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航空自衛隊中部航空音楽隊
第29回定期演奏会

◎ひと言で言えば「めっちゃカッコイイ! 演奏したい! 難しそうだけど!
福田洋介の委嘱曲「シンフォニック・ダンス」に注目すべし!

 日本全国に点在する自衛隊音楽隊は、それぞれに個性的な活動をしていて、一言「自衛隊のバンド」では片付けられないような特色があります。なかでも、以前から縁あって注目していた「航空自衛隊中部航空音楽隊」の定期演奏会に、念願かなって初めて足を運ぶ事となりました。

 中空(と略すのが一般的のようです。以下同様)の特色の一つは、邦人作曲家への委嘱に熱心な事。これは、団の顔でもある、サキソフォーン奏者兼アレンジャーの渡部哲哉氏(「ジョイフル・ポケット」作曲者、と言えばお分かり?)の影響が強いからだと思います。ここ数年でも、坂井貴祐氏の「ジャンヌ・ダルク」や、八木澤教司氏の「故郷の情景−グリーグの主題による」などが委嘱初演されており、出版されて人気を博しているものも少なくありません。

 書きたい事が山のようにありますが、ここはグッと我慢して、この日演奏された作品から、3曲ばかり感想を書いてみたいと思います。
 第1部では、あの大ヒット課題曲「風之舞」を作曲された福田洋介氏の委嘱曲が初演されました。その名も「シンフォニック・ダンス」。これまで、「和」をテーマとした作品を発表されてきた福田氏にしては珍しい、「洋」のテイストが前面に出た作品です。「シンフォニック・ダンス」は全5楽章からなる組曲で、それぞれ

1.ルネサンス・ダンス
2.タンゴ
3.ホウダウン
4.盆をどり唄
5.ベリーダンス

 という曲名がついています(1曲4〜5分、全20分強)。4曲目は、おっ、福田さんの真骨頂だね、と想像がつきますが、さて、他の4曲はどんな作品に仕上がっているのか? 演奏を聴く前は、作品名から受ける印象で、ラッセル=ベネットの「シンフォニック・ソング」や「古いアメリカ舞曲による組曲」のような曲になるのかな、などと想像しながら幕が開くのを心待ちにしておりました。

 一言で言えば「めっちゃカッコイイ!演奏したい!難しそうだけど!」というところでしょうか。すいません、舌足らずですね・・・。では詳細を。

「ルネサンスダンス」は、スザートやファーナビーを思わせる素朴なメロディー、リズムを基本としつつ、吹奏楽らしい多彩なオーケストレイションに満ちあふれており、冒頭のファンファーレから聴衆のハートを鷲づかみ!、という感じです。

「タンゴ」はサキソフォーンのソロが印象的です(渡部さん、お疲れさまでした!)。ピアソラを思わせる、軽くもシンフォニックなタンゴで、演奏者のセンスが問われそうです。もちろん、水科克夫隊長率いる中空の演奏に文句のつけようはありません!

  3楽章の「ホウダウン」は、曲名通り、コープランドやガーシュインを連想させる楽しいナンバー。前の楽章とはうってかわってハイテンションでスピーディーな演奏に目が覚めました!(いや、寝てないですよ?) 特に、終わりの圧倒的なアッチェレランドにはビックリ仰天! これでフィニッシュでもおかしくない出来映えで、個人的には一番気に入っている楽章です。

「盆をどり唄」は、もちろん、福田さんお得意の「和」な作風ですが、しかし、いわゆる「緩徐楽章」として美しいレガートがメインをしめています。前楽章での「動」な雰囲気が一点、アクトシティが深い響きに包まれ、充実した時間にゆったりと身をまかせる事ができました。

  そして「ベリー・ダンス」は、終楽章にふさわしいアップテンポな踊りの音楽で、オリエンタルなムードを漂わせています(エジプトや中近東の踊りだそうです)。ハチャトゥリャンやボロディンの曲を聴いているような感じ、ですかね。テンションが上がりきったところのトランペットのハイトーンは印象的でした!

  と、「○○風」という表現を多様してしまいましたが、これは執筆者が舌足らずで、かつなるべく分かりやすくお伝えしたかったからで、吹奏楽としては少し長めな20分を超える作品でありながら、決して飽きる事無く、万華鏡のような色彩で音楽が奏でられ、終わってみると、飽きるどころか、こんな歴史的な初演に立ち会う事ができた喜びに心を躍らせていました!
 いずれ、この作品が出版され、日本中の団体に演奏されるようになって欲しい!と心から願っています。今後に注目していきたいです!
 さて、後半のポピュラー・プログラムでは5曲の作品が演奏されましたが、その中から、渡部さんが編曲された「海猿」と「大きな古時計」の2曲をご紹介したいと思います。
 最近では、テレビや映画の劇判(BGM)から吹奏楽編曲した大作がたくさんありますね。吹コンの自由曲としても充分使えるようなシンフォニックなアレンジが多くあります。「海猿」は、まさにそんなアレンジでした。

 恥ずかしながら、ドラマ「海猿」は一度も観たことがないので、純粋にこの日の演奏からしか感想を述べる事ができませんが、多分、曲名を知らされなかったら「新しい吹奏楽曲かな」と思える立派な作品に仕上がっており、後半プログラムで一番の目玉になっていた事は言うまでもありません。

 一方、木管群だけでのアンサンブルとして演奏された「大きな古時計」は、時間の流れるのも忘れるような美しいコラールでした。紡ぎ出される音が層をなし、響きのミルフィーユを積み重ねていくその美しい音色は、「聴く」のではなく「体験」をしなければ分からない特殊な時間だったように思います。唯一無二の時間を共有する喜びが、全身をベールのように覆うような経験をしました

・・・無理矢理まとめに入りますが、日本各地に点在する自衛隊音楽隊は、本来の職務である式典等での演奏の他にも、いわゆる「プロの吹奏楽団」としての意欲的な活動を日々重ねており、特に今回、中空の定期に初めて足を運んでみて、その充実した「やる気」に感動し、今後の前向きな活動により期待がもてるものと楽しみにしております。

  また、最近ではアレンジ・作曲、指導などでお忙しい渡部哲哉氏が、今回は4曲ものアレンジを担当されました。「海猿」「古時計」を拝聴し、アレンジャーとしての腕前がどんどん上がっている事に目を見張り、今後どんな作品が渡部さんの手から(MACから?)生み出されるのだろう、と思うと、とてもウキウキしてきます。
 来年も、時間を見つけて、中空の定期を聴きに行きたいと思っています!


<プログラム>
■第1部/指揮・水科克夫(音楽隊長・2等空佐)
マリオネットの葬送行進曲(グノー/渡部哲哉)
チボリ祝祭序曲(ヒュルゴー)
シンフォニック・ダンス(福田洋介) ※委嘱初演
喜歌劇「こうもり」セレクション(J.シュトラウス2世/鈴木英史)
■第2部/指揮・菊池賢次(音楽隊副隊長・1等空尉)
ザ・バンドワゴン(スパーク)
「海猿」〜ハイライト(佐藤直紀・松本孝弘/渡部哲哉)
ペコリ・ナイト(マーティン&コウルター/渡部哲哉)
大きな古時計(ワーク/渡部哲哉)
サザンオールスターズメドレー(桑田佳祐/杉本幸一)
※アンコール/指揮・水科克夫(音楽隊長・2等空佐)
・ショウほど素敵な商売はない
・クワイ河のマーチ(ボギー大佐)

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