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第1回東京佼成ウインドオーケストラ作曲コンクール

本選会終了、受賞作決定!

 

◎いまの吹奏楽界には必要な作品とは・・・

 以前、2次審査の模様をお伝えした「第1回東京佼成ウインドオーケストラ作曲コンクール」の本選会が開催され、記念すべき受賞作が決定したので、その結果をレポートと共にお伝えしておこう。

 このコンクールは、新しい吹奏楽作品の開発を目指して、今後、3年に一度の予定で行われるもの。「8分以上、15分程度を超えない」ことを条件に、世界各国に広く告知されて作品が募集された。

 その結果、世界21カ国から、計83作品が寄せられた。詳細に確認したわけではないが、日本国内からの応募は、半数以下だったはずで、見事に第1回から「国際コンクール」の様相を呈したのである。

 そこから、譜面審査で8作品が残され、8月に、一般非公開で「演奏審査」が行なわれて4作に絞られ、最終の本選会を迎えたのである。

(今回の指揮はポール・メイエ。難解な曲を、うまくまとめていた。その下地には、2次審査=演奏審査で、8曲の候補曲を見事にこなした指揮者・小林恵子の素晴らしい手腕があったことは、ぜひ強調しておきたい)

 審査員は、審査委員長が三善晃(作曲家/体調不良で欠席)、招待審査委員が『王は受け継がれゆく』で知られるエドワード・グレグソン(作曲家)、特別審査委員がダグラス・ボストック(指揮者)。審査委員は、石田一志(評論家)、北爪道夫(作曲家、委員長代行)、松下功(作曲家)、西村朗(作曲家)。

 結果は、

【1位】該当作品なし
【2位】コン・ブリオ(バーナビー・ホーリントン/イギリス)
【3位】【審査員特別賞】見えない都市(木村政巳/日本)
【3位】プロセッション(ジョン・ウィークス/イギリス)
【フレデリック・フェネル特別賞】室内交響曲第1番(ホセ・スニュール・オリオラ/スペイン)

 となった。ちなみに【フレデリック・フェネル特別賞】とは、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)のメンバーによる「人気投票」で選ばれる賞である。

 これらがどんな曲であるのかについては、今後、おそらくTKWOがステージやCDで聴かせてくれるはずなので、ここではあえて述べない。

 ただ、ひとつだけ言えば、「吹奏楽作品」のコンクールということで、それこそアマチュアが全日本吹奏楽コンクールで演奏するようなタイプの曲を想像もしたのだが、実際には、「管打楽器オケによって演奏される現代音楽」が最終選考に残った……とだけは、言っておこう。

 結果が「1位なし」だったことで、「やはり、高水準の曲が集まらなかったのでは」と思う方々もいるかもしれないが、決してそうではない。

 そのことは、表彰式における北爪道夫(審査委員長代行)の、講評スピーチによくあらわれていた。

「現実の吹奏楽界は、多くのアマチュアによって支えられている。そして、作曲家が考えていることと、この現実との間には遊離がある。その間を、何を選択してつなぐかがむずかしい。今回、1位なしにしたのは、そのせいである」

 おおむね、そのような主旨の講評であった。

 つまり、私なりに敷衍(ふえん)して補足すると……「吹奏楽は、アマチュアが支えている」「そのため、通常、生み出されている新作も、アマチュア向きの水準が多い」「しかし、作曲家たちの中には、アマチュア向きでない、ハイレベルな吹奏楽作品を書きたいと願っている者も多い」「だが、あまりにハイレベルな新作ばかりを送っていたのでは、アマチュアには演奏できず、聴いても楽しめず、レパートリーとして定着しない。それは、かえって、実際の吹奏楽界のためにもならない」「では、その中間を行くような新作を生み出すことはできないのか。今回のコンクールに、そういった作品を期待したのだが、そのタイプの作品はなかった。ゆえに、1位なしとした」

 ……確かにハイレベルな作品は集まった。だが、これらの作品が、アマチュア中心の、現実の吹奏楽界に送り出された時、どう受け止められるか……どうやら、審査員は、それらの点を考慮して、1位なしにしたようなのだ。

