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なにわオーケストラルウィンズ
第五回記念・東京へ出前公演

◎吹奏楽の魅力満載!
なにわオーケストラルウィンズ、初の東京「出前公演」!

 いままで、東京にいたのでは、ライヴCDでしか聴けなかった「なにわオーケストラル・ウィンズ」(NOW)が、ついに東京にやってきた。

 NOWとは、主として関西のオーケストラやフリーで活躍するプロの管打楽器奏者によって年に一回結成される吹奏楽団である(もっとも、関西以外の奏者も約3割ほどいるようだ)。今年で5回目の公演となる。

 初の東京公演ということで、チケットの売れ行きが心配されていたようだが、たいへん奇妙なことに、会場の2階がほぼガラ空きで、1階、3階がほぼ満席という不思議な状況だった。実は事前に「前売り完売」というような情報が流れており、どうやらチケットの販売方法に若干のミスがあったようだ。そのため、「チケットはあるのに、買いたい人が入手できない」状況だったようだ。ネットによる前売り分が早々と完売したのでそのような噂が流れたのかもしれない。

 ところでNOWだが、指揮は、もう紹介不要、大阪府立淀川工科高校の丸谷明夫先生を中心に、毎年、話題のトップ高校バンドの先生が客演で参加する。今年は、鹿児島県立松陽高校の立石純也先生が加わった。立石先生&松陽高校といえば、2004、05年とコンクール全国大会で、史上初めて、鹿児島県に金賞をもたらしたコンビである。

 つまりこのNOWは、トッププロの奏者たちを、トップアマチュア指導者が指揮するという、考えてみればたいへん珍しい形態のバンドなのである。実は私自身、いままでライヴCDで聴いてきただけだったので、その意味をあまり理解できなかったのだが、今回、初の東京「出前公演」に接して、はっきり理解できた。

 つまり、奏者たちの多くは吹奏楽部出身であり、彼らにとって丸谷先生は、(特に関西では)大スターである。その丸谷先生に指揮してもらいたいという、勝手な言い方をすれば、高校時代に果たせなかった夢を、いま、実現させているのでは……そんな風に感じられた。現に奏者たちは、丸谷先生をたいへん信頼し、尊敬し、楽しんで演奏している様子だった。

 そしてNOWは、そんな奏者たちの喜びや遊び心が十二分に溢れ出た、実に楽しいステージだった。ひさしぶりに、楽しい吹奏楽コンサートに出会ったような気分であった。

 内容は、毎回、大きく3つに分かれている。つまり「最新曲」「名曲」「課題曲」実験コーナーである。

 特に「課題曲」実験コーナーは、いままでライヴCDの音だけで接してきたのを、初めて、視覚でも確認できて、たいへん面白かった。「木管」と「金管」を、ステージ上で左右に分けて配置し、演奏してみる。同一旋律を吹くパートのみが固まって演奏してみる。普段、目立たない楽器(アルトクラリネットとかバスーンとか)を前方でフィーチャーして演奏してみる。指揮者なしで演奏してみる……等々。それらは、長年、普通の配置・演奏を見てきた目には、あまりにも異常な光景である。

 しかもX番まで含めて全5曲が演奏され、そのうちの3曲は、通常演奏と実験演奏の2回ずつ演奏されるという贅沢さである。

 丸谷先生自身が「こういう風にやりなさい、と言ってるんじゃないんですよ。あくまで、こういう配置にして、みんなで考えましょう、という提案ですよ」と、苦笑しながら言うだけあって、こんなことやって何になるのかと言われればそれまでなのだが、それを大真面目にやる丸谷先生とNOWには、笑わされるやら、確かに響きの違いに頷くやら。とにかく、これら異常配置のヴィジュアルだけでも、見る価値はあった。

 ほかに「新曲」は、ライニキー《蘇る火の鳥》、エレビー《アンデルセン物語》。

 「名曲」は、ジェイコブ《ウィリアム・バード組曲》、リード《春の猟犬》、ヴァンデルロースト《アーセナル》、アーノルド《HRHケンブリッジ公》、そして最後に久々登場の大曲、オーウェン・リード《メキシコの祭り》全曲。

 その1曲ずつを述べている紙幅はないが、どれもたいへんこってりした分厚い演奏で、「そうそう、こういう感じこそが吹奏楽なんだよなあ」と、少々懐かしくさえ感じられた。聴き間違いかもしれないが、もしかしたら《春の猟犬》などは、キュー符も一部ダブって吹いていたのではないだろうか。《アーセナル》のコーダ部なども、通常よりじっくりたっぷりしたテンポで、背筋を何かが走る感じだった。

 《メキシコの祭り》も実に久しぶりに聴いたが(しかも3楽章全曲!)、本来が「交響曲」として作曲されたのがよく分る、スケール感たっぷりの演奏だった。

 アンコールもこれまたたっぷりで、矢部政男《マーチ・エイプリル・メイ》(93年課題曲)、美空ひばりの名曲《川の流れのように》、宮川泰《ゲバゲバ90分のテーマ》と3連発である。

 この3曲をご存知の方なら、アンコールだけでもたいへんうまく構成されているのが分るだろう。特にオーラスの《ゲバゲバ90分》など、まさに吹奏楽の魅力大爆発、かつ、われらオジサン世代には涙チョチョ切れである(この曲の指揮中、丸谷先生が、プラカードを持って行進する仕草をした意味が、若い方々には分るだろうか)。

 丸谷先生のユーモアたっぷりの司会。立石先生の人柄を感じさせる真摯な指揮姿。乗りに乗って楽しんでいるNOWのメンバーたち。

 「これぞ吹奏楽コンサート!」と言いたくなる、3時間超を長く感じさせない、サービス精神十二分のコンサートであった。

 ぜひとも、来年はチケット販売方法をうまく構築していただいて、再び東京に来ていただきたい。待ってますよ!

(2007.05.15)


【プログラム】

○蘇る火の鳥:ライニキー
○ウィリアム・バード組曲:ジェイコブ
○春の猟犬:A.リード

○実験的2007年度吹奏楽コンクール課題曲全曲

○アーセナル:ヴァンデルロースト
○HRHケンブリッジ公:アーノルド
○アンデルセン物語:エレビー
○メキシコの祭り:O.リード


客演指揮:
丸谷 明夫(大阪・淀川工科高校吹奏楽部)
立石 純也(鹿児島・松陽高校吹奏楽部)

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