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21世紀の吹奏楽 第10回“響宴”
(夜の部)

 昼の部の興奮納まらぬ中、終演より1時間ほど経った18時から、第10回響宴・夜の部が行われました。では早速、夜の部の演奏会を覗いて見ましょう。

 まず夜の部最初の演奏は、川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団です。
 1曲目は、坂田雅弘作曲《祝典の為のファンファーレとコラール》です。さわやかなサウンドとハーモニーがタイトルの通りとても親しみやすい作品に感じました。劇版に使われる感じの親しみやすいサウンドが、好感の持てる作品だと思いますが、実際に演奏するとなると、やや難しく感じる作品だと思います。演奏会の1曲目でもトリでも良いスタイルの作品だと思います。

 2曲目は、八木澤教司作曲《コロポックルの棲む渓谷「神居古潭」》です。
 客演指揮にリンダ・ムーアハウス女史を迎えての演奏でした。タイトルの『神居古潭』とはアイヌ語で「神のいるところ」という意味を持ち、そこにはコロポックル族というとても小さな妖精が棲んでいたと言われているそうです。ゆったりとしたコラール風なサウンドから始まり、速い部分へと移行していきます。自然
の壮大な風景だけでなく、妖精の見える景色も同時に描かれているようで、表現のコントラストを楽しむ作品だと思います。

 3曲目は、真島俊夫作曲《鳳凰が舞う 印象、京都 石庭 金閣寺》です。
 この作品は、昨年の12月にフランスのリールで開催された「クードヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクール」で見事グランプリを受賞した作品です。日本を始め京都など、西洋音楽を用いて日本の情景や歴史、文化を表現している作品は数多くありますが、この作品はその中でもとても秀逸に描かれている作品の1つだと思います。演奏するにあたりとても難易度が高い作品ですが、とても素晴らしい演奏でした!演奏効果はとても高く、コンクールを始め演奏会のトリとして取り上げるに相応しい作品だと思います。


 続いて、SHOBIz Pops Orchestraによるステージです。
 今回は、ポップスへの提言ということで、作曲家の真島俊夫氏による講座が開かれました。吹奏楽にとってジャズ・ポップスは重要なレパートリーの1つで、この分野にも精通された吹奏楽界でも活躍されている3人作曲家が、オリジナルのビックバンドの作品を書き下ろしたそうです。また、同じメロディーを使って吹奏楽版にも編曲したりと、そのコントラストを聴いて楽しむというコンセプトでした。またゲストには、トランペッター数原晋氏、ドラムに阿野次男氏、エレキベースに明光院正人氏、エレキギターに田附透氏、トロンボーンにフレッド・シモンズ氏と、素晴らしいプロのミュージシャンも加わり、華やかなステージとなりました。
 ビックバンド版オリジナル作品は、それぞれの作曲家の特徴が出ていて、華やか・渋さ・楽しさなどと、素敵なオリジナル作品ばかりでした。続いて、それらのメロディーをモチーフに、吹奏楽版に作曲者とは違う人たちが編曲することで、編曲者の個性あふれる作品に生まれ変わっているのがとても面白かったです。ビックバンドという編成は、小編成の吹奏楽のスタイルの1つです。それを更に見方・考え方を変えると、通常の吹奏楽作品をビックバンドでも用いられている楽器を使用することで、演奏できてしまうのではという事に行き着くと思います。つまり私が普段提言しております「足らない楽器パートをピアノで補おう」ということに繋がっていくと思いました。


 休憩を挟んで、最初のバンドは神奈川大学吹奏楽部による演奏です。
 1曲目は、寺井尚行作曲《ウィンドオーケストラのための「時間が空を舞う」》です。この作品も今回の委嘱作品です。寺井氏が、信州・越後・越中と旅行して感じたものをヒントとしてかかれた作品のようです。氏が見たもの感じたものをそのまま音にしているようで、とても素朴かつ素直な作品に聴こえてくるような感じがします。現代的な作品ではあり、演奏する方は難しいと思いますが、聴衆にとって比較的聴きやすい作品だと思います。

 2曲目は、阿部亮太郎作曲《吹奏楽のためのバラード》です。
この作品も、かなり現代的にかかれた作品で、初演した当時の都立大泉高校吹奏楽部の皆さんは、さぞ難しかったことだろうと思います。音をただ並べて曲として演奏するのではなく、指揮者と奏者の呼吸が重要で、かつ、特に音が重なった時や和音・単音の響きなど、音色・音程を大切にしなければならないなど、演奏できた場合にはとても達成感のある作品の1つではないかと思います。

 3曲目は、福島弘和作曲《アイヌ民謡「イヨマンテ」の主題による変奏曲》です。
 福島氏の作品「チュプ カムイ」に続く、アイヌ民謡を使用した2曲目の作品になるそうで、民謡独特の雰囲気を上手く表現しオーケストレーションしている作品です。約11分という長さですが変奏曲なので、コンクールや時間の限られている演奏会などでは、変奏の一部分をカットして演奏することも出来るのではないかと思いました。ただ、民謡という独特のメロディーのためか、各変奏の色が変わりくいのが残念に思いました。