 これは、たいへん素晴らしい決断だったと思う。

 今回が、単に「新しい現代音楽を生む」コンクールだったら、話は違ったであろう。だが、これは「吹奏楽作品」コンクールなのである。北爪委員長代行が述べたように、吹奏楽界は、小学生から成人まで、たいへん幅広い層のアマチュアに支えられている。いわば、吹奏楽界は、混沌とした大海なのである。

 そんな大海に、ハイレベルとアマチュアリズムの中間を行くような作品を放ちたい……これこそが、審査員たちの願いだった。だが、今回は(おそらく)ハイレベルの方向のみをにらんだ作品ばかりが集まった。1位なしは、たぶん、悩みに悩んでの決断であったろう。

 それでも、このことによって、このコンクールの意義は、はっきり告知された。単に音楽的に高度なだけではダメ。かといって、中高生がすぐに演奏できるような分りやすい作品でもダメ。その中間をバランスよく行く作品が、いまの吹奏楽界には必要なのだ。

 ぜひ、第2回では、その方針に沿った作品が生み出されることを願ってやまない。

 なお、私はあくまで第三者だが、今回の本選会の進行について少々、私見を述べておきたい。

 今回は、最終の本選会を一般公開とし、チケットを発売する「興行」として行なわれた(チケット代は、500円〜2000円)。

 このこと自体は別にいいと思うのだが、やはり、おカネを取って開催する以上、もう少し、聴衆へのサービスを意識した要素があってもよかったと思う。

 たとえば今回は、まず冒頭に、オープニング曲として、クリフトン・ウィリアムズの≪ファンファーレとアレグロ≫が演奏された。

 そのあと、候補作を2曲演奏して休憩、その後、後半2曲を演奏……これですべてが終わりだったのである。

 選考結果の発表については「約1時間後にロビーに掲示します」とアナウンスがあったが、その頃には会場は閉鎖されてしまっており、1時間後に戻って見にくる聴衆がどれだけいたことか(実際には、その時刻に、隣りのホテルの宴会場で、関係者によるレセプション&表彰式が開催されており、そこで「審査発表」が行なわれていたのだ)。

 これには、チケットを購入して来場した一般聴衆も、少々しらけていた様子である。せっかくおカネを払ってコンクールを見に(聴きに)来たのだから、できれば、その場で結果を知りたかったであろう。

 会場には、制服を着た、高校吹奏楽部員と思しき姿も見られた。彼らが何を期待して来たのか、知るべくもないが、C・ウィリアムズの名曲1曲と、初めて聴く「現代音楽」4曲で帰るのでは、ちょっと可哀相な気もした。

 もちろん、演奏終了後、審査員による協議があるのだろうから、すぐに結果発表ができないことは分る。

 だったら、候補作の演奏終了後、20分程度の休憩をもうけ、そのあと、一種のサービスとして、2曲程度、名曲演奏があれば、十分、時間は稼げたと思うのだ。

 たとえば、コンクールのエキジビションであることを考慮して、オストワルド賞やサドラー賞、NBA作曲賞など、過去の、ほかの吹奏楽作品コンクールから生まれた名曲を演奏するというやり方だってあったと思う(まあ、最初に演奏された≪ファンファーレとアレグロ≫が、第1回オストワルド賞受賞作品なのだが)。TKWOの実力からいって、それらは、猛練習が必要な曲だとも思えないし……。

 もしかしたら、若い聴衆の中には、そちらの方を期待してチケットを購入する者もいるかもしれないが、それでいいと思うのだ。やはり、「初めて聴く現代音楽」に、500円〜2000円とはいえ、キャッシュを投じるのは、相当なマニアだと思う。

 その上で、やはりステージ上で、審査結果と講評を、会場の聴衆にきちんと伝えることは、チケット代金を払って来てくれた人たちに対する、最低限の礼儀のような気もするのである。

 少々偉そうなことを述べたが、それでも、今回のコンクールが「明日の吹奏楽界」をにらんでいることはまぎれもない事実だ。各方面からの様々な意見を取り入れて、3年後は、さらに素晴らしいコンクールになることを願いたい。

 同時に、今回生み出された4曲を、ぜひとも、多くの人たちに聴いてもらい、できれば楽譜出版されて、取り組むバンドが登場することも期待したい。
<敬称略>

東京佼成ウインドオーストラHP(コンクール関係記事など)  http://www.tkwo.jp/comp/news.html

(2006.11.28)


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