか。かつてコンクールでどれほど人気があったか。特に中高生向けの解説をしてあげては、と。

 たとえば《呪文と踊り》が、かつてのコンクールで大人気曲だったこと、作曲者チャンスが打楽器出身だけに7人の打楽器奏者が大活躍すること、名曲《朝鮮民謡の主題による変奏曲》と似たような打楽器構成であること、あるいは、彼が電流フェンスに触れて40歳そこそこで感電死してしまい、それゆえ作品はそう多くないこと――そんなことを、ちょっと耳に入れてあげるだけで、会場に来ていた中高生たち(特に打楽器担当)の注目度は、さらに高まったと思う。

 定期公演は、音楽鑑賞教室じゃないんだから、そういう「解説」は、プログラムで十分――との声もあるだろう。だが、私自身、いくつかのプログラム解説を書かせていただいているから分るのだが、コンサートに来て、事前にプログラムをじっくり読み、それを頭に入れてナマ演奏に接する人は、そうそういるものではない。組曲や交響曲で、楽章間で焦って拍手をしかけてしまう聴衆が必ずいるのが、その証拠だ。

 九管の定期公演は、そんなMCを入れる価値のある、たいへん重要なことをやっているような気がする。だからこそ、そんなことを考えてしまった次第である。同時に、特に各公演の最後に置かれる名曲は、可能であれば、レコーディングして、九州以外の多くの人たちに知ってもらいたいとも思った。

 九管の今後の活躍を、大いに期待したい。

<敬称略>

(2007.05.23)


【プログラム】

○モートン・グールド:アメリカン サリュート
  (「ジョニーが凱旋する時」による)
○ジェイコブ:オリジナル組曲
○ニクソン:太平洋の祭り
○チャンス:呪文と踊り
○ジャン二ーニ:交響曲第3番
○2007年度吹奏楽コンクール課題曲

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