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神奈川県立逗子高等学校吹奏楽部
第30回定期演奏会 WINTER CONCERT「凛」の国から

 2006年が日曜日に、鎌倉芸術館にて開催されました「神奈川県立逗子高等学校吹奏楽部 第30回定期演奏会 WINTER CONCERT「凛」の国から」に行って参りました。今回は30回の記念演奏会ということで、作曲家の小長谷宗一氏の委嘱作品の全曲初演に、同じ神奈川県の高校・三浦高校吹奏楽部を始め、様々なゲストを招いて盛大に開催されました。

 まずは演奏会の模様をお伝えする前に、神奈川県立逗子高等学校吹奏楽部についてご紹介したいと思います。1963年頃に有志によって設立されたそうです。年に1度の定期演奏会を「定期演奏会+フレンドシップコンサート」として開催されています。また、演奏会チケットからユニセフと逗子市社会福祉協議会への毎年寄付をするなど、福祉や地域に根ざした活動をされています。また、吹奏楽コンクールでは、平成11年度吹奏楽コンクール(高校B部門)では、東関東大会に出場し、県代表中ただ1校の“金賞”を獲得。平成12年度はA・B両部門に出場し、A部門で県大会出場、“銀賞”を受賞するなど、コンクールでも良い成績を残されています。

 演奏会は3部構成で、第1部「逗子高校吹奏楽部の演奏」・第2部「三浦高校吹奏楽部の演奏」・第3部「荒武者演奏 逗子高校・三浦高校合同演奏」と盛りだくさんな内容になっています。それでは演奏会にふれてみたいと思います。


 第1部の「逗子高校吹奏楽部の演奏」最初の曲は、小長谷宗一作曲《March“The Nine”》です。この作品は、九州吹奏楽連盟30周年を記念して書かれました。「ナイン」というのは文字通り「九州の“九”」を現していますが、ギリシャ神話に登場する芸術をつかさどる9姉妹の女神“the Muses”をも意味しています。女神たちの登場を意するファンファーレから始まり、マーチに移行していきます。女神のイメージと重なるさわやかなマーチで、とても初々しく演奏されていました。衣装である緑色のブレザーがさらに作品や演奏に華を添えていました。やはり女神といっても神様なので、低音の厚みのあるサウンドが威厳を示しているようで、それをとてもよいサウンドで演奏されていました。オープニング飾るに相応しい作品と演奏でした。

 2曲目は、小長谷宗一作曲《ウィンドアンサンブルのための“不思議な旅”》です。この作品を書くにあたり、見たことも行ったこともないはずなのに、なぜか記憶を呼び起こされているような気がする、いわゆる“デジャヴ現象”の感覚やイメージをもとにされたそうで、「はっきりとしたストーリーはありませんが、中国からシルクロードに渡り、アフリカに至るという、私なりのイメージを設定し“不思議な旅”を描いています」プログラムノートに書いてありました。作品は四楽章で構成され、各楽章を「中国・中近東・地中海・アフリカ」と場面が分かれています。今回は逗子高校の3年生+2年生の少数精鋭のメンバーで演奏されました。それぞれの場所が持っている雰囲気をしっかりと再現されていて、旅行に行っている気分になれる演奏でした。

 第1部最後の曲は、今回のメインプログラムであります、小長谷宗一作曲《吹奏楽と和太鼓のための組曲“凛”》(全曲初演)です。この作品は、2003年のフレンドシップコンサートで和太鼓の「荒武者」の皆さんとの出会いがきっかけで、和太鼓と吹奏楽で演奏できる作品を探し求めたのです
が、未だ作品が書かれていないようでした。その年の暮れ、逗子高校吹奏楽部が「安藤為次記念教育賞」を受賞し、頂いた賞金をもとに新しい作品を委嘱し、更に地域との文化交流の機会を広げたいと考えたそうです。そこで鎌倉市在住の作曲家小長谷宗一氏にお願いし、この趣旨に快く賛同し、この曲が生まれることになりました。「序・桜・松明・月・楓・雪」の6つの部分からなるこの曲は、鎌倉から逗子を経て三浦半島地域は武家社会の誕生した地域であることから、武士の時代の風土と精神を、和太鼓群と吹奏楽の響きで表しています。逗子高校の皆さんは、《凛》に込められた武士の思いを追求していくために、2005年度の自由曲に選んだそうです。今回は30分からなる全曲版の初演ですが、武士社会の雰囲気や緊張感、武士の心意気など、色々な武士の生き方や思想を、小長谷氏のレッスンに加え、現代に生きる高校生が自ら考え表現していたことは、とても素晴らしいことだと思います。聴き手側も、気迫あふれる演奏を固唾を呑んで聴いていました。この大曲を見事に初演しきた逗子高校の2年生+1年生に敬意を表したいと思います!

