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シエナ・ウインド・オーケストラ
第21回定期演奏会〜巨匠ジョン・ウィリアムズの世界

◎圧巻はやはり、「スター・ウォーズ}・・・ “魂の叫び”と言わんばかりのエネルギーが会場を完全に飲み込んでしまった。
まさにスペクタクルである。

 2006年5月23日、あいにくの雨である。
 いきなり個人的な話で申し訳ないのだが、ここ数回は地元横浜での開催であったため、のんびりと出かけていたのだが、今日はひさびさの東京芸術劇場。なんとか池袋への行き方を思い出し、寝不足の身体から気力を振り絞ってホールへ。もしこれが適当な演奏会であるならばキャンセルしただろうが、今日はそういうわけにもいくまい。
 あのシエナ・ウィンド・オーケストラが、一晩の演奏会を全てジョン・ウィリアムズ(1932-)のプログラムで、というのだ。指揮も前回すばらしいアルフレッド・リードを聴かせてくれた金聖響氏。
 それを自分に言い聞かせ、カフェイン剤を服用して会場へ。

 みなとみらい駅のそれと同じように巨大な芸劇のエスカレーターを上がると、開場後にもかかわらず入口脇に行列が。おそらくは当日券を求めるキャンセル待ちの列であろうと思われる。
 筆者自身は今回も手配がギリギリになってしまったが、なんとか1枚だけ手に入ったのでそそくさと客席へ。
 3階LB席から見下ろすと、平日だというのに開演前にほぼ満席。やはり都心だとこうできるのかと感心するとともに、いつも筆者も言われる「横浜は遠い」というセリフを痛感。
 さておき、ステージではすでにプレトークが始まっていたのだが、PA音量が小さく聞き取ることはできなかった。

 芸劇のかわいらしい「1ベル」に続いて団員が入場。
 さて、ここで問題です。本日の団員はどんな衣装で登場したでしょうか?

 ……正解は「黒燕尾」。そしてチューニングが終わり、同じく燕尾服に身を固めた聖響氏が登場。ごく自然なクラシック・コンサートの正装である。

 いよいよタクトが振り下ろされ、演奏会の幕開け。
 最初は1984年ロサンゼルス大会のための作品、《オリンピック・ファンファーレ&マーチ》(小長谷宗一編曲)である。
 トランペットとホルンから始まるファンファーレであるが、目に留まったのはトロンボーン・セクション。ユニゾンで始まるため全員が一様にスライドを伸ばし、「気合の入った」ブレスをとってフォルティッシモの一斉砲撃。その目に見える興奮に聴いているこちらも一気に引き込まれてしまうのであった。
 そして、この演奏会の要所要所で絵になる2台のスネア・ドラム。音はもちろん、その統制された動き。吹奏楽の原点がミリタリー・バンドであることを力強く感じられ、それはまた聴く者の心拍数を確実に支配していくのである。

 曲が終わり、身体が音楽に支配された状態で流れてきた2曲目は《11人のカウボーイ》序曲(J.カーナウ編曲)。とにかく、ホルンがカッコよかった。その印象が強すぎて、他のことを覚えていない(申し訳ない)。

 「そうだ、この文章を書かねば」と気を取り戻しての3曲目は『JFK』の《プロローグ》(真島俊夫編曲)。
 やはり、しかしに静かにドラムに導かれるは佐藤友紀氏の長く甘美なSolo。さっきまで勇壮な音を放っていたそれとは全く違う、澄んだ高音を響かせてくれた。
「ファンファーレ」→「序曲」→「プロローグ」と続くこのプログラムで、最初はある種「武器」であった楽器が、ここで突如涙を見せるのだ。
 金管楽器を熟知した編曲者ならではの新しいスコアも非常に効果的であった。

 さっきまでとは違った優しい拍手が鳴ると、舞台は暗転してスポットに。
 前半ラストの《ハリー・ポッターと賢者の石》組曲である。
 何かが起こりそうなチェレスタSolo(佐藤麻以子女史)の《ヘドヴィクのテーマ》で会場の空気を変えると、続く《ニンバス2000》は3管編成の木管アンサンブル(Pic+Fl3、Ob+EH3、Cl+B.Cl3、Fg+C Fg3)。第3曲はホルン四重奏による《ホグワーツよ永遠に》、第4曲《クィディッチ・マーチ》はTrp3-Hr4-Trb3-Tub1の金管アンサンブル。
 ここまでは作曲者自身のスコアということで、これら室内楽を通じてジョン・ウィリアムズの作曲の技法というか秘密みたいなものが垣間見えたのではないだろうか。
 そして舞台は明転し、第5曲は亀井光太郎のペンになる新編曲で《ハリーの不思議な世界》、その「魔法のスコア」が見事に吹奏楽で表現されていた。個人的感想になるが、オリジナル・スコアではどうしても活躍できない、というか存在しないユーフォニアムとサクソフォーンが気持ちよくメロディーを吹く姿を見て、オーケストラでももうちょっと仲間に入れてくれないかなァ、と。