 最後の演奏を務めますのは、陸上自衛隊中央音楽隊です。
 まず1曲目は、井澗昌樹作曲《行進曲「飛翔」》です。この曲のタイトルは、プログラムノートに「飛翔、その終焉は墜落である。しかし、それでも抗おうとする姿こそが、飛翔という言葉に相応しい」と書かれており、演奏前に読んでとても興味を惹かれました。打楽器によるオスティナートが作品の持っている力を最大限に引き出しており、最後までパワーあふれる魅力的なマーチでした。

 2曲目は、朴守賢作曲《Symphonic GAME》です。
 シンフォニックな形式上でGAMEのスペルと作曲者の機知により音楽的に戯れた作品で、GAMEを音列にあてはめ、中でもMは未知数として各楽章の音をはめて動機を完成させているそうです。この手法は現代音楽で度々使われてきたものですが、氏が持つ独特の世界観と融合されていた作品かと思います。

 本日の大トリを務めるのは、高橋伸哉作曲《グレート・ウェーブ‐冨獄三十六景「神奈川沖浪裏」》です。
 この作品も今回の委嘱作品です。冨獄三十六景「神奈川沖浪裏」では、葛飾北斎が描いた数々の浮世絵作品の中で本も有名なものの1つであるだけでなく、日本の浮世絵の代表格とも言える作品です。編成に和太鼓4台を用いるなど、これまで書かれてきた作品の流れを持つ高橋氏らしい作品でした。サウンドの響きによる“浪”の表現が中心となる前半がとても印象的で、後半は徐々に盛り上がり終曲します。


 今回は第10回ということもあり、フェスティバル色が強い演奏会でした。だからこそ、協奏曲のような編成のものや、実験的な編成、ポップスへの提言などの演奏会レパートリーとしての作品が多かったと思います。特に委嘱作品は、作曲者が書きたいものを書いたという印象をとても感じる作品あり、昨今の似たような作品が生まれてくる事から考えてみると、吹奏楽の可能性や新しい一面を作品を通じて感じ、考えさせられる、とても有意義な演奏会でした。コンクールで演奏するには難しい作品もありましたが、これからの吹奏楽の発展を考えることと、純粋に音楽を楽しむという点を考えてることと、コンクールで演奏する点からなど、色々な視点から考えてみることで、作品というものの価値や存在などを改めて考えさせられる演奏会になったのではないでしょうか。
 これからも、どこかの考え方に偏るのではなく、バランスよく音楽・吹奏楽を発展させていって欲しいと思います。
 
 今回も私の主観で上記のように書かせていただきました。今回の演奏会の模様もライブCDとして発売されます。会場で聴くのとCDで聴くのとでは若干の違いがあるかと思われますが、当日感じた素直な感想を書かせて頂きました。

(2007.04.30)


■第10回“響宴” 夜の部プログラム

演奏:川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団
客演指揮:リンダ・ムーアハウス 
指揮:福本信太郎

1. 祝典の為のファンファーレとコラール/坂田雅弘(約10分・55人以上)

2. コロポックルの棲む渓谷「神居古潭」/八木澤教司(約8分・35人)
  〜陸上自衛隊第2音楽隊移植〜

3. 鳳凰が舞う 印象、京都 石庭 金閣寺/真島俊夫(約9分40秒・35人)
  〜川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団委嘱〜
   

演奏:SHOBIz Pops Orchestra
客演指揮:真島俊夫 指揮:佐藤正人

・.Eau!(ビックバンド版)/真島俊夫
・Mio(ビックバンド版)/天野正道
・Sole(ビックバンド版)/星出尚志

・Eau!(吹奏楽版)/真島俊夫 Arr.鈴木英史
・Mio(吹奏楽版)/天野正道 Arr.星出尚志
・Sole(吹奏楽版)/星出尚志 Arr.天野正道

※各曲の演奏時間は3分30秒〜4分


演奏:神奈川大学吹奏楽部
指揮:小澤俊朗

1. ウィンドオーケストラのための「時間が空を舞う」
  /寺井尚行(約7分15秒・48人)
  〜第10回響宴委嘱作品〜

2. 吹奏楽のためのバラード/阿部亮太郎(約9分・32人)
  〜東京都立大泉高等学校吹奏楽部委嘱〜
   
3. アイヌ民謡「イヨマンテ」の主題による変奏曲
  /福島弘和(約11分・42人)


演奏:陸上自衛隊中央音楽隊
指揮:武田 晃

1. 行進曲「飛翔」/井澗昌樹(約3分・36人)
 
2. Symphonic GAME/朴 守賢(約11分・36人)

3. グレート・ウェーブ−冨獄三十六景「神奈川沖浪裏」(委嘱作品)
  /高橋伸哉(約7分・41人)
  〜第10回響宴委嘱作品〜


【響宴HP】 http://www.ne.jp/asahi/21c/wind-1/

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