 休憩を挟んで第2部は「三浦高校吹奏楽部の演奏」です。

 第2部最初の曲は、神長一康作曲《Celebrate》です。
作曲者の神長氏の大学の友人の結婚を祝し書き下ろした作品です。曲は二人の門出を祝す華々しいファンファーレ、永遠の愛を歌ったコラールの二部構成で、いつまでも二人が幸せであることを願う重いが込められています。可愛らしいメロディーと壮大なコラールを、同校が逗子高校の演奏会に招いてもらった感謝の気持ちを表している、そんな素直な演奏でした。演奏時間は短く、オープニングやアンコールなどに丁度良い長さと華やかさを持っています。

 続いて2曲目は、八木澤教司作曲《トランペット協奏曲》です。
この曲は、航空自衛隊中部航空音楽隊の委嘱により、「普段クラシック音楽を聴かない聴衆にもなじめる軽快かつ美しい協奏曲」というコンセプトの元で作曲されました。古典的なソナタ形式を感じさせる第一楽章、コラール風の第二楽章そして第一、二楽章を再現する第三楽章で構成され、曲間はソリストのカデンツァで繋がれており、切れ目なく演奏されます。全体的にソリストパートは高音域の音は少なく、かつ覚えやすいメロディーだと思います。1分位のカデンツァを経て、通称八木澤コラールと呼ばれる、フレーズ感(息遣い)の長い、しっとりとした第二楽章へと移行していきます。三楽章はその二つが交互に顔を覗かせるパズルのような構成でした。ソリストの畠山氏は三浦高校吹奏楽部を指導されています。今回生徒さん達は、普段の部活動だけでは見ることのできない、トランペット奏者である畠山氏の繊細で素晴らしいトランペットを、聴く立場ではなく、一緒に演奏できたという素敵で貴重な経験が、これからの音楽に必ずプラスになると思います。

 第2部最後の曲は、同じく八木澤教司作曲《地底都市「カッパドキア」〜妖精の宿る不思議な岩》です。
この曲は、千葉吹奏楽団創立20周年記念委嘱作品として書かれました。「カッパドキア」とはトルコのアナトリア高原の火山によってできた広大な荒地のことで、1990年代初頭、この地に想像を超える壮大な地底都市が発見されました。それは蟻の巣のように地下8階の構造を持つものもあり、当時の人口は2万人近くいたと推定されています。多くの謎を秘めたこの地底都市は、4世紀頃ローマ帝国の迫害を受けたキリスト教徒が住んでいたと考えられています。この作品には、その迫害を受けたキリスト教徒の心情、妖精が宿るという地上に広がる奇岩の風景が描写されています。中間部の地底を表現している部分と、打楽器の特殊奏法はとても面白いです。後半に「キリエ」のコーラスが出てくる部分が、まるでキリストのミサの様な感覚になり、不思議な雰囲気をかもし出していました。力強い部分と厳かな部分とのコントラストのある演奏は、情景が目に浮かぶような良い演奏でした。

 休憩を挟んで最後第3部は「荒武者演奏&逗子高校・三浦高校合同演奏」です。

 まず最初の曲は、《秩父屋台囃子》です。
京都の祇園、飛騨高山と並んで日本三大曳き山祭りに数えられる秩父夜祭は、秩父神社の例大祭として毎年12月3日に本祭が行われます。この日に牽引される国の重要有形民俗資料に指定されている屋台「笠鉾」は、動く陽明門とまで賞賛れる、正に絢爛豪華そのものです。そして、その中で奏でられるのが、秩父屋台囃子であり、大波小波の打ち寄せせる様子を「力強さとリズミカルなタッシ」で表現し、大きな屋台「笠鉾」を動かすお囃子として400年もの歴史に培われたのです。横笛のソロから始まり、やがて提灯を持った3人と、太鼓を叩く奏者が、静と動を表す迫力のある太鼓を奏で、それがとても引き締まった舞台になりとても素晴らしかったです。

