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航空自衛隊 航空中央音楽隊
第45回定期演奏会

◎トランペット協奏曲:三枝成彰(長生 淳編)で聴かせた
 ユーフォニアム外囿の世界最高水準の演奏に、
 観客のほとんどが、驚きと感心をしめしていた!

 雨模様で蒸し暑い天気の中、航空自衛隊航空中央音楽隊(以下、航空中央音楽隊)の定期演奏会のため、すみだトリフォニーホール(錦糸町)へと足を運んだ。

 開場時間を30分ほど過ぎた頃に到着し、まず驚いたのが、会場の入り口に並ぶ長蛇の列。会場に並んで建っているホテルの前をはるかに過ぎ、待っていたのは入場整理券を持った人が座席引き換えをするための列だ。
これは演奏会への高い期待を示しているということなのだろうが、結果的に満員で中に入れず涙を飲んで帰った人もいた。ある程度の歩留まりを見込んでの整理券発券だったのだろうが、雨の中、せっかく来たのに聞けずに帰った人達は浮かばれない。今後、ご一考願いたい点である。

 演奏後、三枝成彰氏がステージに
 超満員の観客席

 さて、運良く中に入る事ができたので、ここからは演奏会について。
 今回のプログラム、何と言っても三枝成彰の「トランペット協奏曲」と、スパークの「宇宙の音楽」の名前に目を惹かれた。そして航空中央音楽隊を佐川聖二氏が客演指揮をするという点も注目だ。

 第1部では、航空中央音楽隊フルート奏者の矢部政男氏の新作「杜の詩」から始まった。全体的に和の神秘的な響きを持ち、その中に自然の雄大さ、厳しさ、美しさなど様々な表情が垣間見える。冒頭から轟くホルンの咆哮によって、一気に音楽の世界に引き込まれてしまった。以後の演奏にも期待を募らせる。

 一転、次はアメリカへと舞台を変える。最近、多くの団体によって演奏され、人気の高いホルジンガーの「スクーティン・オン・ハードロック」で、ジャズの世界へ誘う。
改めて思うのは、航空中央音楽隊は実にフレキシビリティがあるのだということ。さっと切り替えて、軽妙なドライヴ感やノリを表現できるのは見事である。欲を言えば、もう少しブラッシーな歌い込み方などが感じられたら、もはや言う事がない。

 さあ「トランペット協奏曲」である。プログラムノートにある三枝氏本人の言葉によると、当初の作曲時に「勇ましく」そして「超絶技巧を用いて、非常に速く駆け抜ける」イメージなのだとか。現在、日本はおろか世界有数のユーフォニアム奏者である外囿祥一郎氏の手で、どのように奏されるのかに期待がより膨らむ。
 言葉通り、第一楽章は細やかなパッセージが繰り広げられる。時に高音が突き抜け、何かが降臨するかのように響きが会場へ降り注ぐ。期待に違わぬ演奏に、座席から背が離れる。第二楽章では、ソリスト以外にも、バンドのメンバーにも各楽器にソリスティックな出番が回ってくる。互いのその応答が見事に絡むのは、やはり手馴れたメンバー同士なのか、さすがと言った感じだ。
 また、三枝氏の書くメロディーは、どこか儚げで切ない感じがして、ふだん吹奏楽を聴き慣れた耳には、斬新にさえ感じる。クライマックスの第三楽章、前の楽章で少しだけ余裕のあった外囿氏が、再び堰を切った様に、まさに「超絶技巧」を繰り広げる。私もその一人だが、観客のほとんどが、ただただ驚きと感心していたようだ。それは曲が終わってから鳴り止まぬ拍手が物語っていた。
 壇上に三枝氏と、吹奏楽版への編曲を施した長生 淳氏が招かれる。両名も同様に満面の笑みで外囿氏と握手を交わしていた。この現場に居合わせ、世界最高水準の演奏を聴けた事実に感謝。
 休憩時、長生氏から聞いたのだが、実際よりも「速いテンポ」だったのだそうだ。外囿氏、恐るべし。

 さて、ひと呼吸ついて第2部であります。ここからは客演指揮の佐川聖二氏が登場。「客演指揮」という言葉、別に普通の響きであります。しかし航空中央音楽隊含め自衛隊のバンドがこうして指揮者を民間人から招く事ってのは、とっても珍しい事象である。私は、この件を実に好意的に捉えている。官民の交流とでも申しましょうか、そうなるに到る経緯の詳細は測りかねますが、これは受け入れをする側の大英断と感じています。

 さあ、演奏はどうか。実に期待して聴くことにした。
 1曲目はドズヴェイの「太陽神ラー!」。打楽器による(神が題材なので不適切な表現だが)土俗的リズムが基となって導かれる形で推移していく。ここでも航空中央音楽隊のメンバーは技巧を惜しみなく披露していく。1曲目を終えて感じたのは、佐川氏が次第にノってきているということだ。曲のクライマックスには、航空中央音楽隊を既に掌握しているかのようだった。

 2曲目は「ふるさと」。「うさぎおいし〜」で有名な日本の唱歌を、アメリカ人であるメリロがアレンジしたもの。ここでは佐川氏らしい歌心のある音楽が奏でられた。各楽器に割り振られたソロ(特にホルン最高!)が、伸びやかに歌う様子に、緊張感が程好く解れる。重厚なプログラムが続く中で、こうした曲が入ることは、プログラムの妙と申しますか、こうした所からもお客への配慮が伺える。

 そして、いにやってきました、スパークの産んだ大作「宇宙の音楽」。私、生でこの曲を聴くのが初めてでありまして、個人的に一番注目をしておりました。ミステリアスに表現される宇宙の始まり、ビッグバンから発生する星体系、そこに生まれる生命、ぶつかり合う星、果てしなく広がる宇宙・・・。スパークの曲の中でも、この曲はスケールの大きさは抜きん出ている。
 航空中央音楽隊は、目視できない世界観を演奏で表現していった。威圧感や重量感、混沌の表現、煌びやかな輝きを持った響き。ソロ群(今回はサックス、ブラボー!)による演奏も、しなやかだったり、勇ましかったり。勢いの乗ったスピード感。とにかく良かったという愚直な言葉でしか表現できないくらいだ。佐川氏も、さらにエネルギッシュにタクトを掌り、壮大な宇宙空間を作り上げる。
 「疲れ」と言っては変なのかもしれないが、押し出してくるように現れる充実した音楽に圧倒され、終わった時には感心のタメ息交じりでイスにもたれた。

 約1年半ぶりに聴いた航空中央音楽隊は、やはり「さすが」であった。自衛隊音楽隊の活動は、実に多岐に渡り、多忙なものである。そんな中、これ程充実した演奏を聴かせてくれたことは、航空中央音楽隊のポテンシャルが極めて高い事を再認識した。個人的には、より骨太な響きが好みではあるが、今日聴かせてもらったような軽快で明るい響きも好感が持てる。

最後に「今度もっと早く来よう」と頭にインプットして、会場を後にした。



■プログラム

第1部 指揮:佐藤義政 3等空佐

○吹奏楽の為の幻想曲「森の詩」(初演):矢部政男
○スクーティン・オン・ハードロック:D.ホルジンガー
○トランペット協奏曲:三枝成彰(長生 淳編)
   Euphoium Solo:外囿祥一郎 空曹長

第2部 客演指揮:佐川聖二

○太陽神ラー!:D.ドズヴェイ
○ふるさと:岡野貞一(S.メリロ)
○宇宙の音:P.スパーク

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