 と、ここまで第1部であったが、今日の聴衆はどのようなステージを想像して会場へ来たであろうか。
 なかにはきっと「照明や衣装、小道具大道具を用いてのステージ」を予想していた人もいるのではないかと思うが、この日の舞台はそういった「スイソウガク的演出」を一切排除して、音楽だけでの真っ向勝負である。
 別に「演出」を入れるのが悪いというのではなく、ジョン・ウィリアムズの作品は音楽そのものだけで勝負できるどころか、下手な小細工はかえって演奏を邪魔する恐れがあるということだ。
 自分たちの真剣勝負を最高の状態で味わってもらうための今宵の「クラシック・コンサート」ステージ、素晴らしい効果を発揮しているといえよう。

 休憩中にこんな事を考えながらコーヒーを飲み、「まだ眠くなっていないな」と自分に確認して第2部へ。

 第2部の冒頭もオリンピックのテーマ曲から。1996年アトランタ大会の《サモン・ザ・ヒーロー》であるが、こちらは上田仁氏のトランペットソロで楽しませてくれた。それに続くは《キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン》。
「アルト・サクソフォーンとバンドのための」という但し書きが付いているのだからソリストは下手から入ってくるかと思いきや、上手の席から舞台上を移動してそのままソリストポジションへ。このあたりからメンバーのタフネスぶりを感じてくることとなる。
 アヤしい前半部、歌う中盤、そして再び駆け回る後半。色彩豊かなジョン・ウィリアムズ作品の中で取り上げられたサクソフォーン、ひときわ異彩をはなっていた。

 ソリストに拍手が贈られ、譜面台が撤収されるといよいよお待ちかね、晋友会合唱団のメンバー86名が入場である(数え間違ってたらゴメンナサイ)。
 曲はフィリップ・スパークの編曲で『プライベート・ライアン』から《戦没者への讃歌》。スパークのスコアということで《ドラゴンの年》第2楽章中盤のような、といったらものすごく語弊があるが(なら書くなって)、長い長いクレッシェンドで向かうクライマックス、そして最後の包容力のあるピアニッシモまで、厚みのあるシエナのサウンドに、より絶大な効果をプラスする晋友会。管楽器の息づかいと歌の息づかいが1つになったとき、聴衆は言葉を失った。
 音楽から解き放たれ、続いて拍手と、思わず漏れる声たち。


 ……ついに、最後の曲がやってきた。不朽の名作、ジョン・ウィリアムズの代名詞、《スター・ウォーズ》組曲である。
 演奏前からみなぎる緊張感が聖響氏のタクトによって解放され、一気にほとばしる大音響。そして、6本のトランペット・セクションが一丸となって繰り出す主題。
 今回この会場にいる誰しもが待ち望んだ《スター・ウォーズ》に、第1曲《メインタイトル》が終わったところで本能的な拍手が。
 輝かしい真島サウンドに続くは重厚なハンスバーガー編曲の《ヨーダのテーマ》。さらに小林健太郎編曲の第3曲《フラッグ・パレード》。後者はひたすらトリプル・タンギングが忙しい曲であるが、シエナは決して無理を感じさせず、見事に吹ききってくれた。

 手に汗を握りながら迎えた最終第4曲《運命の戦い》、人気急上昇の清水大輔による編曲で再び合唱の投入である。
 もう筆者の語彙は使い果たしてしまった。
 文字にすると安っぽく感じてしまうかもしれないが、「魂の叫び」と言わんばかりのエネルギーが会場を完全に飲み込んでしまった。まさにスペクタクルである。

 15分を越える組曲が終わると、万雷の拍手が巻き起こり、アンコールへ。

 《レイダース・マーチ》が極めて和やかに演奏され、今晩の最大の功労者、トランペット・セクションに盛大な拍手が贈られた。
 続いてアンコール2曲目は《組曲》に入れてもらえなかった《ダースベイダーのマーチ》、再び走る戦慄の時。そして、ホルン・セクションへ贈られる拍手。

 で、「恒例のヤツを」。本日の《星条旗よ永遠なれ》はいつもより平均年齢が高かったように思う。
 それにしても相変わらずすごい人数である。知り合いの1人や2人いても、もはや判別不能である。
 また、せっかく合唱団のメンバーがいるのだからと、「無理矢理日本語の歌詞をつけて」歌ってくれたのだが、さすがに聞き取れるものではなく、でも実に楽しそうであった。

 時間の都合上、筆者は終演直後に帰ってしまったのだが、きっと終演後の聖響氏のサイン会(CD即売会)も大盛況であったことだろう。

 そんなわけで、シエナの「第21回定期演奏会」を振り返ってみた。
 1つの団体ができると、最初は第1回(1st concert)から始まるが、それが2nd、3rd、4thと重ねるとしばらく英語では"th"がつづく。この長い"th"の時代を越えて、ようやくたどり着いたthe "21st" Regular Concert。新たな時代へと突入したのである。

 絶大な人気を誇るようになったシエナの今後から目が離せないのはもちろん、最近増えつつある新設のプロ吹奏楽団も、ぜひ"th"を乗り越えて成長し、お互い刺激しあって欲しいものである(……と、筆者も頑張らねば)。

■シエナ・ウインド・オーケストラ公式HP
http://sienawind.com/

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