 2曲目は、A.リード作曲《アルメニアンダンス パート1》です。
この作品はA.リードイリノイ大学バンドの依頼によって四楽章の組曲として作曲され、その一楽章にあたります。このパートIには5つのアルメニア民謡がつかわれており、5つの場面を移り変わりながらエキサイティングに終わります。力強いサウンドと華やかさ、特に、トロンボーンの伸びやかな音色がとても心地よく、大人でも演奏するのに難しい作品ですが、畠山氏の指揮で両校のバンドが一体になり、若々しくも力強いサウンドが、作品の技術的な素晴らしい演奏でした!

 最後の作品は、O.レスピーギ作曲《シバの女王ベルキスより》(Arr.小長谷宗一)
です。この作品は激しさと神秘的な雰囲気を兼ね備えた作品で、編曲は小長谷氏本人のものです。小長谷氏のオーケストラの響きを大切にしている編曲は流石で、オーケストレーションの重要性を改めて考えさせられる作品と演奏でした。今回の合同演奏を成し遂げることで、おそらく両校の部員の皆さんがそれぞれ何か新しいものを感じているようで、今後の活動の新たなエッセンスになったのではないでしょうか。その感覚が、最後まで気を抜かない素晴らしい演奏に繋がったのだと思います。また聴衆も、この素晴らしい演奏に応える様に、沢山の拍手で両校の部員の皆さんを称えていました。客席の期待に応えてアンコールも演奏され、演奏会の幕がおりました。1団体=1つの演奏会を開催するのとは違い、お互い集中力を必要としていますが、決して途切れることのない素晴らしい会になりました。両校の高校生の素直で若々しい演奏に、素直に拍手を送りたいと思います!

 両校共に、邦人作曲家の委嘱作品やゲストを招いての活動を意欲的に取り組まれており、演奏するだけでなく、プロの良いものを聴き、共に演奏することは、とても重要だと思います。今後もそれぞれの先生の下で、指導を受けそして練習を重ね、更なる飛躍されることを楽しみにしております。また、今回初めての「県内の実力のあるバンド同士の合同演奏会」という交流企画は、吹奏楽界を発展させるための重要な企画だと思いますので、今後も、ぜひ続けて言って欲しいと思います。県立逗子高校吹奏楽部、三浦高校吹奏楽部、若さあふれる両校吹奏楽部のますますのご発展をお祈り致しますと共に、これからの活動にも注目したいと思います。

ゲスト

○太鼓集団 荒武者
○藤舎花帆(鼓)
○小長谷宗一(指揮)
○三浦高校吹奏楽部(トランペット独奏:畠山崇 指揮:八木澤教司)


<プログラム>
第1部/逗子高校吹奏楽部の演奏(指揮:岩田 晴之)
・March“The Nine”/小長谷 宗一
・ウィンドアンサンブルのための“不思議な旅”/小長谷 宗一
・吹奏楽と和太鼓のための組曲“凛”(委嘱作品 全曲初演)/小長谷 宗一
 「序・桜・松明・月・楓・雪」


第2部/三浦高校吹奏楽部の演奏(指揮:八木澤 教司)
・Celebrate/神長 一康
・トランペット協奏曲/八木澤 教司
・地底都市「カッパドキア」〜妖精の宿る不思議な岩/八木澤 教司

第3部/荒武者演奏&逗子高校・三浦高校合同演奏
・秩父屋台囃子
・アルメニアンダンス パートI/A.リード(指揮:畠山 崇)
・シバの女王ベルキスより/O.レスピーギ(Arr.&指揮:小長谷 宗一)

アンコール
・スターパズルマーチ/小長谷 宗一

逗子高校吹奏楽部
http://www.mousai.sakura.ne.jp/zushikousui/

 


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