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東京佼成ウインドオーケストラ 作曲コンクール
第2次審査終了!

 現在、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)が、吹奏楽作品の作曲コンクールを行なっている。すでに第1次審査が終了し、先日、第2次審査(演奏審査)が実施されたが、TKWO事務局のご好意で、審査の模様を取材させていただくことができた。たいへんユニークな試みなので、取材の感想を交えながら、このコンクールをご紹介しようと思う。

 ただし、審査は、まだ継続中である。取材させていただいた第2次審査も本来が非公開であり、11月26日(日)の本選会(一般公開・演奏審査)以前に、関係者に予断を与えるようなことを書けば、コンクールの公平性が失われる恐れもある。そこで、隔靴掻痒の記述をせざるを得ない部分もあるので、その点はご了承いただきたい。

 このコンクールは、正式名称を「第1回 東京佼成ウインドオーケストラ 作曲コンクール」という(以下、「TKWOコンクール」と略称する)。どういう点がユニークなのか、いくつかのポイントを列記する。

【1】演奏団体の主催である。
 現在、吹奏楽オリジナル新作の公募コンペには、「朝日作曲賞」がある。全日本吹奏楽コンクール課題曲を一般公募するもので、主催は全日本吹奏楽連盟と朝日新聞社である。ほかには「下谷賞」がある。これは、JBA(日本吹奏楽指導者協会)の主催だ
 しかし、「TKWOコンクール」はおそらく史上初の、演奏団体が主催するコンペだ。もちろん、吹奏楽オリジナル作品の新しい地平を開拓することが最大の目的だが、同時に、TKWOのレパートリーとなる要素も強い。年間、多くのステージをこなすバンドゆえ、受賞作はひんぱんに演奏されるであろう。また、TKWOには、関連団体に佼成出版社もある。楽譜の一般発売(もしくはレンタル)やCD化も確実だ。
 よって、受賞作品が人口に膾炙する可能性が、極めて高いコンペなのである。

【2】世界に門戸を開いている。
 今回のTKWOコンクールは、世界中に向けて告知された。その結果、90近い作品が集まったようなのだが、その半分以上が、海外からの応募作品であった。これには、私自身、少々驚いた。日本人作品がほとんどで、海外作品がチラホラであろう……との予想が、見事に逆転したのだ。これには、TKWOの海外における認知度、事務局の努力もあったであろうが、それだけ日本の吹奏楽界が海外から注目を浴びている証左であるような気もした。
 とにかく第1回から、完全な国際コンペとなったのである。

【3】バックアップ体制が万全である。
 たとえば賞金は、第1位が100万円、第2位が50万円……と、この種のコンペとしては、かなり高額な金額が用意されている。しかも第1位入賞者には、新作委嘱の機会が与えられ、委嘱料100万円が別途用意されている。もちろん、CD化、楽譜出版となれば著作権収入が発生する可能性もある(規定上は別途協議のようだが)。
 それ以外の点も、実に細かいケアがある。たとえば、第2次審査以降に残った応募者に対しては、旅費(もちろん海外〜日本の)が用意され、本選会はもちろん、第2次審査(演奏審査)に立ち会うことができるのだ。現に、先日取材した第2次審査会では、ほとんどの作曲者が(国内、海外を問わず)会場にやって来ていた。
 これらに関しては、多くのスポンサー企業の協力の賜物であろう。

 かくして、先述のように世界中から約90もの作品が集まったのである(中には、あらゆる意味で驚くような国からの応募もあった)。

 そこから第1次審査(譜面審査)によって8作品に絞られ、8月21日に東京・普門館大ホールでの第2次審査(演奏審査)が行なわれ、今回、それを取材させていただいた、というわけだ。

 審査員は、三善晃(審査委員長、作曲家)【注】、北爪道夫(第2次予選会審査委員長代行、作曲家)、石田一志(音楽評論家)、松下功(作曲家)、西村朗(作曲家)、ダグラス・ボストック(TKWO主席客演指揮者)の6氏。
(【注】三善委員長は、第2次選考は文書通達により審査。よって当日は5氏)

 演奏は、もちろんTKWO。指揮は、同団副指揮者の小林恵子。

 曲の長さは、規定で「8分〜15分程度」となっていたが。ほとんどの曲が、14〜15分の長さだったようだ。演奏は、3曲演奏〜休憩〜3曲演奏〜休憩〜2曲演奏の順で行なわれた。

 アナウンスされるのは「曲名」のみ。作曲者名や国名などのインフォメーションは、一切与えられない(あとの審査結果発表で分るのだが、海外作品が多かった)。

 私自身、「高校生がいない、無人の普門館大ホール」に足を踏み入れたのは初めてであり、不思議な気分で8曲を聴いた。

 今後、本選会もあるので、具体的なことは書けないが、私は8曲すべてをたいへん面白く聴いた。全体的に変拍子や不協和音が多いのは、現代の作曲コンペとしては当然であろう。だが、そこは吹奏楽である。ドラムセットを使用してポップス風のリズムを基調にした曲。作曲者の母国で過去に起きた悲劇を題材にしたと思われる曲。「聖」と「俗」が合体したような不思議な味わいの曲。様々なタイプがあった。中には、たまたま表現手段が「管楽器+打楽器」群というだけで、我々が思い浮かべる吹奏楽のイメージからかなり離れた曲もあった。

 演奏終了後の審査会を経て、この8曲から、4曲が11月26日の最終審査=本選会に残ることが発表された。おそらく今後、TKWOから正式なアナウンスがあると思われるので、ここでは記さないが、どれもなかなかのハイレベルな曲であることは間違いない。。

 素人考えだが、審査も難しかったと思われる。純粋に、音楽的に高度な内容の曲を選ぶか。あるいは、吹奏楽という性格上、アマチュアも挑戦できて、吹奏楽コンクール自由曲に使用できるような広範性を重視するか。……その結果がどうなったかは、ぜひ、本選会で確かめていただきたい。

 なお、今回のTKWOコンクールには、先述のように90近い数の作品が、世界中から集まった。私は、たまたまその中の、第2次審査に残った8作を聴いたにすぎないが、もしかしたら、第1次審査で落選した作品の中に、「今回のコンペには相応しくない」けれど、「アマチュア(特に学生など)が演奏するにはピッタリ」の曲が、けっこうあったのではないだろうか。それらが、このまま埋もれてしまうのだとしたら(まあ、それがコンペの宿命だから仕方ないのだが)、ちょっともったいない気がした。何しろ、数作しか集まらなかったというような、しょぼいコンペではないのだ。第1回からして、これほどのスケールで展開したのである。名称はさておき「学生バンド向け推薦賞」みたいな部門があってもよかったような気もした。もっともそんな賞を設けたら、次回から「学生向け」ばかりが集まって、「朝日作曲賞」との差異がなくなってしまうかもしれないが……。

 また、それを言うなら、今回の第2次審査で落選した4作品である。この4曲は、あるいは、作曲者たちは、どうなるのだろう。これもまたコンペの宿命だから、お情け頂戴みたいなことは言うつもりもないが、それでも私には「このまま消えてしまうにはあまりに惜しい作品」がいくつかあったように思えた。何かの形で紹介されたり、TKWOとのつながりが保たれることを、望んでやまない。

 最後になったが、第2次審査(演奏審査)を取材して、あらためてTKWOなるバンドの実力に恐れ入った。8曲は、当然ながらまったくなじみのない新曲である。変拍子だらけの難曲も多い。聞けば、事前に3日間だけ練習時間をとったようだが、コンクールとしての公平性を保つために、1曲あたりの練習時間も厳格に統一されたようである。にも関わらず、少々の休憩を挟みながら立て続けに8曲を演奏するTKWOを見て、まさに唖然呆然とさせられた。

 そして、それらをまとめ上げ、乱れや不安を一切感じさせずに引っ張った指揮者の小林恵子にも賞賛を送りたい。観客もいない普門館大ホールで、5人の審査員と数人の取材・関係者のみを相手に、あそこまで熱い「新作初演」を成立させた手腕は尋常なものとは思えない。

 本選会は、11月26日(日)14時半から、東京・池袋の「東京芸術劇場」で、一般公開の演奏審査で行なわれる http://www.tkwo.jp/comp/index.html。指揮は、クラリネット奏者で、近年指揮者としても活躍中のポール・メイエ。今後3年に1回の割合で開催されるというTKWOコンクールの、最初の入賞作品が誕生する瞬間を、ぜひ、ご自身の目と耳で確認していただきたい。もしかしたら、その日が、吹奏楽界の新たな第一歩になるかもしれないのだから。

<敬称略>


第1回東京佼成ウインドオーケストラ作曲コンクール

【日時】11月26日(日)13:45開場/14:30開演
【会場】東京芸術劇場 http://www.geigeki.jp/
【指揮】ポール・メイエ
【料金】S席:2,000 A席:1,500 B席:1,000 C席:500
【主催】東京佼成ウインドオーケストラ
【問い合わせ】東京佼成ウインドオーケストラ事務局 TEL:03−5341−1155
http://www.tkwo.jp/contactus/index.html

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